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セルモーターが回らない原因

お客さんから、「エンジンがかからないので助けてくれ」

と、TELがありました。
様子を電話で聞いてみると、どうもセルモーターが回らないみたいだから、
一応バッテリーをつんで行ったんです。まだまだ寒いから
バッテリーがあがっちゃってるのかもしれないしね。


現場について、確認をしました。

ワゴンRでATでした。

キーを借りて、セルを回してみると

「かちっ!」

という音が聞こえるだけで、うんともすんともいいません。
完全にバッテリーが上がっていました。

自分の乗ってきた会社の車とブースターでつないで
セルを回そうとおもい、接続してキーをひねると

「かちっ!」

と、セルの音が少し大きくなりましたが、回りません。
でもセルまでは電流は届いていますね。

ここで仕方ないので、会社にもどって、積載車に乗り換えて
工場に運びました。

ATの場合、セルがまわらない原因として、
インヒビタスイッチの不良もあります。

シフトポジションを感知している奴ね。ATはPとNでしかエンジンがかかりませんよね?
そのポジションを感知しているのがインヒビタスイッチです。
一応、PとNにギアを入れてセルを回しましたがおんなじことでした。
まぁセルは反応しているんだもんね。

どうしてセルが回らないんだろう?工場に入れてリフトに上げて考えました。
っていうかさ、セルモーターすっげー奥にあるじゃん!?

これを外すのって、どっから外すんだよ!?

って、言うくらい嫌な位置にセルが付いているワゴンR
オルタネーターを外して、引っ張り出すか、マウントを外すかしないと取れそうにない。

セルを外す前に、一応おさらいを込めて考えました。

セルモーターがまわらないということは、何がいけないか?

①バッテリーが上がっている
②ATの場合シフトポジションセンサー(インヒビタスイッチ)の不良
③セルに電気が流れていない(ハーネスや端子をチェック)
④セルモーター自体が壊れている
⑤セルが回れないほどの負荷がかかっている

とまぁこんな感じでしょうね。
1~3までは正常と判断しました。キーを捻るとセルモーターは反応するし、
ブースターでつないでもまわんないからね。

ここで怪しいのがセルモーター本体。でもなにかおかしいんだよね。
セルじゃない気がする

となると⑤?

セルが回れないほどの負荷

とは一体?ためしにクランクシャフトを手で回してみました
ワゴンRは17mmのクランクのボルト。ここにメガネをかけて、ぐいっとね。

そうしたら

まわらないんですよ

もう唖然としたよね。

クランクシャフトが回らない原因として

①エンジンが焼きついている
②ATが不良
③セルがリングギアにはまったまま

それにしても2,3の場合では人力でまわせないほどの負荷がかかるとは思えない。
スズキのミッションにはクランクの回り止めのサービスホールが付いているんです。
クランクプーリーを締めるときに、そこにマイナスドライバーを突っ込んで
本締めしろって。

そこからリングギアが見えるんですよ。でも歯はかけてないし全然綺麗なんだよね。

ここで、エンジンオイルの量をチェック。入っている。

クランクが焼きついているのなら、エンジンオイルをもう少したくさん入れて、
メタルにオイルがかぶるくらいまで入れてやれば多少は潤滑するってことで、

オイルをさらに2,3リットル多めに入れてクランクを回しました。そうしたら、

ちょっとまわった!

でもあいかわらず強烈に思いクランクシャフト。

タイミングベルトが切れて、バルブがついているのかと思い、
先輩にカムシャフトを見ててもらい、クランクを回しました

オイルフィラーをあけておいて、クランクを回します。これでカムシャフトが動けば
タイミングベルトは切れていない。

と、いうことは

エンジンが完全にブローしているということですね。

原因はここにありました

思い切りへこんでいるオイルパン

実はこの車はかなり車高が下がっていました。
で、段差に乗り上げちゃったんだってさ。あとで話を聞くと

それによりオイルパンをヒットしてしまって、オイルストレーナーについちゃっているんだよね。
オイルがすえない状態です。

これはSR20エンジンも有名だよね。ストレーナーとオイルパンのクリアランスがほとんどないって。

オイルパンをぶつけるとすぐにブロー。

まさか、セルがまわらない原因が、エンジンブローだとは思いませんでした。
それにしても焼きついたエンジンのクランクは手で回らないくらい
重いものでした。