リコール情報

北米日産リーフ2026年モデルのリコール、充電していないのに出火するとはどういうことか

こんにちは、チームMHOです。

「電気自動車は充電中に燃えることがある」という話は、これまでにも聞いたことがある方は多いと思います。急速充電で大きな電流を流すため、バッテリーに負担がかかりやすいというイメージを持っている人も多いはずです。

ところが今回、日産の北米法人が届け出たリコールは、そのイメージとはまったく違う内容でした。エンジンオフ、しかも充電していない駐車中の状態で出火したというのです。充電していなければ安全、という感覚を持っていた方にとっては、かなり意外なニュースではないでしょうか。

この記事では、なぜ「充電していないのに出火する」ということが起こり得るのか、整備士としての視点から、その原因と、見た目だけでは判断できないバッテリーの怖さについて整理していきます。

充電していないのに出火するというニュースの中身

今回リコールの対象になったのは、2025年7月から11月にかけて製造された2026年モデルのリーフ51台です。2026年2月から3月にかけて、米国と日本で、エンジンオフかつ非充電状態の駐車中に出火する事象が発生しました。

対象台数自体は51台とそれほど多くありませんが、注目すべきは発生した状況です。充電も走行もしていない、いわば「何もしていない」状態での出火というのは、バッテリー関連のトラブルとしてはかなり異例だと言えます。

なぜ「何もしていない」のに発火したのか

原因とされているのは、バッテリーを供給しているエンビジョンAESC(旧オートモーティブ・エナジー・サプライ)製のセルの、製造工程における物理的な損傷です。バッテリーセルの内部にある正極材が、製造の過程で破損してしまい、それが内部短絡、つまりバッテリー内部でショートが起きる状態につながったとされています。

内部短絡が起きると、その部分に異常な電流が流れ、局所的に発熱します。この発熱が周囲に広がっていくと、最終的には熱暴走と呼ばれる状態に至ります。熱暴走は、一度始まると連鎖的に温度が上昇し続け、外部からの介入だけでは止められなくなる現象です。EVバッテリー火災が消火に時間がかかったり、鎮火後に再発火したりするのは、この熱暴走という性質が関係しています。

つまり今回のケースは、走行や充電による負荷が引き金になったのではなく、セルが作られた時点ですでに損傷を抱えていて、それが時間差で表面化した、という構図です。充電していないから安全、というこれまでの感覚が通用しない理由はここにあります。

外観点検だけでは見抜けない理由

整備の現場で車を点検するとき、基本になるのは目視や測定機器を使った状態確認です。しかし今回のような、セル内部の正極材のごく微細な損傷は、外側からどれだけ丁寧に見ても発見できるものではありません。バッテリーパックのケースを開けたとしても、セル一枚一枚の内部構造まで確認することは、通常の整備工程では現実的ではないのです。

これはガソリン車の整備にも通じる話ですが、部品の内部にある欠陥は、外観検査や通常の動作確認では見つけられないことがあります。例えば金属部品の内部にわずかなクラック(ひび割れ)があっても、表面上は問題なく見えるケースと同じ考え方です。今回のリチウムイオン電池も、セルという密閉された部品の内部で起きていることなので、整備士が外から異常を察知するのは非常に難しいというのが正直なところです。

だからこそ、こうしたトラブルはメーカー側の製造工程での品質管理と、問題が発覚した後のリコール対応にゆだねられる部分が大きくなります。

リコール対応が「充電禁止・隔離駐車」まで求めている意味

今回の改善措置では、4月17日から所有者への通知が始まり、バッテリーモジュールの無償交換が行われます。損傷が大きいと判断された場合には、バッテリー全体の交換も検討されるとのことです。

注目したいのは、修理が完了するまでの間、充電を禁止し、車両を他の建物などから離れた場所に隔離して駐車するよう案内されている点です。これは、対象車両のバッテリーが「いつ熱暴走を起こしてもおかしくない状態」として扱われていることを意味します。日常的に使う分には見た目も動作も普通の車であっても、内部に抱えているリスクは通常の使用感からは想像できないほど大きい、ということです。

この対応の厳しさそのものが、内部短絡から熱暴走に至るリスクの重さを物語っていると言えます。

整備士としてできることと、オーナーが意識すべきこと

こうした製造起因のバッテリー不具合は、整備の現場での日常点検だけで未然に防ぐことが難しい領域です。だからこそ、対象車種に乗っている方は、まずメーカーからのリコール通知を見逃さないことが何より重要になります。

また、EVに限らず、バッテリーやハイブリッドシステムを積んだ車を扱う整備の現場では、目視や機器での確認と合わせて、メーカーが発表するリコール情報や技術情報を常にチェックしておく姿勢が欠かせません。今回のようなセル内部の損傷は、整備士がどれだけ経験を積んでいても、通常点検の範囲では発見できないタイプの不具合だからです。

日本モデルのリーフにはリコールが出ていないので、現段階では大丈夫です。

今回のリーフのリコールから覚えておきたいのは次の点です。

まず、EVの火災リスクは充電中や急速充電時だけの話ではなく、製造段階の欠陥が原因で駐車中にも起こり得るということ。次に、セル内部の損傷は外観点検では見抜けないため、こうした不具合の発見と対応はメーカーのリコール情報に頼らざるを得ないということ。そして、対象車種のオーナーは、通知が届いたら「まだ様子を見よう」とせず、案内に沿って早めに点検・交換を受けることが自分の身を守ることにつながります。

見た目が変わらないからといって、車が抱えているリスクまで変わらないとは限りません。特にバッテリーのように内部構造がブラックボックスになりやすい部品については、メーカーからの情報を定期的に確認する習慣を持っておくことが、これからのEVとの付き合い方において大切になってくると思います。