最近の車を整備していて、昔と大きく変わったなと感じることがあります。
それは、
「壊れたときの修理代が高い」
ということです。
もちろん昔の車だって、エンジンやミッションが壊れれば高額な修理になりました。
しかし最近は少し事情が違います。
昔だったら「ここだけ交換すれば直る」という故障でも、今の車では部品単体の設定がなく、丸ごと交換しなければならないケースが増えているんです。
いわゆる「ASSY交換」です。
安全性能、燃費、快適性は昔とは比較にならないほど進化しました。
その一方で、整備士からすると、
「えっ、そこだけ出ないの?」
と思ってしまうことも珍しくありません。
なぜ最近の車は、ちょっとした故障でも修理代が高くなりやすいのでしょうか?
長年整備の現場を見てきた立場から、昔の車との違いを考えてみます。
わかりやすいのがヘッドライトです。
昔ながらのハロゲンヘッドライトなら、ライトが点灯しなくなったとき、まず疑うのはバルブです。
ボンネットを開けてバルブを取り外し、新品に交換する。
もちろん車種によって作業性は違いますが、基本的には「切れた電球を交換する」という考え方でした。
ところが、今ではLEDヘッドライトが当たり前になってきました。
LEDには消費電力が少ない、明るい、長寿命などさまざまなメリットがあります。
一方で問題になるのが、故障したときです。
車種や故障箇所によっては、昔のように「バルブだけ交換」という修理ができません。
ヘッドライトユニット単位での交換が必要になることがあります。
昔ならバルブ交換で済んでいたような「ライトが点かない」という症状でも、故障箇所によっては修理費が一気に跳ね上がるわけです。
お客さんからすれば、
「ライトが一つ点かないだけで、なんでそんなにするの?」
となります。
その気持ちはよくわかります。
しかし部品設定がASSYしかなければ、整備工場側としてもどうしようもありません。
これはライトだけではありません。
最近の車には、とにかく電子部品が増えました。
昔なら単純なスイッチだったものに、基板や制御機能が組み込まれている。
モーターと制御ユニットが組み合わされている。
センサーと別の部品が一体化されている。
その結果、故障している部分自体は小さくても、その部分だけ部品として購入できないことがあります。
整備の現場では、
「ここだけ出れば安く直せるのにな……」
という場面があります。
しかし部品カタログを調べると設定がない。
仕方なく大きなASSYで交換する。
これが修理代を押し上げます。
パーキングブレーキも大きく変わりました。
昔ならレバーを、
「ギギギッ」
と引くのが普通でした。
足踏み式の車もありました。
構造としてはワイヤーなどを使った機械的な仕組みが中心です。
今では電動パーキングブレーキを採用する車が増えています。
スイッチ一つでパーキングブレーキが作動する。
さらにオートホールドと組み合わせれば、信号待ちでもブレーキペダルを踏み続けなくていい。
一度使うと非常に便利な装備です。
ただし当然ながら、その便利さを実現するための部品が必要になります。
スイッチ、モーター、配線、センサー、制御。
昔の機械式パーキングブレーキとは、故障診断の方法も変わってきます。
ブレーキパッドを交換するだけでも、車種によっては診断機を使って整備モードに入れる必要があります。
「ブレーキの部品を交換する」
という同じ作業でも、車側の進化によって整備方法まで変わっているのです。
もう一つ、昔との違いを感じるのが先進安全装備です。
最近の車を正面から見ると、フロントガラス上部にカメラが付いている車が珍しくありません。
衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報などに使われています。
こうした車では、フロントガラスを交換したあとに、カメラなどの調整作業が必要になる場合があります。
いわゆるエーミングです。
昔なら、
ガラスが割れた
↓
ガラス交換
↓
終了
だったものが、
ガラスが割れた
↓
ガラス交換
↓
センサーやカメラに関係する確認・調整
という作業になる。
もちろん、これには理由があります。
人の命に関わる安全装置だからです。
カメラが正しい位置を認識できなければ、本来の性能を発揮できない可能性があります。
だからきちんと確認する必要がある。
しかし車のオーナーからすると、
「ガラス交換なのに、昔よりずいぶん高くなったな」
と感じるのも無理はありません。
バンパーも同じです。
昔の感覚なら、
「ちょっとぶつけてバンパーが割れた」
というのは比較的シンプルな修理でした。
ところが今の車は、バンパー周辺にもさまざまな装置が存在します。
コーナーセンサー、カメラ、レーダーなどです。
見た目ではただのバンパーでも、その周辺に安全装備が組み込まれている。
そのため事故修理では、
「外装を元に戻せば終了」
とは限らなくなりました。
これも最近の事故修理費が高くなりやすい理由の一つです。
車が進化すれば、当然整備士側も変わらなければいけません。
昔は経験と工具が非常に重要でした。
もちろん今でもそれは変わりません。
ただ、そこに診断機や電子制御の知識が加わっています。
警告灯が点灯した。
診断機を接続する。
故障コードを確認する。
データモニターを見る。
必要なら電圧や波形などを測定する。
そして原因を絞り込んでいく。
単純に、
「この部品が壊れているから交換」
では済まない車が増えています。
車がコンピューターの塊になっていけば、整備の方法が変わるのは当然です。
ここまで読むと、
「だったら昔の車の方がいいじゃないか」
と思うかもしれません。
ただ、僕は単純にそうだとは思いません。
今の車は本当に進化しています。
衝突被害軽減ブレーキ。
誤発進抑制。
車線逸脱警報。
アダプティブクルーズコントロール。
オートライト。
LEDヘッドライト。
燃費性能。
排出ガス性能。
快適装備。
20年、30年前の車と比べれば、安全性も快適性も大きく向上しています。
昔ならドライバー自身が注意して操作していた部分を、車がサポートしてくれるようになりました。
それによって防げる事故もあるでしょう。
だから、
「昔の車は安く直せたから昔の方が優秀」
という単純な話ではありません。
最近の車の修理代が高くなったと感じる理由。
その一つは、車そのものが複雑になったことです。
一つの部品に複数の機能が組み込まれ、電子制御され、別のシステムとも連携している。
だから昔のように、
「壊れた小さな部品だけ交換する」
ことが難しいケースが出てきます。
整備士としては、
「この部分だけ交換できればいいのに」
と思うこともあります。
お客さんに見積もりを説明しながら、
「高いよなあ……」
と内心思うことだってあります。
それでもメーカーがASSYでしか部品を供給していなければ、その方法で修理するしかありません。
これから車の電子化がさらに進めば、この傾向は続くでしょう。
そしてEVや高度な運転支援システムが普及すれば、整備の世界もさらに変わっていくはずです。
車は確実に便利になりました。
安全にもなりました。
その一方で、
「壊れたときは昔より簡単ではない」
ということは、車を所有する側も知っておいた方がいいと思います。
これから車を買うときは、車両価格や燃費だけではなく、
「故障したとき、どんな部品を交換することになるのか」
という視点も、少しずつ重要になってくるのかもしれません。
兎にも角にもエンジンを始動するにはいまだに12Vバッテリーです。バッテリーが上がったら始動できないので、ジャンプスターターをもっておくことをお勧めします。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。