「この車、直した方がいいですか? それとも、もう買い替えた方がいいですか?」
サービスフロントをやっていた頃、何度この質問をされたかわかりません。
車検で思った以上に修理箇所が見つかった時。エアコンが壊れた時。クラッチが滑り始めた時。ATやCVTに不具合が出た時。
そして見積もりを作って、
「修理すると20万円くらいかかります」
「全部やると30万円を超えそうです」
と伝えると、多くの人が悩み始めます。
「30万円もかけるなら、もう買い替えた方がいいですよね?」
でも僕は、30万円という金額だけを見て「買い替えた方がいい」とは言えませんでした。
逆に、修理代が10万円だったとしても、
「この先を考えると、そろそろ乗り換えも考えた方がいいかもしれません」
と伝えることもありました。
長年いろいろな車を見てきて思うのは、修理するか買い替えるかの境目は、修理金額だけでは決められないということです。
では整備する側は、一体何を見ているのか?
僕なりの判断基準を書いてみたいと思います。
例えば、修理見積もりが30万円だったとします。
30万円という数字だけを見ると、かなり高額です。
「そんなにかかるなら買い替えよう」
となる気持ちもよくわかります。
でも、その車がまだ比較的新しく、ボディの状態もよく、下回りの錆も少ない。これまできちんと整備されていて、エンジンやミッションにも大きな問題がない。
そして今回の30万円をかければ、その先もかなり長く乗れそうだと判断できる。
そんな車なら、僕は修理する価値があると思います。
特に今は新しい車そのものが高くなっています。
30万円の修理代だけを見ると高く感じますが、買い替えれば100万円、200万円、300万円、あるいはそれ以上のお金が必要になることも珍しくありません。
もちろん新しい車には安全装備や燃費性能などのメリットがあります。
しかし、
「30万円の修理代がもったいないから300万円の車を買う」
という判断が、本当に家計にとって正しいのかは一度考えた方がいいと思います。
一方で、修理代が10万円程度でも、僕なら買い替えを選択肢に入れる車があります。
例えば下回りの錆がかなり進んでいる車です。
今回10万円をかけて直しても、次の車検で別の部分の腐食が問題になる可能性がある。
エアコンも弱っている。
足回りからも音が出ている。
エンジンからオイル漏れも始まっている。
さらにATやCVTにも少し違和感がある。
こうなってくると、今回の10万円だけでは判断できません。
半年後に15万円。
その半年後に20万円。
そんな形で修理が連鎖する可能性があるからです。
サービスフロントでは、目の前の故障だけではなく、その車の全体を見ることが重要でした。
お客さんには見積書に書いてある今回の修理代しか見えません。
しかし整備する側から見ると、
「ここを直しても、次はこっちが来そうだな」
ということがあります。
この差はかなり大きいと思います。
10万kmだから買い替え。
20万kmだから寿命。
僕はそんなふうには考えていません。
同じ10万kmでも車の状態はまったく違います。
例えばタイミングベルトを使っている車なら、すでに交換されているのか。
クラッチ車なら、クラッチの状態はどうなのか。
ATやCVTの状態はどうか。
エアコンは正常なのか。
足回りはどこまで整備されているのか。
そして何より、これまでどのようなメンテナンスを受けてきた車なのか。
10万kmまでほとんど手を入れてこなかった車と、必要な整備を積み重ねながら10万km走った車では、その先に必要になるお金が違ってきます。
だから僕は走行距離だけでは判断しません。
むしろ、
「この車には、あと何が残っているか?」
を考えます。
ここが重要です。
同じ20万円でも、中身によって意味が違います。
例えばクラッチ交換にまとまった費用がかかったとしても、それ以外の状態が良好なら、交換後はまた長く使える可能性があります。
タイミングベルトも同じです。
交換時期が来た部品を予定通り交換する20万円と、ATやCVT内部の重大な故障が発生して必要になる20万円では、僕なら同じようには考えません。
エアコンも悩ましいところです。
コンプレッサーだけでは済まず、システム全体に問題が波及して高額になるケースもあります。
だから、
「20万円を超えたら買い替え」
というような基準を作るのは難しいんです。
重要なのは、その20万円で何が直り、その後どれくらい安心して乗れそうなのかです。
これもサービスフロントでよく感じたことです。
「今回の車検、25万円もするなら買い替えようかな」
と言われることがあります。
でも見積もりを分解すると、すべてが車検の費用ではありません。
税金や自賠責保険なども含まれますし、そこへ消耗部品の交換や故障修理が重なっています。
さらに、今回きちんと整備すれば次回まで使える部品もあります。
25万円という総額だけを見て判断するのではなく、
「今回、車そのものを直すためにいくら必要なのか?」
を分けて考えた方がいいです。
これは買い替え判断ではかなり重要だと思います。
僕ならまずボディを見ます。
特に雪国では下回りの錆は重要です。
ボディや骨格がしっかりしていて、致命的な腐食がない。
エンジンやミッションにも大きな不安がない。
過去の整備状態も悪くない。
そして今回の修理を終えれば、しばらく大きなお金がかからなそう。
そんな車なら、走行距離が多くても直す価値は十分あると思います。
逆に僕が心配するのは、複数の問題を抱えている車です。
今回の故障だけではない。
錆もある。
エアコンも怪しい。
ミッションにも違和感がある。
足回りもそろそろ。
そんな状態なら、目の前の修理費がそれほど高くなくても、一度買い替えを含めて考えた方がいいかもしれません。
もう一つ忘れてはいけないのが、今乗っている車のローンです。
修理代が高いから買い替えるといっても、今の車にローンが残っていれば話は単純ではありません。
残債を処理して、さらに次の車を購入する。
新しいローンを組めば、当然その後も毎月支払いが続きます。
だから僕なら、
「修理代30万円」
だけを見るのではなく、
「今の車をあと3年乗るための30万円」
と、
「今買い替えた場合に3年間で必要になるお金」
を比較します。
こうすると見え方がかなり変わります。
結局、僕が一番大事だと思っているのはこれです。
その車に、あと何年乗りたいのか。
あと半年しか乗るつもりがない車へ30万円かけるのであれば、慎重に考えた方がいい。
でも気に入っていて、あと5年乗りたい車ならどうでしょう。
30万円をかけて5年間乗れたとすれば、単純計算では年間6万円です。
もちろん途中で別の修理が発生する可能性はあります。
それでも「30万円」という数字だけを見た時とは、印象が変わると思います。
サービスフロント時代、お客さんから、
「あなたなら直しますか?」
と聞かれることがよくありました。
そんな時、僕が見ていたのは今回の見積書だけではありません。
年式、走行距離、錆、整備履歴、エンジン、ミッション、エアコン、足回り、そしてこれから起こりそうなこと。
それらを全部ひっくるめて考えていました。
修理代が高いから買い替える。
走行距離が10万kmを超えたから買い替える。
必ずしも、それが正解とは限りません。
逆に、修理代が安いからまだ大丈夫とも限りません。
もし高額な修理を提示されて迷ったら、
「この修理をしたら、あと何年くらい乗れそうですか?」
「他に近いうちに大きなお金がかかりそうなところはありますか?」
と整備士やサービスフロントに聞いてみてください。
その答えと、自分があと何年その車に乗りたいのか。
僕はそこに、「直す車」と「手放す車」の境目があると思っています。
車を直せなくなったとき、中古車や新車に買い替えることを考えないといけません。そんな時は下取りはそのお店以外にも聞いてみると、割と高価で売れるところもあったりします。
あなたの愛車は今いくら?UcarPACが1分でカンタン相場チェックガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。