車の点検をしたら、リザーバータンクの冷却水が減っていた。
とりあえず規定量まで補充しておいたものの、しばらくするとまた減っている。
ところが、駐車場を見ても冷却水が漏れた跡はない。
「地面に垂れていないなら、それほど深刻ではないだろう」
そう考える人もいるかもしれません。
しかし、冷却水は必ずしも分かりやすく地面へ漏れるとは限りません。
エンジンが十分に温まったときだけ漏れる。漏れた冷却水が熱で蒸発する。車内のヒーターコアから漏れる。あるいはエンジン内部へ少しずつ入り込むこともあります。
外から見えない漏れほど、原因を突き止めるのに時間がかかるのです。
冷却水はエンジン内部を循環し、発生した熱をラジエーターへ運ぶ役割があります。
正常な状態でも長期間の使用でわずかに減ることはありますが、短期間で繰り返し補充が必要になるのは正常とはいえません。
冷却水が減る主な原因には、
・ラジエーター本体からの漏れ
・ラジエーターやヒーターのホースからの漏れ
・ウォーターポンプからの漏れ
・ラジエーターキャップの不具合
・ヒーターコアからの漏れ
・シリンダーヘッドやヘッドガスケット周辺の異常
などがあります。
大量に漏れていれば、車の下に色のついた液体がたまるため、比較的発見しやすいです。
難しいのは、少量ずつ漏れている場合です。
エンジンが冷えているときには漏れず、温まって冷却系統の圧力が高くなってから漏れ始めることもあります。熱い部品へ付着すれば、その場で蒸発してしまい、地面には跡が残りません。
以前、スバルのトラヴィックで、冷却水が少しずつ減っていく車を点検したことがあります。
冷却水を補充して確認しても、すぐには漏れてきません。
車をリフトアップして下回りを確認しても、最初は漏れた跡を発見できませんでした。
そこでエンジンをかけたまま、漏れが出てこないか様子を見続けました。
それでもなかなか症状が現れません。
最終的に、約1時間エンジンをかけ続けて、ようやくヒーターコア側から冷却水が漏れていることが分かりました。
これほど時間がかかると、短時間の点検では「漏れは確認できませんでした」となっても不思議ではありません。
ヒーターコアは、エンジンの冷却水を使って車内を暖めるための小さなラジエーターです。
多くの車ではダッシュボードの奥に取り付けられているため、エンジンルームから簡単に確認できません。
ヒーターコアから漏れると、車内で冷却水特有の甘い臭いがする、窓が曇りやすくなる、助手席の足元が湿るといった症状が出ることがあります。
しかし漏れがごく少量なら、こうした変化も分かりにくい場合があります。
冷却水は減っているのに、車の下には何も垂れていない。
そんなときは、エンジンルームだけでなく、車内側へ漏れている可能性も考える必要があります。
もう一つ経験したのが、三菱パジェロです。
この車も冷却水が少しずつ減っていましたが、外から見て分かるような大きな漏れはありませんでした。
調べていくと、シリンダーヘッドまたはヘッドガスケット周辺に問題が起き、冷却水がエンジン内部へ少しずつ漏れていたと考えられる状態でした。
いわゆる「ヘッドが飛んだ」と表現される故障です。
ヘッドガスケットなどに異常が起きると、冷却水が燃焼室へ入って燃えてしまったり、逆に燃焼ガスが冷却系統へ入り込んだりすることがあります。
冷却水が燃焼室へ少量ずつ入っている場合、地面には漏れません。
そのまま排気と一緒に外へ出ていくため、冷却水だけが徐々に減っていきます。
症状が進むと、
・マフラーから白い煙が多く出る
・リザーバータンクへ気泡が出る
・冷却水を補充しても繰り返し減る
・ヒーターの効き方が不安定になる
・水温が上がる
・エンジンが不調になる
といった変化が現れることがあります。
ただし、初期の段階では症状がはっきり出ないこともあります。
漏れた跡がないからこそ、原因の特定が難しいのです。
冷却水が減るたびに補充すれば、しばらく走れてしまうことはあります。
しかし、補充は修理ではありません。
冷却水が減った原因を直さない限り、漏れは続きます。
昨日までは少量だった漏れが、ホースの破裂などで突然大量の漏れへ変わる可能性もあります。
冷却水が不足するとエンジンを十分に冷やせなくなり、オーバーヒートを起こします。
症状がひどくなると、シリンダーヘッドがゆがむ、ヘッドガスケットが損傷する、最悪の場合はエンジン交換が必要になることもあります。
数千円から数万円で直せた漏れを放置した結果、高額なエンジン修理へ発展することもあるのです。
冷却水が減っている場合は、減った分を足して終わりにせず、なぜ減ったのかを確認する必要があります。
冷却水の量は、エンジンが冷えているときにリザーバータンクで確認してください。
タンク側面にあるFULLとLOW、またはMAXとMINの間に液面があれば、基本的には適正範囲です。
重要なのは、一度の量だけでなく変化を見ることです。
補充した日と量を記録したり、同じ場所から写真を撮ったりしておくと、どの程度の速さで減っているのか判断しやすくなります。
なお、エンジンが熱いときにラジエーターキャップを開けてはいけません。
内部には圧力がかかっているため、高温の冷却水や蒸気が噴き出し、やけどをする危険があります。
水温警告灯が点灯した、ボンネットから蒸気が出た、ヒーターが急に効かなくなった場合は、無理に走行を続けず安全な場所へ停車してください。
トラヴィックは、リフトアップしてエンジンを約1時間かけ続け、ようやくヒーターコア側の漏れを確認できました。
ミニキャブは、外ではなくエンジン内部へ冷却水が少しずつ漏れていたと考えられる事例でした。
どちらも、車の下を少し見ただけでは原因が分かりにくい故障です。
冷却水が繰り返し減るなら、どこかで漏れているか、冷却系統に異常が起きている可能性があります。
「地面に漏れた跡がない」
「補充すれば水温は上がらない」
それだけで安心してはいけません。
冷却水を足すことは応急処置です。
本当に必要なのは、減っている原因を見つけること。
漏れが小さいうちに点検した方が、エンジンへ大きな損傷が出る前に修理できる可能性が高くなります。
もう修理しないで車検が切れるまでなんとか持たせたいっていう場合には、漏れどめ剤を使うのも一つの手です。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。