日記・戯言

部品代は安いのに修理代は6万円?車の修理で「工賃の方が高くなる」理由

車の修理見積もりを見たお客さんから、こんなことを言われることがあります。

「交換する部品は数千円なのに、どうして修理代が6万円もするんですか?」

確かに、見積書だけを見ると不思議に感じるかもしれません。

部品代が3,000円なのに、工賃が5万円。場合によっては部品代より工賃の方が10倍以上高くなることもあります。

すると「部品を交換するだけなのに、工賃を取りすぎではないか」と思う人もいるでしょう。

しかし、車の修理代は部品の値段だけでは決まりません。

重要なのは、その部品がどこに付いていて、交換するために何を外さなければならないかです。

同じ3,000円の部品でも、交換に10分しかかからない車もあれば、数時間かかる車もあります。

部品代と作業の難しさは比例しない

車には数万点もの部品が使われています。

外から見える場所に付いている部品もあれば、エンジンやダッシュボードの奥深くに組み込まれている部品もあります。

例えば、数百円から数千円程度のゴムパッキンからオイルが漏れていたとします。

パッキンだけなら、それほど高い部品ではありません。

ところが、そのパッキンを交換するために吸気部品や配線、配管、カバーなどを順番に取り外さなければならないことがあります。

ようやく目的の部品が見えたころには、エンジンルームの広い範囲が分解されている。

交換するのは小さなゴム部品でも、そこへ到達するまでに何時間もかかるのです。

部品の値段は「その物自体の価格」です。

工賃は「その部品を安全かつ正確に交換し、元の状態へ戻すための作業料金」です。

そのため、安い部品だから工賃も安くなるとは限りません。

ダッシュボードの奥にある部品は大掛かりになる

工賃が高くなりやすい代表例の一つが、ダッシュボード内部の修理です。

エアコンの温度や風向きを切り替える部品、ヒーターコア、エバポレーターなどは、車種によってダッシュボードの奥に取り付けられています。

交換する部品そのものは、それほど高額ではない場合があります。

しかし、その部品を取り出すためには、周辺のパネル、オーディオ、メーター、ハンドル周辺の部品、センターコンソールなどを外さなければならないことがあります。

さらにコネクターや配線、エアコン関係の部品を切り離し、ようやく目的の部品へ到達します。

交換後は、外したものをすべて元に戻さなければなりません。

取り付け後には、エアコンやメーター、スイッチ、警告灯などが正常に作動するかも確認します。

交換する部品だけを見れば小さくても、作業全体で見れば大仕事です。

このような修理では、部品代より工賃の方が高くなるのは珍しくありません。

ボルト1本が外れないだけで作業時間が増える

見積もりでは簡単そうに見える作業でも、実際に分解してみると予定どおりに進まないことがあります。

年数が経過した車では、ボルトやナットが錆びて固着しています。

工具をかけても回らない。

無理に力をかければ、ボルトが折れるかもしれない。

そのため潤滑剤を使い、振動を与え、周囲を傷めないよう慎重に緩めていきます。

それでも外れなければ、熱を加えたり、ボルトを削ったり、折れた部分を取り除いたりする追加作業が必要です。

樹脂製のクリップやカバーも、古くなると非常に割れやすくなります。

新品の車なら数分で外せる部品でも、古い車では壊さないよう少しずつ外さなければなりません。

整備士は部品を外すだけでなく、周辺の部品を壊さないように作業しています。

外れない部品を力任せに壊してよいのなら早いかもしれません。しかし、修理箇所以外まで壊してしまえば、交換部品と費用が増えてしまいます。

そのため、古い車ほど分解に時間がかかることがあります。

故障原因を探す時間も修理の一部

お客さんから見ると、故障した部品を交換する作業だけが修理に見えるかもしれません。

しかし、実際には交換する部品を特定するまでの診断が必要です。

例えばエンジンがかからない場合でも、原因はバッテリー、スターターモーター、燃料系統、点火系統、センサー、配線などさまざまです。

エアコンが効かない場合も、単純なガス不足とは限りません。

コンプレッサー、リレー、センサー、配線、冷却ファン、内部の詰まりなど、複数の可能性があります。

症状を確認し、故障コードを読み、電圧や抵抗を測り、回路図と照らし合わせながら原因を絞り込んでいきます。

交換する部品が3,000円だったとしても、そこへたどり着くまでに1時間以上の診断が必要になることもあります。

原因を確認せず、怪しい部品を片っ端から交換するほうが、結果的にお客さんの負担は大きくなります。

正しく診断して必要な部品だけを交換することも、整備士の仕事です。

工賃には組み立てと確認作業も含まれる

部品を交換したら、その場で修理が終わるわけではありません。

外した部品を正しい順序で組み付け、ボルトを規定の力で締め、配線やホースが元どおりになっているか確認します。

エンジンオイルや冷却水を抜いた作業なら、液体を補充し、漏れやエア混入がないことも確認します。

足回りを分解した場合は、異音やガタ、ハンドルの状態を確認するために試運転が必要になることがあります。

コンピューターに関係する部品なら、交換後に初期化や学習作業を行う場合もあります。

修理後に同じ症状が出ないか、別の警告灯が点灯していないか。

ここまで確認して、ようやく車をお客さんへ返せます。

工賃には、部品を取り外す時間だけでなく、組み付け、調整、点検、試運転なども含まれているのです。

特殊な工具や設備が必要な修理もある

車の整備では、一般的なレンチだけでは作業できないことがあります。

車を持ち上げるリフト、故障診断機、エアコンガスを回収する装置、プレス機、トルクレンチ、車種専用の特殊工具などが必要です。

これらの設備は購入して終わりではありません。

定期的な点検や校正、修理、ソフトウェアの更新も必要になります。

また、最近の車は電子制御が増えています。

部品を交換したあとに診断機を接続し、車両へ新しい部品を認識させなければならないケースもあります。

作業者の経験だけでなく、設備や整備情報を維持するための費用も修理工場にはかかっています。

見積書で確認したいのは部品代だけではない

修理代が高いと感じたときは、工賃の金額だけを見るのではなく、どのような作業が必要なのかを確認してください。

「この部品を交換するために、何を取り外すのか」

「診断にはどのような作業が必要だったのか」

「交換後に調整や試運転が必要なのか」

きちんとした整備工場であれば、作業内容を説明してくれるはずです。

反対に、見積もりの内容が分かりにくい場合や、説明を聞いても納得できない場合は、作業を依頼する前に確認したほうがよいでしょう。

修理費が高いというだけで、すべての見積もりが適正とは限りません。

不要な交換が含まれていないか、同時交換する部品にはどのような理由があるのかを聞くことも大切です。

例えば、奥まった場所にある安いパッキンやホースを同時交換することがあります。

これは部品を売りたいからではなく、数カ月後に別の部品が壊れた場合、同じ場所をもう一度分解し、再び高い工賃が発生するのを防ぐためです。

部品ではなく「そこへたどり着くまで」にお金がかかる

車の修理で部品代より工賃が高くなる最大の理由は、交換する物の値段と作業量が別だからです。

部品代3,000円、工賃5万円という見積もりを見れば、驚くのは当然だと思います。

しかし、その3,000円の部品を交換するために、数多くの部品を取り外し、狭い場所で作業し、すべてを元に戻して正常に動くことを確認しなければならない場合があります。

整備士が受け取る工賃は、単にボルトを回した回数の料金ではありません。

原因を見つける知識。

周辺部品を壊さずに分解する技術。

正しく組み直す責任。

修理後の安全を確認する時間。

それらを含めたものが工賃です。

車の修理では、交換する部品が安いからといって、修理全体も安いとは限りません。

見積書を受け取ったときは部品の価格だけで判断せず、「その部品を交換するために、どこまで分解する必要があるのか」を聞いてみてください。

修理代6万円のうち部品代が数千円だったとしても、残りの金額には、それだけの作業が必要になる理由があるのです。

故障診断機があれば、車に記録された故障コードを読み取ることができます。

僕が使っているLAUNCH CR529のように、個人でも購入できる診断機もあります。警告灯が点灯したとき、車がどの系統に異常を検知しているのかを確認できるので、自分の車の状態を知るための道具としては便利です。

ただし、表示された故障コードが、そのまま交換すべき部品を示しているとは限りません。

例えばセンサー関係の故障コードが記録されていても、原因がセンサー本体ではなく、配線やコネクター、電源、別の部品にある場合もあります。

診断機は故障原因を探すための入口です。コードを読んだだけで部品を交換すると、直らないまま費用だけが増える可能性があります。

僕が使っているLAUNCH CR529については、こちらで詳しく紹介しています。