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突然ハンドルが重くなった!電動パワステの故障原因はパワステ本体とも限らない!症例3つ

走行中、突然ハンドルが重くなった。

メーターにはハンドルのような形をした警告灯が点灯している。

こうなると、多くの人は電動パワーステアリング本体が壊れたと考えるでしょう。

確かに電動パワステのモーターやECUが故障することはあります。しかし、電動パワステの警告灯が点灯したからといって、必ずパワステ本体が原因とは限りません。

僕がこれまで経験した中には、

・速度センサーの故障
・バッテリーの著しい劣化
・電動パワステASSYやECU本体の故障

という、まったく異なる三つの事例がありました。

特に怖かったのは、弱ったバッテリーでエンジンを始動し、そのまま走ろうとした瞬間にエンジンまで停止したフォルクスワーゲン・ポロです。

今回は、電動パワステの異常が発生する意外な原因について、実際に経験した事例を交えて紹介します。

電動パワステは何をしているのか?

現在の車では、電動パワーステアリングが広く使われています。

ハンドルを操作したとき、その力や方向をセンサーが検知します。その情報を受けたパワステECUがモーターを制御し、運転手のハンドル操作を補助しています。

油圧式パワステのようにエンジンでポンプを常時回す必要がないため、燃費や制御の面で有利です。

一方、電動パワステは電気で動いています。

そのため、

・バッテリー電圧
・オルタネーターの発電状態
・車速信号
・操舵トルクセンサー
・パワステモーター
・パワステECU
・各コンピューター間の通信

など、さまざまな情報や電源状態に影響されます。

警告灯が点灯したからといって、いきなり電動パワステASSYを交換するのは早すぎます。

原因を正しく診断しないと、高額な部品を交換しても直らない可能性があります。

事例1 スピードメーターが動かない車でパワステ異常

一つ目は、電動パワステの警告灯だけでなく、スピードメーターも動かなくなった車です。

診断を進めた結果、原因は速度センサーの故障でした。

電動パワステは、車の速度に応じてアシスト量を変えています。

停車中や低速走行時には、駐車や切り返しがしやすいようにハンドルを軽くする必要があります。

反対に高速走行中までハンドルが軽すぎると、わずかな操作で車が大きく動いてしまい危険です。そのため高速になるほど、操舵に適度な重さを持たせます。

この制御に必要なのが車速信号です。

速度センサーが故障して車速を正しく把握できなくなると、パワステECUはどれだけアシストすればよいのか判断できません。

誤ったアシストを続けるより、機能を制限または停止させた方が安全だと判断し、警告灯を点灯させる場合があります。

この事例では、スピードメーターが動いていないことが大きな手掛かりでした。

もしパワステ警告灯と同時にスピードメーターも動かなくなったら、パワステ本体だけでなく、速度センサーや車速信号の系統も疑う必要があります。

一見すると無関係に思える故障が、実はつながっているのです。

事例2 弱ったバッテリーで始動したポロがハンドルを切った瞬間に停止

二つ目は、フォルクスワーゲン・ポロで経験した事例です。

バッテリーが上がってエンジンを始動できなくなったため、ブースターを接続してエンジンをかけました。

エンジンが始動すればオルタネーターが発電します。

そのため、

「エンジンさえかかれば、発電しながら整備工場まで乗っていけるのではないか」

と考える人もいるでしょう。

しかし、このポロはそうなりませんでした。

ブースターでエンジンを始動し、発進しようとしてハンドルを切った瞬間、電力を一気に使われてエンジンが停止してしまったのです。

バッテリーは単にエンジンを始動させるだけの部品ではありません。

エンジンが回っている間も電圧を安定させ、瞬間的に大きな電力が必要になったときには、オルタネーターを補助する役割を持っています。

電動パワステは、ハンドルを操作した瞬間に大きな電力を使うことがあります。

この車のバッテリーは、ほとんど電気を蓄えられないほど劣化していました。ハンドルを切ったことで電圧が大きく低下し、エンジン制御を維持できなくなったと考えられます。

「オルタネーターが発電しているから、バッテリーが駄目でも走れる」

これは、現在の車では危険な考え方です。

電動パワステだけでなく、エンジンECU、燃料ポンプ、電子スロットル、点火装置、各種制御ユニットも電気を使います。

バッテリーが極端に劣化していると、電圧が不安定になり、

・パワステ警告灯が点灯する
・ABSや横滑り防止装置の警告灯が点灯する
・アイドリングが不安定になる
・シフト制御に異常が出る
・エンジンが停止する

といった症状が起きる可能性があります。

バッテリー上がりをジャンピングで復旧できたとしても、それで故障が直ったわけではありません。

特にハンドルを切ったときに照明が暗くなる、エンジン回転が大きく落ちる、警告灯が複数点灯するといった症状が出たら、自走は避けた方が安全です。

事例3 サンバーで起きる電動パワステ本体の故障

三つ目は、サンバーで何度か経験した電動パワステの故障です。

こちらは速度センサーやバッテリーではなく、電動パワステASSYやパワステECUそのものに問題が発生するケースです。

厄介なのは、症状が出たり消えたりすることです。

エンジンをかけ直すと警告灯が消え、ハンドルが再び軽くなる。

しばらく走ると、また警告灯が点灯して重くなる。

車を預かったときには正常に動いている。

お客さんへ返した直後に再発する。

こうした断続的な故障は、整備する側にとっても診断が難しい症状です。

一度復帰すると、

「自然に直った」

「接触が悪かっただけだろう」

と思いたくなります。

しかし、電動パワステASSYやECU内部の故障が進んでいる場合、一時的に復帰しても根本的には直っていません。

最終的にはアシストが働かなくなり、完全な重ステになる可能性があります。

電動パワステが止まっても、ハンドルとタイヤの機械的なつながりまで失われるわけではありません。そのため力を入れれば操舵できる車が多いのですが、停車中や低速では驚くほどハンドルが重くなります。

交差点を曲がっている途中や駐車場で突然アシストが切れると、いつもと同じ力ではハンドルを回せません。

運転手が驚いて操作を止めてしまったり、曲がり切れなくなったりする危険があります。

警告灯が消えたから直ったとは限らない

電動パワステの異常では、エンジンを再始動すると警告灯が消えることがあります。

しかし、警告灯が消えたことと故障が直ったことは別です。

コンピューターが一時的に制御を復帰させただけかもしれません。

また、現在は警告灯が消えていても、パワステECUには過去の故障コードが残っている場合があります。

故障コードを読み取れば、

・電源電圧の低下
・車速信号の異常
・トルクセンサーの異常
・モーター回路の異常
・ECU内部の異常
・通信エラー

など、診断の手掛かりを得られます。

ただし、故障コードに「パワーステアリング異常」と出たからといって、即座にパワステ本体が原因と決めつけることはできません。

電圧低下によって、複数のECUが同時に異常を記録していることもあります。

まずバッテリーの状態や充電電圧を確認し、そのうえで関連する信号や配線、本体を点検する必要があります。

ハンドルが重くなったら走ってもいい?

電動パワステのアシストが停止しても、車によっては走行できてしまいます。

だからといって、そのまま走り続けてよいとは限りません。

次のような場合は、安全な場所に停止してロードサービスを呼んだ方がいいでしょう。

・急にハンドルが極端に重くなった
・交差点を曲がることも難しい
・複数の警告灯が同時に点灯した
・エンジン回転が不安定になった
・メーターや照明が暗くなる
・焦げ臭さや異音がある
・スピードメーターも動かない
・再始動してもすぐに症状が出る

特に電圧低下が原因の場合、次に止まるのがパワステだけとは限りません。

ポロの事例のように、ハンドルを操作した瞬間にエンジンまで停止する可能性があります。

走行中にエンジンが止まれば、パワステだけでなくブレーキの補助力にも影響することがあります。

「整備工場まで近いから」と無理に走るより、積載車で運んだ方が安全です。

電動パワステの警告灯だけを見て部品を注文してはいけない

電動パワステの故障診断で重要なのは、同時に何が起きているかを確認することです。

スピードメーターも止まっているなら、車速信号を疑う。

バッテリー上がりの直後なら、電源電圧を疑う。

エンジンをかけ直すと復帰する症状を繰り返しているなら、パワステASSYやECUの内部故障も疑う。

それぞれ、修理する部品も費用も大きく違います。

電動パワステASSYは高額になることがあります。車種によってはモーターやECUだけでは供給されず、ステアリングコラムを含めたASSY交換になる場合もあります。

そんな高額部品を「警告灯が点いたから」という理由だけで交換し、実は原因がバッテリーや速度センサーだったら大変です。

僕は故障診断をするとき、一つの症状だけで犯人を決めつけないようにしています。

警告灯だけではなく、

・どんな状況で発生したのか
・ほかの警告灯も点灯したのか
・メーターは正常だったか
・バッテリー上がりの直後ではないか
・再始動すると復帰するのか
・気温や走行時間によって変化するのか

といった情報を組み合わせて考えます。

電動パワステの異常は、車からの電気的なSOSかもしれない

電動パワステ警告灯が点灯してハンドルが重くなると、どうしてもパワステ本体の故障だと思ってしまいます。

しかし、僕が経験した三つの事例では原因がそれぞれ違いました。

一つ目は速度センサーの故障。

二つ目は、電気をほとんど蓄えられなくなったバッテリー。

三つ目は、電動パワステASSYやECU本体の故障です。

特に覚えておいてほしいのは、バッテリーが上がった車をジャンピングで始動できても、そのまま安全に走れるとは限らないことです。

現在の車は、エンジンが回っているだけでは正常に走れません。安定した電源があって初めて、電動パワステや各種コンピューターが働きます。

ハンドルが重くなった。

パワステ警告灯が点灯した。

でも再始動したら直った。

そこで安心せず、故障コードと電源状態を一度確認してください。

一時的に軽くなったハンドルの奥で、車はすでに次の異常を知らせているかもしれません。

noteと週刊MHO通信を始めました

整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。

普段の自動車記事では書ききれない、修理現場での経験、仕事への考え方、独立するまでの道のりなども残していく予定です。

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