エンジン

高速道路で突然パワーダウン…原因はまさかのエンジンブロー。分解して判明した「ピストンリング固着」の恐ろしさ

「高速道路を走っていたら、急にアクセルを踏んでも加速しなくなった…。」

このような症状は、ドライバーなら誰でも焦ると思います。

今回入庫したのは、三菱 トッポに搭載されている3G83エンジン

オーナーさんからは、

「高速道路を走っていたら急に力がなくなった。なんとか最寄りのインターチェンジまでたどり着いた。」

という連絡が入りました。

幸いエンジンは停止せず、自走で高速道路を降りられたため二次災害にはなりませんでしたが、この症状は決して軽く考えられるものではありません。

すぐにレッカーで引き取りに向かいました。


高速道路で急にエンジンの力がなくなる原因

高速道路で突然パワーダウンすると、多くの人は

「エンジンが壊れた!」

と思います。

もちろん、その可能性もあります。

しかし実際には原因はさまざまです。

例えば、

  • イグニッションコイルの故障
  • スパークプラグの失火
  • インジェクターの故障
  • 燃料ポンプの不良
  • 触媒の詰まり
  • ターボの故障
  • 圧縮抜け

などが考えられます。

今回の車はエンジン自体は普通に始動していました。

つまり、タイミングベルト切れのような「エンジンが全く動かない故障」ではありません。

まずは基本に忠実に診断していきます。


点火系は正常。それでも片肺状態

工場へ搬入し、エンジンを始動すると明らかに異常です。

アイドリングはガタガタ。

アクセルを踏んでも吹け上がらず、いわゆる片肺運転のような状態になっています。

まず疑うのは点火系です。

  • スパークプラグ
  • イグニッションコイル
  • 点火信号

これらを確認しましたが異常なし。

次に燃料系も確認しましたが決定的な異常は見つかりません。

そこで最後の基本点検とも言える圧縮圧力測定を行いました。

すると驚きの結果が待っていました。

2番シリンダーだけ圧縮がほぼゼロ。

完全な圧縮抜けです。


圧縮抜けの原因は何なのか?

エンジンの圧縮が抜ける原因はいくつかあります。

シリンダーヘッド側

  • バルブの曲がり
  • バルブの焼損
  • バルブシート不良
  • ヘッドガスケット抜け

シリンダーブロック側

  • ピストン破損
  • ピストンリング固着
  • シリンダー摩耗
  • ピストン焼き付き

原因によって修理方法はまったく変わります。

そこでエンジンを降ろし、分解して原因を特定することにしました。


ヘッドを分解したが異常なし

まずはシリンダーヘッドを取り外します。

僕は、

「バルブが欠けているのでは?」

と予想していました。

しかし実際は違いました。

バルブを一本一本取り外して点検しましたが、

  • 曲がりなし
  • 焼けなし
  • 欠けなし

燃焼室にも大きな損傷はありません。

ヘッドガスケットにも決定的な損傷は見つかりませんでした。

つまり原因は腰下です。


ピストンを抜いて原因が判明

シリンダーブロックを分解し、問題の2番シリンダーのピストンを取り外しました。

その瞬間、

「あぁ、これだ。」

と思いました。

整備士なら一度は勉強する代表的な故障です。

ピストンリングのスティック現象。


スティック現象とは?

ピストンリングは、

  • 圧縮を保つ
  • エンジンオイルを適量だけ残す

という重要な役割があります。

リングは溝の中で自由に動かなければなりません。

しかし今回のリングは…

完全に固着。

指で押しても全く動きません。

これがスティック現象です。


スティック現象が起こる原因

最大の原因は、

オイル管理不良。

エンジンオイルを長期間交換しないと、

オイルは熱で酸化し、

  • スラッジ
  • カーボン
  • ワニス

が発生します。

これらがリング溝へ入り込み、

リングを固着させてしまいます。

リングが動かなくなると、

シリンダー壁へ密着できなくなり、

圧縮漏れが起こります。

その結果、

  • パワー不足
  • 始動不良
  • アイドリング不調
  • 燃費悪化

など様々な症状が現れます。

さらにオイルリングまで固着すると、

オイル上がりが発生し、

マフラーから白煙が出たり、オイル消費が急激に増えることもあります。


他のシリンダーも危険な状態だった

今回点検すると、

他の3気筒もリング周辺にはカーボンが付着していました。

つまり、

2番だけが特別悪かったわけではありません。

あと少し走っていたら、

他のシリンダーも同じように圧縮が抜けていた可能性があります。


3G83エンジンは本当に丈夫

ここで誤解しないでいただきたいのが、

3G83エンジンは非常に丈夫なエンジンです。

整備士なら共感してくれると思いますが、

オイル交換に来た車でドレンボルトを外すと、

「コップ一杯くらいしかオイルが出てこない。」

そんな状態でも普通に走っている3G83は珍しくありません。

本当に耐久性の高い名エンジンです。

しかし、

どれだけ丈夫でも、

メンテナンス不足には勝てません。

今回も長年蓄積したスラッジとカーボンがリングを固着させ、ついに圧縮を維持できなくなってしまいました。


修理はオーバーホール?載せ替え?

昔であればエンジンをオーバーホールするという選択肢もありました。

しかし現在は、

  • 部品代
  • 工賃
  • 作業時間

を考えると、

中古エンジンやリビルトエンジンへ載せ替える方が現実的です。

特に軽自動車では、オーバーホール費用より載せ替えの方が安く済むケースも少なくありません。


添加剤で防げる?

今回のようにリングが完全に固着し、圧縮が抜けてしまった状態では、添加剤だけで元通りになることはほぼありません。

ただし、

リングが動き始めにくくなっている程度であれば、

洗浄性能を持つ添加剤によって改善するケースもあります。

もちろん万能ではありませんが、

走行距離が増えてきた車やオイル管理に不安がある車では、予防的に使用する価値はあります。


エンジンを長持ちさせる一番の方法

エンジンを長く使いたいなら、

特別なことは必要ありません。

一番重要なのは、

定期的なオイル交換。

そして、

オイルが減る車は、

レベルゲージで油量を確認する習慣をつけること。

たったこれだけです。

オイル交換を数千円節約した結果、

数十万円のエンジン載せ替えになってしまっては本末転倒です。


まとめ

今回の故障原因は、ピストンリングのスティック現象による圧縮抜けでした。

3G83エンジンは非常に耐久性が高いことで知られていますが、それでもオイル交換を怠れば、内部には少しずつスラッジやカーボンが蓄積し、やがて取り返しのつかない故障へとつながります。

高速道路で突然パワーがなくなるという症状は、点火系や燃料系だけでなく、エンジン内部の異常が隠れていることも少なくありません。

「最近オイル交換をしていないな…」

そう思った方は、この機会にぜひ愛車のオイル交換時期と油量を確認してみてください。

エンジンを守る一番安くて確実なメンテナンスは、今も昔も変わらず定期的なオイル交換です。

エンジンをきれいにしたいのなら、遅効性フラッシング剤がおすすめです。速効性だと、汚れがオイルラインを詰まらせることがありますが、遅効性の場合はじわりじわりと落としてくれるのがいい。