「ハイブリッド車に乗り換えれば燃費も良くなるし、航続距離もぐんと伸びるはず」。そう思っている方は多いのではないでしょうか。たしかに燃費自体は良くなるケースがほとんどです。ただ、実際に整備の現場で色々な車を見ていると、ハイブリッド化によって航続距離がイメージほど伸びていない車も珍しくありません。その理由は燃費だけでなく、燃料タンクの容量にあります。
今回取り上げるスバル・レヴォーグ レイバックS:HEVは、このあたりの事情を踏まえると「よくこの容量を確保したな」と感じさせる一台です。ベストカーWebの記事によると、WLTCモード燃費19.0km/Lに対し、燃料タンクは1.8Lターボ車と同じ63Lを確保しているとのこと。計算上は1000kmを大きく超える航続距離が見込めるそうです。なぜこれが「すごい」と言えるのか、整備士目線で解説していきます。
ハイブリッドシステムを積めば燃費が良くなるのは間違いありません。モーターがエンジンの負担を肩代わりしてくれるので、同じ量のガソリンでより長く走れるようになります。
ただし航続距離は「燃費×タンク容量」で決まります。燃費がいくら良くなっても、タンク容量が小さくなってしまえば、航続距離の伸びは相殺されてしまいます。ここを見落として「ハイブリッド=航続距離が伸びる」と単純に考えてしまうと、実際の数字を見てがっかりすることもあります。
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なぜこんな話をするかというと、ハイブリッド車はガソリン車と比べて燃料タンクが小さく設計されるケースが実際に多いからです。
ハイブリッドシステムは、モーターやインバーター、駆動用バッテリーといった専用の部品を積む必要があります。これらをどこに搭載するかというと、車種によってはラゲッジルームの下や、燃料タンクが収まっているフロアパネル周辺のスペースを使うことになります。結果として、もともとガソリン車用に設計されていたタンクのスペースを圧迫してしまい、タンク容量を削らざるを得ない、という設計上の事情が生まれます。
整備やカスタムの仕事をしていると、同じ車種のガソリン車とハイブリッド車を見比べる機会がありますが、タンクの形状や容量が明らかに違うことはよくあります。これはメーカーが手を抜いているわけではなく、限られたフロア下のスペースにバッテリーとタンクを両方押し込む以上、どうしても出てくるトレードオフなのです。
もう少し詳しく説明すると、駆動用バッテリーはある程度まとまった体積と重量があり、しかも車の重心に近い位置、つまり床下中央付近に置きたいという設計上の要求があります。これは走行安定性やクラッシュセーフティの観点からも理にかなった配置です。
一方で燃料タンクも、衝突安全性や重量バランスを考えると床下に置くのが基本です。つまりバッテリーとタンクは、同じ「床下の良い場所」を取り合う関係になりやすいわけです。どちらかを優先すれば、もう一方は小さくするか、形状を変えて隙間に押し込むしかありません。この結果、ハイブリッド化とともにタンク容量が小さくなる車が出てくる、という流れになります。
こうした事情を踏まえると、レイバックS:HEVが1.8Lターボ車と同じ63Lのタンクをそのまま確保できたというのは、設計段階でタンクとハイブリッドユニットの配置にかなり気を使った結果だと考えられます。
ベストカーWebの記事ではタンク容量を維持できた具体的な設計手法までは触れられていませんが、少なくとも結果として「ハイブリッド化=タンク縮小」という、よくあるトレードオフを避けられているのは間違いありません。長距離移動の多いユーザーにとって、これは燃費の向上以上にありがたい話だと思います。
WLTCモード燃費19.0km/Lと63Lタンクを単純にかけ算すると、1197km分の燃料を積んでいる計算になります。これが「計算上1000km超え」という数字の根拠です。
ただし、整備士としてひとつ補足しておきたいのは、WLTCモードはあくまで国が定めた試験条件での数値であり、実際の街乗りや高速道路、エアコンの使用状況によって実燃費は変わってくるということです。また、タンクを空になるまで走ることは現実的ではなく、警告灯が点いてからも走れる距離を見込んでも、残量に余裕を持たせて給油するのが基本です。
ですので「実際に1000km無給油で走れる」と考えるのではなく、「それだけ余裕のあるタンク容量を持っている」と捉えるのが正確な理解です。実燃費が多少落ちても、もともとの容量に余裕があるぶん、航続距離が極端に短くなる心配をしなくて済む、というのがこの車の強みだと言えます。
タンク容量に余裕があることは、燃費の数字以上に日常の使い勝手に直結します。給油の回数が減れば、それだけガソリンスタンドに寄る手間が減りますし、長距離ドライブや旅行の際にも給油のタイミングを気にする頻度が下がります。
また整備の立場から見ると、満タンにする頻度が少なくなりすぎるのも実は注意が必要です。タンク内のガソリンは時間が経つと劣化していきますし、残量が極端に少ない状態が続くと、タンク内の燃料ポンプの冷却性能に影響が出ることもあります。航続距離に余裕があるからといって、給油をあまりに先延ばしにしすぎず、適度なタイミングで給油する習慣は維持しておいたほうが無難です。
レヴォーグ レイバックS:HEVの63Lタンクの話は、単に「航続距離が長くてすごい」というだけでなく、ハイブリッド車の設計事情を知ると、その価値がより分かりやすくなります。覚えておきたいポイントは次の通りです。
ハイブリッド化は燃費を良くする一方で、タンク容量が小さくなりがちな車も多いこと。航続距離は燃費だけでなくタンク容量とのセットで判断すべきこと。カタログ上の計算値と実燃費には差があるため、余裕を持った給油計画を立てること。そして、タンクに余裕があっても給油を先延ばしにしすぎず、適度なタイミングでの給油を習慣にすること。
車選びやハイブリッド車への乗り換えを検討している方は、燃費の数字だけでなく、タンク容量にも目を向けてみると、実際の使い勝手がより具体的にイメージできると思います。
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ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。