
車を買うとき、何を基準に選んでいますか?
デザイン、装備、走行性能、安全性、そして燃費。
最近は燃費のよさを理由に、ハイブリッド車を選ぶ人も多いと思います。
確かにハイブリッド車は燃費がいい。ガソリンスタンドへ行く回数も減りますし、街乗りでの静粛性や加速性能にも優れています。
ただ、整備士として25年ほど車に関わってきた僕は、ひとつ気になっていることがあります。
ハイブリッドを買ったからといって、必ずしも経済的に得をするわけではない。
むしろ、ガソリン車との価格差を取り戻せないまま乗り換えてしまう人もいるのです。
これはハイブリッドだけでなく、電気自動車にも共通する問題です。
ハイブリッドとガソリン車では、購入価格が違う
例えばホンダのフリード。

同じような装備のガソリン車とハイブリッド車を比べると、車両価格には数十万円の違いがあります。
もちろん、装備の差もあるため、単純にハイブリッドシステムだけの価格差とは言えません。
それでも、購入時に支払う金額が大きく変わることは事実です。
仮にガソリン車とハイブリッド車の購入総額に35万円の差があったとしましょう。
ハイブリッドの方が燃費がいいからといって、この35万円を燃料代で回収するには、それなりの距離を走らなければなりません。
年間5,000kmしか走らない人はどうなる?
分かりやすく、次の条件で計算してみます。

- ガソリン車:15km/L
- ハイブリッド車:23km/L
- ガソリン価格:170円/L
- 購入価格の差:35万円
※燃費と燃料価格は計算用の仮定です。
年間5,000km走った場合、ガソリン車の燃料代は約56,700円。
一方、ハイブリッド車は約37,000円です。
年間の差額は約19,700円。
つまり、35万円の価格差を燃料代だけで取り戻そうとすると、約18年かかる計算です。
年間1万km走っても約9年。
年間2万km走ってようやく4年半程度です。
もちろん実際には、燃料価格、走り方、車種、税金、下取り価格などによって結果は変わります。
それでも、走行距離の少ない人ほど燃費の差による恩恵が小さいことは理解できると思います。
燃費だけを見ていると、車選びを間違える
僕はハイブリッド車を否定しているわけではありません。

ハイブリッドには、燃費以外にも魅力があります。
モーターによる滑らかな発進、静粛性、街乗りでの扱いやすさ。車種によってはガソリン車より力強い加速を楽しめます。
そういった価値を求めて購入するのであれば、多少高くても納得できるでしょう。
問題なのは、燃料代だけで必ず元が取れると思って購入してしまうことです。
たとえば、年間3,000kmほどしか走らない人が、燃費のよさだけを理由に数十万円高いハイブリッド車を選んだとします。
その車を5年で乗り換えるのであれば、燃料代の節約額はそれほど大きくなりません。
結果として、ガソリン車の方がトータルで安かったということも十分にあり得ます。
EVも同じ。安く走れるからといって得とは限らない
これは日産サクラのような軽EVにも言えることです。

自宅で安く充電できる環境があれば、電気自動車の走行コストは魅力的です。
しかし、新車購入価格が高く、年間走行距離が短ければ、ガソリン車との差額を取り戻すのは難しくなります。
さらに、充電設備の設置費用や、公共充電の利用料金も考える必要があります。
EVの場合は、購入後に自分の使い方と合わないと気づくこともあります。
冬場の航続距離、長距離移動、充電時間などです。
僕が住んでいる長野県のような寒冷地では、冬場の暖房使用による電力消費も無視できません。
ただし、中古車になると事情は変わります。
以前は新車で250万円前後していた軽EVが、中古車では100万円台前半で購入できることもあります。
そうなると、初期費用の差が小さくなり、EVの経済的な魅力が増す可能性があります。
だからこそ、中古のサクラは今、注目する価値があると思っています。
中古EVはバッテリーの状態を必ず確認したい
とはいえ、中古EVを価格だけで選ぶのは危険です。
特に重要なのが駆動用バッテリーです。
EVのバッテリーは、使用状況や経年によって劣化します。
充電を繰り返した回数だけでなく、温度環境や保管状態なども影響します。
中古車の場合、走行距離が少ないからといって、必ずしもバッテリーの状態が良好とは限りません。
販売店でバッテリーの健全性や保証条件を確認し、自分の生活で必要な航続距離を確保できるか判断することが大切です。
購入価格が安くても、用途に合わなければお買い得とは言えません。
最上級グレードを選んで後悔する人もいる
もうひとつ、雑誌の記事を読んでいて共感したのが、グレード選びです。

車を買うとき、せっかくだから最上級グレードにしようと考える人は少なくありません。
もちろん、それが欲しい装備なら問題ありません。
しかし、実際にはほとんど使わない装備のために数十万円を追加してしまうこともあります。
大径アルミホイール、上質な内装、大画面ナビ、電動装備など。
購入時には魅力的に見えても、数年後に下取りへ出したとき、追加した金額がそのまま評価されるとは限りません。
さらに、大径タイヤは交換時の費用が高くなる場合もあります。
僕は、グレードを選ぶときには標準装備と追加装備をよく比較して、本当に必要なものを見極めるべきだと思っています。
車は「元を取る」ことだけが目的ではない
ここまで経済性について書いてきましたが、最後にもうひとつ伝えたいことがあります。

車は、必ずしも元を取るために買うものではないということです。
僕自身、過去にいろいろな車に乗ってきました。
燃費だけを考えれば、スポーツカーなど選ぶ理由がないかもしれません。
それでも、FC3Sやカプチーノに乗っていた時間は、僕にとって大きな価値がありました。
ハイブリッドの静粛性が好きだから選ぶ。
EVの加速感が気に入ったから選ぶ。
最上級グレードの装備が欲しいから選ぶ。
それなら、それは十分に正しい車選びです。
僕が言いたいのは、経済性を目的に購入するのであれば、燃費だけでなく購入価格から維持費、売却価格まで含めて比較してほしいということです。
年間何km走るのか。
何年間乗るつもりなのか。
車両価格はいくら違うのか。
燃料代や電気代はどれくらい変わるのか。
そして、将来いくらで売れそうなのか。
そこまで考えて初めて、自分にとって本当にお得な車が見えてきます。
車を買ってから後悔しないために。
カタログの燃費や豪華な装備だけではなく、自分の使い方に合った一台を選んでほしいと思います。
中古アクアは買って大丈夫? 33万円・10年落ちを整備士が買ってみた
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。
