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7年ぶり復活の新型パジェロは、もう昔の価格では買えない?それでも「乗る価値がある」と思う理由

三菱自動車が2026年9月2日、新型パジェロを世界初公開しました。

国内市場への復活は約7年ぶりです。予約注文は10月1日から始まり、価格は10月29日に発表。国内発売は12月17日を予定しています。

ただし、今回のパジェロは単なる復刻モデルではありません。

かつてのパジェロといえば、アウトドア好きのお父さんが家族を乗せ、キャンプ場やスキー場へ向かう姿が似合う車でした。

新型は、そこから明確に立ち位置を変えています。

三菱自動車を象徴するフラッグシップモデルであり、本格的な悪路走破性に上質さを加えた高級クロスカントリーSUVです。

直接のライバルとして意識されるのは、トヨタのランドクルーザー250でしょう。

かつてRVブームをけん引したパジェロが、今度は高級SUV市場へ殴り込みをかけます。

新型パジェロは本当にランドクルーザーの牙城を崩せるのか。

これまでさまざまな年式のパジェロを整備してきた立場から、新型の内容とパジェロという車について考えてみます。

パジェロは三菱自動車を象徴する車だった

初代パジェロが登場したのは1982年です。

本格的な悪路走破性を持ちながら、乗用車としての快適性も備えたクロスカントリー4WDとして登場しました。

1990年代に起きたRVブームでは、パジェロが三菱自動車を代表する車になりました。

大きなタイヤ、高い車高、背面に装着されたスペアタイヤ。

街中を走っていても、ひと目でパジェロだと分かる存在感がありました。

1992年には、国内だけでパジェロシリーズを8万台以上販売したとされています。

今では考えにくい数字です。

パジェロに乗っていること自体が、一種のステータスでもありました。

三菱自動車によると、初代から4代目までの累計生産台数は329万台を超え、世界170以上の国と地域で販売されています。

日本だけで人気だった車ではありません。

世界各地の厳しい環境で使われ、三菱自動車の四輪駆動技術と耐久性を証明してきた車です。

参考:三菱自動車「新型クロスカントリーSUV『パジェロ』を世界初披露」
https://www.mitsubishi-motors.com/jp/newsroom/newsrelease/2026/20260902_1.html

しかしRVブームが終わると、ユーザーの好みは都市型SUVやミニバンへ移っていきました。

パジェロは専用設計の本格四輪駆動車だったため、販売台数が減るほど採算面で不利になります。

三菱自動車の業績が悪化する中、パジェロはリストラの対象となり、国内販売を終了しました。

一つの時代を築いた看板車が姿を消したわけです。

新型はトライトンをベースにしたラダーフレーム

今回復活する新型パジェロは、タイで生産しているピックアップトラック、トライトンの技術を活用しています。

基本となるのは、頑丈なラダーフレームです。

先代パジェロは、モノコックボディーにラダーフレーム構造の考え方を組み合わせたビルトインフレームを採用していました。

新型は再び、独立したラダーフレームを使う構造になりました。

ただし、トライトンの車体へパジェロのボディーを載せただけではありません。

公表されている情報では、サイドフレームを太くするなど新型パジェロ用に設計を見直し、強度と剛性を向上させています。

トレッドもトライトンより広げ、ホイールベースは260mm短縮されています。

設計の共用はほとんどないと説明されているため、トライトンのSUV版という単純な車ではなさそうです。

ボディーサイズは全長4,920mm、全幅1,925mm、全高1,910mm。ホイールベースは2,870mmです。

日本の道路では、決して小さな車ではありません。

全幅1,925mmとなれば、狭い駐車場や昔ながらの住宅街では気を使うでしょう。

しかし、この大きさがあるからこそ、3列7人乗りの室内空間と本格四輪駆動車らしい安定感を実現できます。

最低地上高は20インチタイヤ装着車で230mm。

見た目だけを四駆風にしたSUVではなく、本当に悪路へ入ることを考えた寸法です。

エンジンは2.4Lクリーンディーゼル

新型パジェロには、専用開発された2.4Lクリーンディーゼルエンジンが搭載されます。

Screenshot

最大トルクは480N・mで、新開発の8速ATと組み合わされます。一部仕様は470N・mです。

電動化が進む今、あえてクリーンディーゼルを選んだところにも、パジェロらしさを感じます。

重たい車体を動かし、急な登り坂や悪路を走るには、低回転から力を出せるディーゼルエンジンが向いています。

昔のパジェロにもディーゼル車がたくさんありました。

僕もこれまで、いろいろな年式のパジェロを整備してきました。

初期のディーゼルエンジンは、現在のクリーンディーゼルとはまったく違います。

アクセルを強く踏み込むと、後ろから黒煙がモクモクと出る。

後ろを走っている人からすれば、

「前のパジェロ、今から燻製でも始めるのか?」

と思うほど黒煙が出る車もありました。

当時は、それがディーゼル車の日常でもありました。

現在の排出ガス基準では、もちろん許されない状態です。

新型に搭載されるのは、排出ガス対策や静粛性を大幅に進化させたクリーンディーゼルです。

昔のような黒煙を懐かしむ必要はありません。

あの力強い低速トルクを残しながら、静かで上質な走りを目指しているのが新型です。

四輪駆動はパジェロらしさを凝縮

新型パジェロには、スーパーセレクト4WD-Ⅱが搭載されます。

走行状況に合わせて、

2H:後輪駆動

4H:フルタイム4WD

4HLc:センターデフロック

4LLc:ローギヤ+センターデフロック

という四つのモードを選択できます。

舗装路では扱いやすく、雪道や未舗装路では四輪の駆動力を活用し、本格的な悪路ではセンターデフロックとローギヤを使う。

普段使いと悪路走行を一台で両立する、パジェロ伝統のシステムです。

さらに新型では、三菱自動車の車両運動統合制御システムであるS-AWCも採用されました。

4WDだけではなく、AYC、横滑り防止装置、ABSなどを連携させ、四輪の駆動力と制動力を制御します。

NORMAL、ECO、GRAVEL、SNOW、MUD、SAND、ROCKという七つのドライブモードも用意されています。

雪国で生活していると、カタログに書かれた四輪駆動性能が単なる飾りではないことが分かります。

除雪が間に合わない朝。

わだちが深くなった道路。

水分を含んだ重たい雪。

こうした状況では、タイヤの性能に加えて、車がどのように四輪を制御するかが重要になります。

パジェロは、舗装路を快適に走るだけの高級SUVではありません。

いざというとき、本当に頼れる車であることを目指しています。

背面タイヤがなくなったのは少し寂しい

歴代パジェロを知っている人が新型を見て、気になるところがあります。

背面スペアタイヤがなくなりました。

従来のパジェロでは、リアゲートの外側にスペアタイヤが取り付けられていました。

あのスペアタイヤも、パジェロらしさを作っていた要素です。

新型では、スペアタイヤをトランク下へ移動しました。

リアゲートも横開きではなく、上へ跳ね上げるタイプになっています。

後ろから見たときの「いかにも四駆」という雰囲気は、少し薄くなったかもしれません。

一方、実用性は上がっています。

跳ね上げ式のリアゲートなら、雨の日には簡単な屋根代わりになります。狭い場所で横開きの大きなリアゲートを開ける苦労も減ります。

車室内のスペースも確保しやすくなります。

昔ながらの姿を守るだけではなく、現在の使われ方へ合わせて変える。

寂しさはありますが、これは合理的な進化だと思います。

高級車になった新型パジェロ

新型で大きく変わったのは、悪路走破性よりも車の立ち位置かもしれません。

三菱自動車は新型を、ブランドの象徴となるフラッグシップモデルに位置付けています。

室内には2枚の大型ディスプレイを組み合わせたモノリスディスプレイを採用。

歴代パジェロを象徴する3連メーターも、高度計、方位計、温度計、車体の傾きなどを表示するデジタル式のマルチメーターとして復活しました。

前後のドアにも遮音ガラスを採用し、静粛性を高めています。

3ゾーン独立温度調整式エアコン、シートベンチレーション、ヤマハと共同開発した12スピーカーのオーディオなども用意されます。

パジェロというより、高級ホテルが悪路を走っているような装備です。

かつてのパジェロは、本格四駆ではあっても、多くの家庭が現実的に購入を検討できる車でした。

先代のファイナルエディションは450万円台でした。

新型の価格はまだ発表されていませんが、装備や車格を考えれば、それを大きく上回る可能性があります。

500万円台で収まるのか。

600万円台から始まるのか。

上級グレードはさらに高くなるのか。

価格発表は大きな注目点です。

タイヤも消耗部品も安くはない

僕がパジェロを整備してきた中では、車そのものに対して「故障が多い」という印象はありません。

年式の違うパジェロを何台も見てきましたが、致命的な故障へ頻繁に遭遇した記憶はないのです。

丈夫に作られ、きちんと整備されていれば長く使える車だと思います。

ただし、維持費まで乗用車と同じというわけではありません。

まずタイヤが大きい。

大径タイヤは一本あたりの価格が高く、四本交換すれば相当な金額になります。

車重があるため、ブレーキや足回りにも大きな負担がかかります。

エンジンオイルや各種ギヤオイルなど、使う油脂類の量も小型車より多くなります。

部品そのものが大きく、重く、作業にも時間がかかります。

新型では電子制御や先進安全装備も大幅に増えています。故障時の診断や部品交換は、昔のパジェロより複雑になるでしょう。

購入価格だけを見て無理をすると、タイヤ交換や車検の時期に驚くかもしれません。

パジェロへ乗るなら、日常の燃料代だけでなく、大径タイヤや消耗部品の費用も含めて考える必要があります。

それでも、乗る価値がある車

それでも僕は、パジェロには乗る価値があると思っています。

車は、安く移動するためだけの道具ではありません。

もし燃費と維持費だけですべてが決まるなら、大きなクロスカントリー4WDは必要ないでしょう。

しかしパジェロには、

この車なら遠くまで行けそうだ。

雪が降っても帰ってこられそうだ。

舗装路が終わっても先へ進めそうだ。

という安心感と冒険心があります。

実際に悪路を走る機会が少なくても、その性能を持っていること自体が所有する喜びになります。

大きなタイヤは高い。

消耗部品も安くない。

車体も大きく、洗車するだけでも一仕事です。

おそらく価格も、昔のパジェロを知る人が気軽に買える水準ではないでしょう。

それでも、合理性だけでは説明できない魅力がある。

それがパジェロです。

パジェロ復活の本当の狙い

三菱自動車が新型パジェロへ期待しているのは、一台の販売台数だけではありません。

新型によって「本格四輪駆動」「信頼性」「上質さ」というパジェロのイメージを再構築し、今後はコンパクトカーや軽自動車を含めたシリーズ展開も構想しています。

すでにデリカでは、デリカD:5のイメージをデリカミニへ展開し、新しい顧客を獲得しました。

パジェロでも同じように、

本格的な新型パジェロでブランドの頂点を作る。

そのイメージを小型車や軽自動車へ広げる。

より多くの人が買えるパジェロシリーズを育てる。

という流れを考えているようです。

もしかすると、販売台数の主役は将来登場する小型パジェロや軽パジェロになるかもしれません。

しかし、そのシリーズに説得力を持たせるためには、頂点にいる新型パジェロが本物でなければなりません。

名前だけ復活させた都会派SUVでは、パジェロブランドは戻ってこないでしょう。

だからこそ三菱自動車は、ラダーフレーム、クリーンディーゼル、スーパーセレクト4WD-Ⅱ、S-AWCという技術を投入しました。

昔の栄光だけではランドクルーザーに勝てない

新型パジェロの前には、ランドクルーザーという非常に大きな壁があります。

ランドクルーザーは、悪路走破性や耐久性だけでなく、中古車価格やリセール、世界的な知名度まで含めて強いブランドです。

ジープ・ラングラーやランドローバー・ディフェンダー、中国メーカーの高級SUVなど、競合車も増えています。

「昔パジェロが売れたから、今回も売れる」

それほど簡単な市場ではありません。

かつてパジェロへ憧れた世代は年齢を重ねました。新型が狙う富裕層や若い世代に、現在の三菱自動車がどこまで魅力を伝えられるかが重要になります。

一方で三菱自動車には、他社にはない積み重ねがあります。

パジェロ、デリカ、ランサーエボリューション、アウトランダーPHEV、トライトン。

三菱自動車は、四輪を制御し、悪条件の中でも車を前へ進ませる技術を磨いてきたメーカーです。

パジェロは、その三菱らしさを最も分かりやすく表現できる名前です。

新型パジェロが売れるかどうかは、一車種の成否だけではありません。

三菱自動車がもう一度、

「四輪駆動なら三菱だ」

と思ってもらえるかどうかを左右する車です。

価格は高くなるでしょう。

タイヤも部品も安くありません。

全幅1,925mmという車体は、日本の狭い道では持て余すこともあると思います。

それでも、パジェロが帰ってきたことには大きな意味があります。

黒煙を上げながら走っていた初期のディーゼルパジェロを知っている身としては、最新技術と上質さをまとった新型が、どのような走りを見せてくれるのか楽しみです。

昔のパジェロをそのまま復活させたのではない。

過去の強さを土台に、今の時代へ合わせて作り直した。

新型パジェロは、三菱自動車がもう一度、自分たちの得意分野で勝負するための一台なのだと思います。

noteと週刊MHO通信を始めました

整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。

普段の自動車記事では書ききれない、修理現場での経験、仕事への考え方、独立するまでの道のりなども残していく予定です。

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