ダイハツ

車検から1か月でエアバッグ警告灯が点灯!「車検で壊しただろ」と言われた原因は?

「車検をやったばかりなのに、変な警告灯が点いたんだけど」

お客様から電話がかかってきました。

車はダイハツのタントです。

このタントは、約1か月前に車検を受けたばかりでした。

車検では補機駆動ベルトを1台分交換し、ブレーキパッドとブレーキローターも交換しています。

そのほか、ワイパーゴム、エアコンフィルター、エアクリーナーなども交換しました。

車検代は、全部合わせて13万円を少し超えるくらいでした。

決して安い金額ではありません。

それだけ支払った約1か月後に、今まで見たことのない警告灯が点いた。

お客様が不安になり、車検との関係を疑いたくなる気持ちも分かります。

電話で警告灯の形を聞いてみると、

「丸い赤いボールみたいなものが点いている」

という説明でした。

警告灯というものは、電話で説明してもらうのが意外と難しいものです。

エンジン警告灯なのか、ブレーキ警告灯なのか、エアバッグなのか。お客様はマークの正式名称を知らないことが多いため、形や色から推測するしかありません。

とりあえず、一度来店してもらうことにしました。

丸い赤いボールの正体はエアバッグ警告灯

実際にタントを確認すると、点灯していたのはエアバッグ警告灯でした。

メーターの中に表示される、人が丸いエアバッグを抱えているようなマークです。

ここでお客様から言われました。

「車検をやったばかりなのに、壊したんじゃないのか?」

車検で13万円以上を支払い、その1か月後に警告灯が点灯したわけです。

お客様の頭の中では、

車検に出した

高い整備代を支払った

その直後に警告灯が点いた

車検の作業で何か壊したのではないか

という流れになっていました。

時間的に近い出来事が続けば、そう考えてしまうのも無理はありません。

しかし、整備工場側から見ると、ここで一つ大きな疑問が出ます。

もし車検を受けた時点でエアバッグ警告灯が点灯していたら、その状態のまま検査を終えることはできません。

警告灯は、エンジンスイッチを入れた直後に一度点灯し、システムに異常がなければ消灯します。

それが消えずに点灯し続けている場合、エアバッグシステムが何らかの異常を検知しているということです。すなわち検査に適合しなくなります。

少なくとも車検時点では、エアバッグ警告灯が常時点灯していなかったと断言できるわけです。

このことを、できるだけ刺激しないように説明しました。

「車検のときにこの警告灯が点灯していた場合、そのまま車検を終えることはできないんです。車検時には点いていなかった警告灯が、その後に点灯した可能性があります」

ところが、お客様の怒りは収まりません。

「そんなことは知らない。車検をやった後に点いたんだから、車検と関係があるんじゃないのか」

説明すればするほど、整備工場が責任を逃れようとしているように聞こえてしまうことがあります。

このようなとき、店頭で言い合っても原因は分かりません。

まずは車を預かり、実際に何が起きているのかを診断することが先です。

後日、代車を用意できる日にタントを預からせてもらうことになりました。

診断機には「サイドエアバッグ断線」

車を預かり、診断機を接続しました。

エアバッグ警告灯が点灯しているからといって、すぐにエアバッグ本体が故障しているとは限りません。

故障コードはB1821 R側サイド点火系断線

エアバッグシステムには、エアバッグ本体のほかにも、衝突を検知するセンサー、シートベルトのプリテンショナー、配線、カプラー、制御コンピューターなどがあります。

診断機で故障コードを確認すると、サイドエアバッグ系統の断線を示す内容が記録されていました。

断線と表示されても、本当に配線が途中で切れているとは限りません。

カプラーの接触不良や端子の不具合でも、コンピューターから見れば電気が流れないため、断線として記録されることがあります。

「配線の途中で切れているのか?」

「まさかサイドエアバッグ本体ではないだろうな?」

そんなことを考えながら、診断を進めていきました。

そして運転席の下を確認すると、原因が見つかりました。

サイドエアバッグにつながるカプラーが抜けていたのです。

通常なら簡単には抜けないカプラー

エアバッグのカプラーは、安全に関係する重要な接続部分です。

一般的な電装品のカプラーとは違い、簡単に外れないように二重ロック構造などが採用されています。

普通に車へ乗っているだけで、自然にポロッと抜けるような部品ではありません。

では、なぜカプラーが抜けたのか。

車内を見ると、いろいろな荷物が置かれていました。

運転席の下には、棒状のものが何本も入っていました。

断定はできませんが、シートを前後に動かしたときなどに、その棒状の荷物がカプラーや配線へ当たった可能性は考えられます。

シートの下は収納スペースのように見えますが、車種によってはエアバッグやシートベルト関係の配線があります。

物を入れた状態でシートを動かすと、荷物が配線を引っ張ったり、カプラーへ強く当たったりすることがあります。

ただし、実際に抜ける瞬間を見たわけではありません。

そのため「荷物が原因です」と決めつけることはできません。

確認できた事実は、運転席下のサイドエアバッグ用カプラーが抜けており、それによってエアバッグコンピューターが断線を検知していたということです。

カプラーを正しく接続し、ロックされていることを確認しました。

その後、診断機を使って記録されていた故障コードを消去します。

エンジンスイッチを入れ直し、エアバッグ警告灯が正常に消灯することを確認しました。

さらにシートを前後に動かすなどして、警告灯が再点灯しないかを点検しましたが、異常は再発しませんでした。

今回のエアバッグ警告灯は、カプラー抜けが原因だったのです。

車検の直後に壊れたら、車検ミスなのか?

車検を受けてから1か月後に警告灯が点けば、車検整備を疑いたくなる気持ちは分かります。

特に車検代が13万円を超えた直後なら、

「これだけお金を払ったのに、もう故障したのか」

と思うでしょう。

しかし、車検は、その後2年間に故障しないことを保証するものではありません。

車検は、検査を受けた時点で、車が定められた基準に適合しているかを確認する制度です。

車検時に正常だったセンサーや配線が、1週間後や1か月後に故障することもあります。

今回のように、車検整備とは直接関係のない場所でカプラーが抜け、後から警告灯が点くこともあります。

補機駆動ベルト、ブレーキパッド、ブレーキローター、ワイパーゴム、エアコンフィルター、エアクリーナーを交換した作業と、運転席下にあるサイドエアバッグのカプラーは、通常は別の作業範囲です。

だからといって、整備工場が確認もせず、

「車検とは関係ありません」

と言い切るのもよくありません。

作業後の不具合である以上、まず車両を確認し、整備中に触れた場所との関係がないかを調べるべきです。

整備ミスが絶対に起きないとはいえません。

カプラーの接続忘れ、ボルトの締め忘れ、配線のかみ込みなど、作業内容と不具合箇所に関係があれば、整備工場側のミスである可能性もあります。

大切なのは、車検の直後だから整備工場が壊したと決めつけることでも、整備工場が車検とは無関係だと決めつけることでもありません。

実際の車を確認し、故障コードを読み、どこに原因があるのかを順番に調べることです。

警告灯が点いたら、放置せず点検を

エアバッグ警告灯が点灯している場合、事故の際にエアバッグやシートベルトプリテンショナーが正常に作動しない可能性があります。

車が普通に走れるからといって、そのまま放置するのはおすすめできません。

今回のタントは、カプラーを接続し直して故障コードを消去したことで正常に戻りました。

しかし、同じ警告灯でも、センサー、配線、スパイラルケーブル、エアバッグ本体、コンピューターなどが原因になる場合があります。

警告灯だけを消して終わりではなく、なぜ点灯したのかを確認する必要があります。

車検を受けた直後に警告灯が点灯したら、まず車検を依頼した整備工場へ連絡してください。

いつから点灯したのか、常時点灯なのか、シートを動かした後なのか、車内の荷物を移動した後なのかなどを伝えると、診断の手掛かりになります。

そして、運転席や助手席の下へ荷物を入れている人は、一度確認してみてください。

今の車は、シートの下にも重要な配線やカプラーが通っています。

便利な空間に見えても、何でも押し込んでよい収納場所とは限りません。

今回の事例では、車検から約1か月後という偶然のタイミングで、エアバッグ警告灯が点灯しました。

原因は、車検で交換したベルトやブレーキではなく、運転席シート下のサイドエアバッグ用カプラー抜けでした。

「車検をした直後だから、車検作業が原因だ」

そう感じるのは自然です。

しかし、発生した時期と故障原因が、必ずしも同じとは限りません。

だからこそ感情だけで判断せず、まず実車を診断することが大切なのです。

noteと週刊MHO通信を始めました

整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。

普段の自動車記事では書ききれない、修理現場での経験、仕事への考え方、独立するまでの道のりなども残していく予定です。

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