車が冠水して動かない!車内に閉じ込められる前に知っておきたい「水没車からの脱出方法」

「道路が冠水しているけど、このくらいなら通れるだろう」

大雨のとき、そう考えてしまう人は少なくありません。

しかし、車というのは水に対して決して万能な乗り物ではありません。

一度、車内にまで水が入り始めると、状況は一気に変わります。

今回、千葉県を襲った記録的な大雨では、道路の冠水によって車両の立ち往生が相次ぎ、JAF千葉支部では8月13日に2174件のロードサービス要請があったとされています。さらに報道では、今回の大雨によって水没した車内に閉じ込められ、亡くなった方も確認されています。

これは単なる「車の故障」の話ではありません。

命に関わる問題です。

そして自動車整備士として、今回どうしても知っておいてほしいことがあります。

車が水に浸かり始めたとき、

「エンジンが止まるまで車の中で待つ」

という考え方は非常に危険です。

大切なのは、車が完全に水没してしまう前に脱出することです。

車が水に浸かっても、すぐに電気が全部消えるとは限らない

まず知っておいてほしいのが、パワーウインドウです。

最近の車は電装品がたくさん付いているので、

「水が入ってきたら電気系統が全部死んで、窓も開かなくなるんじゃないの?」

と思う人もいるでしょう。

しかし、車が冠水し始めたからといって、瞬間的にすべての電源が失われるわけではありません。

そのため、パワーウインドウが動く状態なら、窓を開けて脱出できる可能性があります。

ここが非常に重要です。

車内に水が入り始めた。

道路の水位が上がってきた。

車が動かない。

そんな状況になったら、

「もう少し待ってみよう」

ではありません。

窓が開くうちに脱出することを考えてください。

国土交通省も、水没した車両からは速やかに脱出するよう注意喚起しています。水圧などによってドアや窓からの脱出が困難になる可能性があるためです。

ただし、車種や浸水状況によって電装品が動作しなくなるタイミングは異なります。

「パワーウインドウは必ず最後まで動く」

という意味ではありません。

だからこそ、動くうちに使うことが重要なのです。

ドアが開かないからといって、すぐにパニックにならない

もう一つ知っておいてほしいのが、車のドアです。

車が水没し始めると、

「ドアを開ければいいじゃないか」

と思うかもしれません。

ところが、車外の水圧が大きくなると、ドアを内側から開けることが非常に難しくなります。

国土交通省も、水深がドアの下端にかかると車外の水圧によってドアを内側から開けにくくなり、水深がドアの高さの半分を超えると、内側からほぼ開けられなくなるとしています。

つまり、

「ドアが開かない!」

となってから脱出しようとするのでは遅い可能性があります。

だからこそ、最初の選択肢として考えたいのがパワーウインドウからの脱出です。

もし窓が開かなくなったら?

ここで役に立つのが、脱出用ハンマーです。

国土交通省も、水没車両からドアや窓を開けられなくなった場合に備えて、脱出用ハンマーを「命綱」として備えるよう呼びかけています。

ただし、ここにも注意点があります。

車のガラスなら何でも割れるわけではありません。

一般的なフロントガラスは合わせガラスのため、脱出用ハンマーでは割れにくいものがあります。

そのため、事前に

「自分の車では、どの窓を割って脱出するのか」

を確認しておくことが重要です。

ハンマーを買って車に積んでいるだけではなく、実際にどこに置いてあるのか、緊急時に手が届くのかまで確認しておきましょう。

「ドアが開かない=もう終わり」ではない

そして、もう一つ覚えておいてほしいことがあります。

車内への浸水が進むと、車内と車外の水圧差が小さくなり、ドアが開けられるようになる場合があります。

ただし、これは「必ず開く」という意味ではありません。

水流、車両の姿勢、周囲の障害物、水圧などによって状況は変わります。

ですから、

「水が車内いっぱいになるまで待てばドアが開く」

と覚えるのは危険です。

あくまで、

「早期に窓から脱出できなかった場合、浸水によってドアが開けられるようになる可能性もある」

という知識として持っておいてください。

そして、もしドアが開けられる状態になったなら、ためらわず脱出します。

アンダーパスで冠水したら「脱出した後」まで考える

特に怖いのがアンダーパスです。

周囲より低い場所なので、短時間の大雨でも一気に水が集まる可能性があります。

車が水に浸かって動かなくなったとき、

「とりあえず車から出ればいい」

だけではありません。

その後、どこへ逃げるのかを考える必要があります。

例えば、アンダーパスの中で車が止まってしまった場合、脱出した後に水の流れに逆らって無理に移動しようとすれば危険です。

車から出る前に、周囲を見て、

「どちらが高い場所なのか」

「どこに道路の外へ出られる場所があるのか」

「水がどちらへ流れているのか」

を可能な範囲で確認してください。

もちろん、濁流の中を泳ぐこと自体が非常に危険です。

流れが強い場合や、水深が分からない場合には無理に進まず、安全な方向への避難を最優先にします。

整備士なら知っている「車は途中から急激に状況が悪くなる」

整備士として車を見ていると、水に浸かった車がどうなっていくのかを知っています。

水が床面を超えてくると、電気装置などに不具合が発生する可能性があります。

さらに浸水が進めば、エンジンやモーターが停止して車そのものが動けなくなることがあります。

国土交通省も、水深が床面を超えるとエンジンや電気装置などに不具合が発生するおそれがあり、最悪の場合はエンジンやモーターが停止して移動できなくなるとしています。

だから、

「まだ車は動くから大丈夫」

ではないんです。

動けるうちに逃げる。

これが重要です。

「車を守る」より「自分の命を守る」

車を大切にしている人ほど、

「この車を水没させたくない」

「もう少し移動できないかな」

「レッカーを呼ばないと」

と考えてしまうかもしれません。

でも、冠水時に最優先すべきなのは車ではありません。

自分の命です。

車は修理できます。

廃車になってしまっても、保険で対応できる可能性があります。

しかし、命は元に戻せません。

「このくらいなら行けるだろう」

という判断が、取り返しのつかない結果につながることがあります。

そもそも冠水している道路には入らない。

これが一番です。

そして、もし予想外に浸水してしまったら、車を動かすことだけに固執せず、できるだけ早く脱出する判断をしてください。

いざというときのために、今日確認してほしいこと

最後に、この記事を読んだ方に一度だけ確認してほしいことがあります。

自分の車に乗り込んで、

「パワーウインドウのスイッチはどこにある?」

「脱出用ハンマーはどこに置いてある?」

「後席の窓はどうやって開く?」

「この車の窓ガラスはどこが破砕可能なのか?」

「車が水没したら、どちらへ逃げる?」

これを一度考えてみてください。

大雨は、必ずしも昼間に降るとは限りません。

夜間、視界の悪い状態で突然道路が冠水することもあります。

そんなときに、

「そういえば、車が水没したらどうすればいいんだっけ?」

と考えている時間はありません。

知識があるだけで、助かる可能性は変わります。

車の整備をしている僕からすると、これは特別な整備士の知識ではありません。

車に乗る人なら、誰もが知っておいてほしい知識です。

車が水に浸かってしまったときに大切なのは、

「車をどうやって動かすか」

ではなく、

「どうやって自分の命を守るか」

です。

今回の千葉県の大雨をきっかけに、ぜひ一度、自分の車からの脱出方法を確認してみてください。

そして、冠水した道路には「行けるかもしれない」では入らない。

これも、どうか覚えておいてください。

一度浸水した車は、走行できるように見えても電気装置などが損傷している可能性があります。国土交通省も、浸水車両については自動車整備工場などで点検整備を受けるよう案内しています。

今回の大雨で起きたことを、単なるニュースで終わらせない。

次に同じ状況に遭遇した誰かの命を救うために、この記事が少しでも役に立てばと思います。

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