軽トラックのタイヤ交換で、意外と難しいのがタイヤの負荷能力の判断です。
昔から軽トラックには「145R12 6PR LT」といったタイヤが使われてきました。
しかし最近では「145/80R12 80/78N LT」という表示が一般的になっています。
さらに、同じ145/80R12というサイズでも、乗用車用タイヤが販売されています。
では、軽トラックに乗用車用タイヤを取り付けると車検に通らないのでしょうか?
結論からいうと、乗用車用という理由だけで一律に不適合になるわけではありません。重要なのは、車両に必要な負荷能力をタイヤが確保できるかどうかです。
僕は整備士、自動車検査員、サービスフロントとして長年仕事をしてきましたが、タイヤのサイズだけで適合を判断するのは危険だと考えています。
今回は6PR・8PR・ロードインデックスの違いから、車検で確認するタイヤの負荷能力の計算方法まで解説します。
目次
軽トラックや軽バンのタイヤでは、以前から次のような表示が使われています。
PRとは「Ply Rating(プライレーティング)」の略で、タイヤの強度を表す等級です。
6PRは6プライ相当、8PRは8プライ相当の強度区分を意味します。
ただし、実際に内部へ6枚、8枚の繊維が入っているという意味ではありません。
一般的に同じタイヤサイズなら、8PR相当の方が高い負荷能力を持つ仕様になります。
しかし、6PRと8PRでは適正空気圧も異なる場合があります。
単に8PRを選べばよいわけではなく、車両とタイヤの指定条件を確認する必要があります。
現在は国際標準化に伴い、従来の82シリーズから80シリーズへの表示変更が進んでいます。
JATMA(日本自動車タイヤ協会)の公式互換表では、以下の組み合わせが示されています。
| 従来の表示 | 新しい表示 |
|---|---|
| 145R12 6PR LT | 145/80R12 80/78N LT |
| 145R12 8PR LT | 145/80R12 86/84N LT |
| 155R12 6PR LT | 155/80R12 83/81N LT |
| 155R12 8PR LT | 155/80R12 88/87N LT |
これはJATMAが公表している互換関係です。
ただし、すべての80シリーズと従来サイズが無条件に相互交換できるわけではありません。方向によって単輪・複輪や車種別の条件が設定されている組み合わせもあります。
参考:日本自動車タイヤ協会「整備関連情報」
https://www.jatma.or.jp/safety_technology/maintenanceinfo.html
ロードインデックス(LI)は、タイヤが規定条件で支えられる最大負荷能力を表す指数です。
例えば「145/80R12 80/78N LT」の場合、
145:タイヤの断面幅(mm)
80:偏平率(%)
R:ラジアル構造
12:リム径(インチ)
80/78:ロードインデックス
N:速度記号
LT:ライトトラック用
という意味になります。
80/78という2つの数字は、前が単輪使用時、後ろが複輪使用時のロードインデックスです。
軽トラックの一般的な前後4輪・単輪装着では、原則として前側の数値を使用します。
代表的なロードインデックスと最大負荷能力の関係は次のとおりです。
| LI | 最大負荷能力 |
|---|---|
| 75 | 387kg |
| 76 | 400kg |
| 77 | 412kg |
| 78 | 425kg |
| 79 | 437kg |
| 80 | 450kg |
| 81 | 462kg |
| 82 | 475kg |
| 83 | 487kg |
| 84 | 500kg |
| 85 | 515kg |
| 86 | 530kg |
| 87 | 545kg |
| 88 | 560kg |
したがって、145/80R12 80/78N LTは、単輪使用時のロードインデックス80に対応する最大負荷能力が450kgです。
ただし、これは規定の条件における能力です。
空気圧をどこまで下げても450kgを支えられる、という意味ではありません。
タイヤの負荷能力は、使用する空気圧やタイヤの規格にも左右されます。
NALTEC(自動車技術総合機構)の審査事務規程には、タイヤに加わる荷重が、そのタイヤの負荷能力以下であることを確認する規定があります。
参照:審査事務規程「7-11、8-11 走行装置」
検討するのは大きく分けて2つの荷重です。
① 積車状態における軸重
② 空車状態に乗車定員の人員が乗車した状態の軸重
それぞれについて、当該車軸に取り付けられたタイヤが必要な負荷能力を満たしているか確認します。
同一車軸の左右にタイヤが1本ずつ装着されている車両では、
タイヤ1本あたりの必要負荷能力(kg)=対象となる軸重(kg)÷2
となります。
例えば前軸に800kgの荷重がかかる場合、
800kg ÷ 2本 = 400kg
です。
したがって、その条件では1本あたり400kg以上の負荷能力が必要となります。
同じように後軸の荷重が900kgなら、
900kg ÷ 2本 = 450kg
となります。
この場合、後輪には1本あたり450kg以上の負荷能力が求められます。
ただし、実際の審査では該当車両に適用される規定、空気圧、タイヤ規格、速度条件なども確認します。
ここからは計算例です。
※以下の重量数値は説明用の仮定であり、特定の車種のメーカー公表値ではありません。
仮に、最大積載状態の軸重が次の軽トラックを考えます。
前軸重:620kg
後軸重:900kg
前後とも左右1本ずつタイヤを装着しているとします。
620kg ÷ 2本 = 310kg
前輪は1本あたり310kgの負荷能力が必要です。
900kg ÷ 2本 = 450kg
後輪は1本あたり450kgの負荷能力が必要です。
ここで145/80R12 80/78N LTを装着するとします。
LI80は単輪使用時、規定条件で最大450kgの負荷能力があります。
最大負荷能力との数値比較だけなら、
前輪:310kg < 450kg
後輪:450kg = 450kg
です。
しかし、これだけで車検適合を確定することはできません。
実際に使用する空気圧で450kgの負荷能力を確保できるか、タイヤメーカーの空気圧・負荷能力対応表で確認する必要があるからです。
また、空車状態で乗車定員の人員が乗車した場合の軸重も別に確認します。
このように、ロードインデックスの最大値と軸重を単純に比較するのは最初の段階にすぎません。
ここが今回の記事で一番伝えたい部分です。
例えば、145/80R12というサイズの乗用車用タイヤでも、ライトトラック用と同じ負荷能力を持つとは限りません。
タイヤの負荷能力が十分なら、乗用車用タイヤという区分だけで直ちに不適合とはなりません。
しかし、車両に必要な負荷能力を確保できなければ不適合です。
さらに、乗用車用タイヤを貨物自動車へ装着する場合には、該当するタイヤ規格や速度条件なども踏まえて審査する必要があります。
軽トラックは空車状態では軽快に走れる車ですが、荷台へ最大積載量まで積み込んだ場合、特に後輪への負担が大きくなることがあります。
空車で問題なく走れるからといって、最大積載時にも問題ないとは限りません。
僕なら、お客さんから乗用車用タイヤへの変更を相談された場合、まず車両の必要負荷能力を確認します。
そのうえで、変更予定タイヤの規格、ロードインデックス、空気圧と負荷能力表を照合します。
根拠が確認できない状態で、車検に通ると断言することはしません。
整備士や検査員が確認するなら、次の順番が確実です。
1.車検証やメーカー資料から車両型式・仕様を確認する。
2.積車状態と定員乗車状態で必要になる前後軸重を確認する。
3.各車軸のタイヤ本数を確認し、1本あたりに必要な負荷能力を求める。
4.装着予定タイヤのサイズ・規格・LI・速度記号を確認する。
5.JATMA YEAR BOOKまたはタイヤメーカーの該当する空気圧・負荷能力表を確認する。
6.実際の指定空気圧や使用条件で必要な負荷能力を満たすことを確認する。
7.最後に車体との干渉、はみ出し、速度計への影響など、負荷能力以外の条件も確認する。
特に重要なのが5番です。
ロードインデックスが同じでも、規格や空気圧の条件を取り違えると正しい判断ができません。
同じ145R12であっても、6PRと8PRでは負荷能力や要求される空気圧が異なります。
また、JATMAの互換表では、
145R12 6PR LTは145/80R12 80/78N LT、
145R12 8PR LTは145/80R12 86/84N LT
に対応します。
つまり8PR相当の方が、より高い負荷能力を持つタイヤです。
ただし、8PRへ変更したからといって、車両の最大積載量が増えるわけではありません。
タイヤの能力が高くなっても、車両に認められた最大積載量はそのままです。
加えて、車両の推奨空気圧を無視して高い空気圧を入れるのも適切ではありません。
装着するタイヤのメーカー資料、ホイールの仕様、車両の条件を合わせて判断しましょう。
軽トラックのタイヤ交換では、次の3つを覚えておいてください。
1.6PRと8PRはタイヤの強度区分を表す。
2.ロードインデックスは規定条件におけるタイヤの負荷能力を表す。
3.車検で重要なのは、車両に必要な荷重をタイヤが支えられるかということ。
特に軽トラックや軽バンでは、荷物を積んだときの後軸重が重要になります。
軽トラックに乗用車用タイヤを取り付けたいという場合も、感覚で判断せず、車両の軸重とタイヤの負荷能力表から確認する必要があります。
MHO ENGINEERINGでは、こうした現場での計算を簡単に行える「商用車タイヤ負荷能力チェッカー」の公開を目指しています。
車名や型式、タイヤサイズ、ロードインデックスなどから、必要な負荷能力を確認できる実用ツールにする予定です。
整備士や自動車検査員はもちろん、軽トラックのタイヤ交換を考えている一般ユーザーにも利用してもらえるものにしていきたいと考えています。
おう!このタイヤで車検通してくれよな!は通用しないっていうことなんです。わかってください
日本自動車タイヤ協会(JATMA)整備関連情報
https://www.jatma.or.jp/safety_technology/maintenanceinfo.html
自動車技術総合機構(NALTEC)審査事務規程
https://www.naltec.go.jp/publication/regulation/shinsajimukitei.html
ブリヂストン V600・商用車用タイヤ互換情報
https://tire.bridgestone.co.jp/tb/van_lighttruck/v600/
※法令・審査規程・メーカー資料は改訂されることがあります。実際の車検判断やタイヤ交換時には、その車両に適用される最新の規定とメーカー指定条件を確認してください。
【重要】タイヤ負荷能力の計算に使用する軸重について
車検におけるタイヤの負荷能力判定では、単純に車両重量や車両総重量をタイヤ4本で割るわけではありません。
NALTECの審査事務規程では、「積車状態」と「空車状態に乗車定員の人員が乗車した状態」の両方について、車軸ごとの荷重を確認する規定があります。
積車状態には、最大積載量を積載した状態が含まれます。
また、車検証に記載されている前軸重・後軸重は、原則として空車時の数値です。そのまま積車状態の軸重として使うことはできません。
実際の適合判断では、メーカーの積車時軸重などの資料と、タイヤの空気圧別負荷能力表を照合する必要があります。
※本文中の軸重は計算方法を説明するための仮定値です。特定車種の実測値やメーカー公表値ではありません。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。