目指せ自動車整備士 第6話「自動車検査員」

MHO「A君、どう?洗車待ちの車は全て洗い終わった?」

A君「はい!あとは整備完了待ちの車が2台あるので、その車待ちです。」

MHO「じゃあその2台をこれから検査するから手伝ってもらおう!」

A君「え!?検査の手伝いですか?」

MHO「そう!とりあえず2台は車検だから、これから俺完成検査するから順番に乗って!指示をだすから」

A君「は、はい。」

MHO「それじゃA君、エンジンをかけてハンドルを左右いっぱいいっぱいに据え切りしたり戻したりして!」

A君「はい!」

MHO「はい!次にライト廻りの点検する。スモール点けて、ライト、ライト上向き、フラッシャー右、フラッシャー左、フォグランプ、ワイパー・ウォッシャー、ホーン鳴らして!」

A君「(ひえええ、スイッチがどれがどれだかよくわからない・・)」

MHO「OK。ブレーキ踏んで!離して」

A君「はい。」

MHO「ブレーキ踏んで、離して、サイドブレーキ引いて、離して」

A君「は、はい。」

MHO「リヤのライト廻りいくぞー。スモール、ブレーキ、フラッシャー右、左、バックに入れて、ハザード!Rrウォッシャー・ワイパー!OKオーライ。それじゃリフト降ろすぞ」

A君「ドキドキしました・・。」

MHO「もう一台も同じようにやるぞ」

A君「は、はい」

MHO「それじゃ2台を検査場へ運んでくれ!次に検査ラインで測定するから」

A君「わかりました。」

MHO「ラインを通し終わったら、2台とも洗車して。終わったら納車待ちの札を下げといて。」

A君「はい。」

無事に完成検査を終えた2台に作業完了の札がかけられ、洗車をするA君のところへMHOが保安基準適合標章を貼りにきた。

MHO「これが保安基準適合標章ってやつね。車検ステッカーの代わりみたいなものかな。車検の検査が終わって自動車検査員が証明したものだ。これをフロントガラスのルームミラーの裏側あたりに貼り付ければ新しい車検証がなくても乗り出すことができるんだ。」

A君「これが標章ですか・・。そういえば自動車検査員ってどういう人のこと言うんですか?」

MHO「自動車検査員っていうのは、2級整備士を取得して1年間整備主任を経験したら受験資格をもらえる。そこで試験に合格したら取得できる資格だよ。ただ整備士の資格よりも責任は重大なんだ。」

A君「どうしてですか?」

MHO「やろうと思えばいろんな不正ができてしまう。例えば車検をやったことにして、適合標章を切るなんてことも可能だろ?いわゆるペーパー車検ってやつ。」

A君「やったことにしてお客さんにお金を請求しちゃうってことですか?」

MHO「そう。それは絶対にやってはいけないことで、指定工場には陸運事務所の専門官が年に1回程度監査に来るようになっている。そこで不正が見つかったら悪質な場合すぐに指定工場の看板を剥奪されちゃうからさ。」

A君「厳しいですね。」

MHO「車は人命を乗せるものだからね。そういったことは絶対にあってはいけないことだ。だから完成検査も2人の目で基本的には見るんだ。今回俺が完成検査をやったけれど、保安基準適合証に証明のサインと捺印をした。それを工場長が最終チェックをして事業場のハンコを押す。事業場管理責任者っていう検査を最終確認する役割をしてるんだ。」

A君「MHOさんは検査員の資格持ってるんですね。」

MHO「何度も落ちたけどね(笑)長野県だと自動車検査員になるために3回試験を受けないといけない。受験資格ができたら最初に選考試験というものを受ける必要があるんだ。これは整備振興会で行っている選抜試験ね。ここで上位100位くらいの成績をとらないと次の試験を受けさせてもらえないんだ。他の県だと一気に本試験まで受けさせてくれるところがあるみたいだけどね。」

A君「厳しいんですね」

MHO「俺はその選考試験に3回も落ちた男です(笑)」

A君「・・・・・・」

MHO「ま、勉強は不得意だから・・(笑)選考試験に通ったら今度は予備講習を受ける。ここでまた試験があって、それに合格できたらようやく自動車検査員の教習を受講できるんだ。教習が終わったら最後に本試験がある。長野県って車がないと本当に不便なところだから他の県より保有台数も多いしね。厳しくならざるを得ないのはしょうがないね。」

A君「僕にも検査員になれる日が来るんでしょうか?」

MHO「そりゃくるさ!来てもらわないと俺たち困っちゃうから。まずは1年頑張って来年3級整備士からだ!俺も通ってきた道のりで結構長いけどね。試験に落ちるところまでは真似すんなよ」

A君「ぷっ」

MHO「さあ、5時になった!試用期間のA君は基本的に残業はしちゃダメだからみんなに挨拶して帰っていいぞ。」

A君「あ、はい!ありがとうございます。お先に失礼します!」

MHO「おう!おーいD、納車行くぞ。Eさんにも声かけてきてくれ!」

D「うーっす!」

自動車検査員は「みなし公務員」と呼ばれています。整備工場に勤めているサラリーマンの整備士ですが、自動車の完成検査における責任は公務員と同等とみなされています。自動車検査員の完成検査業務は公務に従事する責任そのものなのです。

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