真夏の渋滞は車にとって過酷。夏にエンジンをいたわるために知っておきたいこと

夏になると「暑いから人間がつらい」という話ばかりになりますが、実は車にとっても夏はかなり過酷な季節です。

特に注意したいのが、真夏の渋滞。

外気温が高い状態で、エアコンをガンガン使いながら、低速でノロノロ走る。

これ、車にとってはかなり厳しい条件が重なっています。

今回は、なぜ夏の車は過酷な環境に置かれるのか、そして真夏の長距離ドライブや帰省前に何を気をつければいいのかを、整備士目線で少し掘り下げてみたいと思います。

夏より冬のほうがエンジンには有利?

意外に思われるかもしれませんが、エンジンにとっては冬のほうが条件が良い場面があります。

自動車レースでも、気温が低いほうがエンジンにとって有利になることがあります。

理由のひとつが「空気」です。

エンジンは、燃料だけを燃やしているわけではありません。

空気と燃料を適切な割合で取り込み、その混合気を燃焼させています。

そして空気には「温度が低いほど密度が高くなる」という性質があります。

簡単に言えば、同じ体積の中により多くの空気が存在できるわけです。

逆に真夏のように気温が高くなると、空気は膨張して密度が低くなります。

そのため、エンジンにとっては冬の冷たい空気のほうが、吸気条件としては有利になります。

ターボ車にインタークーラーが付いている理由

ターボ車を見れば、この「空気の温度」が重要だということが分かりやすいと思います。

ターボチャージャーは空気を圧縮してエンジンに送り込みます。

空気を圧縮すると温度が上がるため、そのままエンジンに入れるのではなく、インタークーラーを使って吸気温度を下げます。

なぜわざわざ冷やすのか。

空気を冷やすことで密度を高め、より多くの空気をエンジンに送り込めるからです。

つまり、

「冷たい空気=密度が高い」

「温かい空気=密度が低い」

ということ。

これは自然吸気エンジンでも基本的な考え方は同じです。

現代の車は吸気温度をきちんと監視している

もちろん、現在の車は昔の車と違います。

エンジンにはさまざまなセンサーが取り付けられており、吸気温度や冷却水温、吸入空気量、エンジン負荷などをECUが監視しています。

その情報をもとに燃料噴射量や点火時期などを細かく制御しています。

つまり、夏になったからといって、単純に燃料と空気のバランスが崩れてエンジンがすぐ壊れる、という話ではありません。

むしろ現代の車は、暑ければ暑いなりにECUが制御を変更して、エンジンを守るようにできています。

しかし、それでも限界はあります。

真夏の渋滞はエンジンにとってかなり厳しい

特に厳しいのが、

「真夏」

「渋滞」

「エアコン使用」

この3つが重なった状態です。

高速道路を普通に走っているときなら、ラジエーターやエアコンのコンデンサーには大量の走行風が当たります。

ところが渋滞になると、車速がほとんどありません。

そうなると電動ファンが回って、ラジエーターやコンデンサーに風を送ります。

エアコンを使用すれば、エアコンのコンプレッサーも作動します。

さらにエンジンルームの中には、エンジンや排気系、ターボなどから発生した大量の熱があります。

つまり真夏の渋滞では、

「外も暑い」

「車も暑い」

「エンジンも熱い」

「エアコンも使っている」

「走行風が少ない」

という、車にとってはなかなか過酷な条件が揃います。

吸気温度が上がると何が起こるのか

吸気温度が上昇すると、エンジンはそれに応じて制御を変更します。

特に高負荷時には、異常燃焼、いわゆるノッキングを防ぐために点火時期を遅らせるなどの制御が入ることがあります。

ノックセンサーが付いている車なら、ノッキングを検知してECUが対応します。

ただし、これは「暑くても何も問題がない」という意味ではありません。

エンジンは熱による影響を受けますし、冷却系や点火系、燃料系などに問題があれば、暑い環境で症状が表面化することもあります。

特に古い車や走行距離の伸びた車は注意が必要です。

昔の車では夏の峠道は本当に怖かった

僕自身、以前いろは坂で大渋滞にはまったことがあります。

真夏の山道。

車がびっしり並んでいて、ほとんど動かない。

エアコンを使いながら、エンジンはずっとアイドリングに近い状態。

そんな状況で、実際にオーバーヒートしてボンネットを開けている車を見かけたことがあります。

「今どきの車ならオーバーヒートなんてしないだろう」

と思う人もいるかもしれません。

確かに冷却性能や制御技術は昔とは比較にならないほど進化しています。

しかし、冷却水不足、ラジエーターの詰まり、電動ファンの不具合、サーモスタットの不良、ウォーターポンプの問題など、冷却系に何らかの問題を抱えていれば話は別です。

普段は問題なく走れていても、

「真夏の渋滞」

という極端な環境に入った途端、隠れていた不具合が一気に表面化することがあります。

では、夏はハイオクを入れたほうがいいのか?

ここからは少し意見が分かれるところです。

昔から、

「夏場はハイオクを入れたほうがエンジンにいい」

という話があります。

確かにハイオクガソリンは、レギュラーガソリンよりオクタン価が高く、ノッキングに対して強い燃料です。

そのため、非常に高温になった状態や高負荷状態でノッキングが問題になるような状況では、燃料のオクタン価が高いことに意味があります。

ただし、ここで重要なのは、

「レギュラー仕様の車にハイオクを入れればパワーアップする」

という話ではないことです。

現代のレギュラー仕様車は、レギュラーガソリンを前提としてECUが制御しています。

ハイオクを入れたからといって、必ずしも明確なパワーアップや燃費向上が得られるわけではありません。

また、ハイオクだからエンジン内部のカーボンがどんどん取れる、という単純な話でもありません。

それでも夏場にハイオクを入れる意味はあるのか

個人的には、

「真夏の長距離走行で、古い車や走行距離の多い車を少しでもいたわりたい」

という目的なら、ハイオクを選択肢のひとつとして考えるのはアリだと思います。

特に高負荷が続くような状況では、ノッキングに対する余裕を持たせるという意味があります。

ただし、車種によって考え方は違います。

メーカーがレギュラー指定している車なら、基本的にはレギュラーガソリンを使用すれば問題ありません。

わざわざ毎回ハイオク満タンにする必要がある、という話ではありません。

燃料添加剤という選択肢もある

「ハイオクを入れるほどではないけど、夏前に何かしておきたい」

という人なら、燃料添加剤を使う方法もあります。

例えば、ワコーズのCORE601のような高性能な燃料添加剤があります。

燃料系統や燃焼室の状態を考えて使用するもので、製品の特性として清浄作用なども期待できます。

ただし、燃料添加剤も万能ではありません。

入れればエンジンの不具合が直る、オーバーヒートしなくなる、ノッキングが絶対に起こらなくなる、といったものではありません。

あくまでもメンテナンスの補助として考えるのがいいでしょう。

それよりも重要なのは冷却系のチェック

そして、真夏のドライブ前に私がもっと重要だと思うのが、冷却系の点検です。

ハイオクを入れる前に、

・冷却水が減っていないか

・ラジエーター周辺から漏れていないか

・電動ファンが正常に作動するか

・エンジンオイルが極端に減っていないか

・エンジンルームから異臭がしないか

・水温計や警告灯に異常がないか

こういった部分を確認しておくほうが、はるかに重要です。

特に年式が古い車、走行距離が多い車、最近メンテナンスしていない車は、一度整備工場で点検してもらうことをおすすめします。

お盆の渋滞は車にとっても過酷

お盆の帰省シーズンになると、高速道路や観光地周辺では大渋滞が発生します。

しかも真夏。

外気温35℃。

エアコン全開。

渋滞でほとんど動かない。

これだけ条件が揃えば、車にとってはかなり厳しい環境です。

現代の車は非常に優秀なので、普通に整備されている車なら、これくらいで簡単に壊れるものではありません。

しかし、

「今まで大丈夫だったから今年も大丈夫」

とも限りません。

特に古い車や走行距離が多い車は、夏の長距離ドライブをきっかけに不具合が発覚することがあります。

夏の車は「暑さ」より「暑さ+渋滞」に注意

夏だから車が壊れるわけではありません。

本当に注意したいのは、

「高温+高負荷+低速走行+エアコン」

という条件が重なることです。

だからこそ、夏に遠出する前には、タイヤやバッテリーだけでなく、冷却系やエンジンオイルなども一度確認しておきたいところです。

ハイオクを入れる、燃料添加剤を使うというのも選択肢のひとつ。

でも、それ以上に大切なのは、そもそも車が正常な状態にあること。

真夏の渋滞の中で、

「なんか水温おかしくない?」

「エアコン効かなくなってきた」

「警告灯ついた!」

となってからでは遅い場合があります。

せっかくのお盆休み。

家族を乗せて出かけるのであれば、出発前にちょっとだけ車をいたわってあげてください。

人間だって、炎天下で何時間も歩かされたら疲れます。

車だって同じです。

真夏の渋滞に突入する前に、

「今年の夏も頼むぞ」

くらいの気持ちで、愛車をチェックしてあげる。

それだけでも、トラブルを未然に防げる可能性は高くなります。

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