トヨタの取扱説明書を調べていたら、ちょっと興味深い車を見つけました。
e-Palette(イーパレット)です。
この車、一般の人がマイカーとして購入するような車ではありません。シャトルバスや移動販売、イベントスペースなど、さまざまな用途に利用できる次世代モビリティです。
そんな特殊な車にも、当然ながら取扱説明書が存在します。そしてトヨタの公式サイトから読むことができるようになっています。
こういう特殊な車の取扱説明書には、普段の乗用車とは違った発見があります。
今回はe-Paletteの取扱説明書を読んで、気になった部分を紹介します。
目次
e-Paletteは2025年9月に発売されたバッテリー式電気自動車です。
まず気になったのが車両の基本スペック。
| 項目 | 主要諸元 |
|---|---|
| 全長 | 4,950mm |
| 全幅 | 2,080mm |
| 全高 | 2,650mm |
| 車両重量 | 2,950kg |
| 乗車定員 | 17人(運転手を含む) |
| 最高速度 | 80km/h |
| 最小回転半径 | 6.5m |
| モーター最高出力 | 150kW |
| 最大トルク | 266N・m |
全長は約5mですが、全幅は2mを超えています。
しかも車高は2,650mm。かなり背の高い車です。
見た目からすると、もっとゆっくり走る車なのかと思いましたが、最高速度は80km/hとなっています。
もちろん、最高速度80km/hだからといって、どこでもその速度で走れるという意味ではありません。
用途や走行環境に応じた速度制限もあるでしょう。
それでも、イベント会場を低速で巡回するだけの車ではなく、一般道での移動も想定した性能を持っていることが分かります。
僕が一番興味を引かれたのがタイヤサイズです。
取扱説明書には、次のように記載されています。
| 項目 | 指定値 |
|---|---|
| タイヤサイズ | 235/60R17 117/115N LT |
| ホイールサイズ | 17×7J |
| 指定空気圧 | 前後525kPa |
| ホイールボルト締め付けトルク | 131N・m |
タイヤ幅は235mm。かなり太いですね。
しかも一般的な乗用車用タイヤではなく、LT、つまりライトトラック用の規格です。
車両重量が約3トンあり、最大17人が乗車することを考えれば、高い負荷能力が必要になるのも納得できます。
そして驚くのが指定空気圧525kPaという数字です。
乗用車のタイヤでは200〜300kPa程度を目にすることが多いですが、この車は525kPa。約5.25kgf/cm²という高圧になります。
見た目は丸っこくてかわいらしいe-Paletteですが、足元はなかなか本格的です。
こういう車が将来、一般の整備工場にも入庫するようになったら、タイヤ交換や空気圧管理にも注意が必要でしょう。
取扱説明書をさらに読み進めると、車両の型式も確認できます。
e-Paletteの型式はXECM10。
モーターの型式は1XMで、駆動方式はFFです。
あれだけ大きな車体を前輪駆動で動かすわけですね。
最高出力は150kW、最大トルクは266N・m。
EVなのでエンジンオイル交換はありませんが、駆動系の潤滑油は必要です。
取扱説明書にはフロントeAxleの指定油脂として「e-トランスアクスルフルード TE」、参考容量3.9Lと記載されています。
EVだから油脂類がすべて不要になるわけではありません。
こういう部分も整備士として気になります。
e-Paletteには、乗り降りをしやすくするための低床構造が採用されています。
通常のフロア高は370mmですが、車高調整機能を使用すると、さらに床面を低くできます。
取扱説明書にはAHC(アクティブハイトコントロール)に関する項目も用意されています。
加えて、電動スロープや車いす固定装置など、一般的な乗用車にはない装備が搭載されています。
当然ながら、それだけ点検項目や故障診断の対象も増えることになります。
今までのエンジン、ミッション、足回りといった整備に加えて、こうした電子制御装置や乗降支援設備の知識も必要になってくるでしょう。
もう一つ興味深いのが、ステアバイワイヤの採用です。
一般的な自動車では、ハンドルと操舵機構が機械的につながっています。
しかしステアバイワイヤでは、運転手の操作を電気信号で伝えて操舵します。
e-Paletteは、この技術を利用した先進的な運転席を備えています。
今後、自動運転技術が普及するにつれて、こうした機構を採用する車が増えてくる可能性があります。
整備の世界も、これまで以上に電子制御への対応が重要になっていくのでしょう。
e-Paletteは、普段の整備工場で頻繁に見かける車ではないと思います。
それでも取扱説明書を読んでみると、特殊な車両の仕組みが少しずつ分かってきます。
235幅のLTタイヤ、525kPaの指定空気圧、3トン近い車両重量、ステアバイワイヤ、電動スロープ、車高調整装置。
外観は未来的ですが、タイヤやブレーキ、冷却水、駆動系の潤滑油など、従来の整備で培ってきた知識が必要な部分も残っています。
一方で、高電圧システムや電子制御の知識は、ますます重要になります。
僕が整備士になった頃には、こういう車が市販される時代が来るとはなかなか想像できませんでした。
そして、こうした特殊な車の取扱説明書まで、誰でも読める時代になっています。
個人で所有する機会はまずないと思いますが、取扱説明書を読むだけでも面白い車です。
興味のある方は、ぜひ一度トヨタの公式資料を覗いてみてください。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。