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日記・戯言

なぜマニュアル車はここまで減ったのか?AT限定免許が増えたから?それともMT車がなくなったから?

かつて日本の道路には、マニュアルトランスミッションを搭載した車が当たり前のように走っていました。

軽自動車にも、普通のセダンにも、ファミリーカーにもマニュアル車が設定されていた時代です。

しかし今、新車でマニュアル車を購入しようと思うと、選択肢は非常に限られています。

スポーツカーや一部の商用車には残っているものの、一般的な乗用車ではATやCVTが当たり前になりました。

ここで一つ疑問があります。

マニュアル車が売れなくなったから、メーカーは設定を廃止したのか。それとも、メーカーがマニュアル車を作らなくなったから、AT限定免許を取得する人が増えたのか。

今回は、この疑問を数字と自動車の技術進化から考えてみます。

AT限定免許より先にAT車が普及していた

まず注目したいのが、日本の新車販売におけるMT車とAT車の比率です。

日本自動車販売協会連合会のデータによると、1985年の乗用車販売ではMT車の比率が51.2%、AT車は48.8%でした。

まだマニュアル車が多数派だったわけです。

ところが、その5年後の1990年にはAT車が72.5%、MT車は27.5%になっています。

さらに1995年にはMT車が19.2%まで減少しました。

日本で普通自動車のAT限定免許が導入されたのは1991年です。

つまり、AT限定免許が登場する前から、すでにAT車への移行は急速に進んでいたことになります。

この事実は非常に重要です。

少なくとも、マニュアル車減少の始まりをAT限定免許だけで説明することはできません。

なぜAT車が選ばれるようになったのか?

理由の一つは、単純に運転が楽だったからでしょう。

マニュアル車では発進時にクラッチ操作が必要で、速度に合わせてギアを選択しなければなりません。

渋滞では発進と停止を繰り返し、坂道発進にも慣れが必要です。

一方、AT車なら基本的にアクセルとブレーキの操作で運転できます。

日本は都市部の渋滞も多く、日常生活の移動手段として考えれば、AT車の利便性は大きな魅力だったはずです。

また、かつてのAT車には、燃費が悪い、加速が鈍い、変速に違和感があるといった弱点もありました。

しかし、トランスミッション技術が進化し、多段ATやロックアップ制御、CVTなどの普及によって、その差は縮まっていきました。

昔は燃費を重視してMT車を選ぶ理由がありましたが、今ではATやCVTの方が優れた燃費性能を持つ車種も珍しくありません。

操作が楽で、性能面でも大きな不満がない。それならATで十分だ。

そう考える人が増えたことは自然な流れだったと思います。

AT限定免許の登場が流れを加速させた

1991年にAT限定免許が導入されると、車の選び方はさらに変わっていきました。

すでに販売される車の大半がAT車だったため、日常生活でMT車を運転する必要性は薄れていました。

AT車しか運転しないのであれば、最初からAT限定免許を取得すればよい。

当然、そう考える人も増えていきます。

そしてAT限定免許を取得する人が増えると、自動車メーカーにも変化が起こります。

AT限定免許の人は、そもそもMT車を運転できません。

販売台数が少ないMT仕様をわざわざ用意するより、多くの人が運転できるAT仕様に開発や生産を集中させる方が合理的になります。

すると、さらにMT車の設定が減ります。

MT車の設定が減れば、これから免許を取得する人は、ますますMT免許を取る必要性を感じなくなります。

こうして需要と供給の両側から、マニュアル車が減っていく循環ができたのではないでしょうか。

メーカーがMT車を設定しにくくなった事情

ここにはメーカー側の事情もあります。

同じ車種にMTとATを設定すれば、トランスミッションだけでなく、関連部品や制御、認証、部品供給などにも対応しなければなりません。

少数しか売れない仕様を維持するには、相応のコストがかかります。

さらに現代の車には、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能、ハイブリッドシステムなどが搭載されています。

こうした技術とトランスミッションを組み合わせるうえでも、ATやCVT、電動駆動との相性がよい設計が増えています。

もちろん、MT車にも高度な運転支援装置を搭載することは可能です。

ただ、販売台数が非常に少ない仕様のために開発費用をかけるのは、メーカーにとって簡単な判断ではないでしょう。

結果として、メーカーは売れ筋のAT車を中心に開発し、MT車の設定は限られた車種へ集中するようになりました。

そして2025年、MT免許の教習方法まで変わった

時代の変化を象徴する出来事がありました。

2025年4月1日から、普通自動車のMT免許取得に関する技能試験・教習の方法が見直されました。

原則としてAT車で技能教習や試験を行い、クラッチ操作やギア操作に関する項目のみMT車で行う方式です。

これは、MT車が日常の運転で少数派になった現実を反映した制度変更とも考えられます。

かつてはMT車を運転することが普通だったのに、今ではMT免許を取得するための教習もAT車が中心となる時代になったのです。

整備士として感じるMT車の魅力

僕は長年、自動車整備の現場でさまざまな車に触れてきました。

MT車には、AT車にはない魅力があります。

クラッチをつなぎ、自分でギアを選んで走る感覚。エンジンの回転数に合わせてシフトチェンジする楽しさ。

車を操作している実感という意味では、MT車ならではの面白さがあると思います。

特に昔のスポーツカーには、エンジンの特性を自分の操作で引き出す楽しさがありました。

一方で、日常の移動手段として考えた場合、AT車の便利さもよく分かります。

渋滞の多い道路を走るとき、疲れて帰宅するとき、家族で出かけるとき。

誰もが毎日の運転に楽しさや刺激を求めているわけではありません。

だからこそ、AT車がここまで普及したこと自体は、決して不思議ではないのです。

結局、MT車が減ったのはどちらが先だったのか?

今回調べて分かったのは、AT限定免許が登場する前から、AT車の普及が始まっていたという事実です。

つまり、最初に動いたのは車を購入する人たちの需要だったと考えられます。

AT車の便利さが認められ、販売比率が逆転し、AT限定免許が登場した。

そしてAT限定免許の普及によって、MT車の需要がさらに減少した。

メーカーは販売台数の少ないMT仕様を減らし、結果としてMT免許を取得する必要性も一段と薄れていった。

最初は需要の変化。そして、その後は需要と供給の相互作用。

これがマニュアル車減少の大きな流れだったのではないでしょうか。

ただし、マニュアル車に魅力がなくなったわけではありません。

少数派になった今でも、MT車を積極的に選ぶ人はいます。

運転すること自体を楽しみたい。自分で車を操りたい。そう考える人にとって、MT車には今も価値があります。

便利さを追求する自動車の進化は歓迎したい。

その一方で、できればこれからも、マニュアル車を選べる自由だけは残してほしいと思います。

皆さんはどうでしょうか。

今から車の免許を取得するとしたら、MT免許とAT限定免許、どちらを選びますか?


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