2026年10月20日、国土交通省からスズキの新型EV「eビターラ」の自動車アセスメント評価結果が公表されました。

結果は以下のとおりです。
- 予防安全性能:Aランク
- 衝突安全性能:Bランク
- 事故自動緊急通報装置:先進型Ⅱ
- 総合評価:★★★★☆(4つ星)
5段階評価のうち、上から2番目の4つ星という結果になりました。
僕が今回の結果を見て、真っ先に思い出した車があります。
それがスズキのフロンクスです。
フロンクスも日本のJNCAPでは4つ星を獲得しています。しかし、オーストラリアのANCAPでは、まさかの1つ星という厳しい結果が出ました。
しかも、その衝突試験では後席のシートベルト機構に重大な不具合が確認されたのです。
では、今回のeビターラはどうなのか?
調べてみると、非常に興味深いことが分かりました。
eビターラは日本だけでなく、海外のANCAPでも4つ星を獲得していたのです。
今回はフロンクスの評価が大きく分かれた理由と、eビターラの安全性能を比較してみます。
日本で4つ星だったフロンクスが、海外では1つ星になった
まず、フロンクスの話から振り返ります。

2024年度のJNCAPにおけるフロンクスの成績は次のとおりでした。
| 評価項目 | 結果 |
|---|---|
| 総合評価 | 4つ星 |
| 総合得点 | 163.75/193.8点 |
| 予防安全性能 | Aランク・92% |
| 衝突安全性能 | Bランク・76% |
| 事故自動緊急通報装置 | 8/8点 |
予防安全性能については92%という高い得点でした。
衝突安全性能はBランクでしたが、総合的には4つ星という評価です。
ところが、2025年12月に発表されたオーストラリアのANCAPでは、全く違う結果が公表されました。

総合評価は、なんと1つ星。
成人乗員保護は48%、子ども乗員保護は40%。
特に乗員保護性能で厳しい評価を受けています。
同じフロンクスなのに、なぜここまで評価が違うのでしょうか?
フロンクスのANCAPで何が起きたのか?
ANCAPの公式発表を確認すると、単に日本と海外で評価基準が違うというだけの話ではありませんでした。
フロンクスはフルラップ前面衝突試験で、後席の乗員を模したダミーの胸部に大きな負荷が発生し、評価上限が制限されました。
さらに、6歳児と10歳児を想定したダミーについても、頭部加速度や頸部にかかる力が問題となり、一部の身体部位が0点評価になっています。
そして非常に深刻だったのが、後席シートベルトの不具合です。
衝突試験中に後席のシートベルトリトラクターが正常に機能しなくなり、ベルトが制御されずに繰り出される現象が発生しました。
その結果、後席ダミーが拘束を失い、前席の背もたれに衝突しています。
ただし、ここは正確に理解しておく必要があります。
ANCAPは、フロンクスの1つ星評価がシートベルトの故障だけによって生じたものではないと説明しています。
実際には、シートベルトの不具合が発生する前の時点で、後席ダミーの胸部負荷などによりフルラップ前面衝突試験が0点になっていました。
つまり、シートベルトという一つの部品だけでなく、乗員を守る構造や拘束装置の性能そのものにも課題があったということです。
ANCAPは当時、シートベルト不具合の原因が究明され、適切な対策が実施されるまで、後席に大人や子どもを乗せないよう注意を呼びかけました。
なお、ANCAPが評価したのはオーストラリア・ニュージーランド向けのフロンクスです。この結果をもって、日本仕様にも同一の不具合が存在すると断定することはできません。
試験条件や車両仕様の差も含めて考える必要があります。
参考:ANCAP公式発表(2025年12月22日)
https://www.ancap.com.au/media-and-gallery/media-releases/1739c4
eビターラも日本では4つ星。では海外は?
そして今回のeビターラです。

国土交通省が発表したJNCAPの総合評価は4つ星。
予防安全性能はAランク、衝突安全性能はBランクという、ランクの組み合わせもフロンクスと同じです。
ただし、評価年度が異なるため、これだけで両車の安全性能が同等だと判断することはできません。
2026年度のJNCAPでは、交差点での対二輪車などの事故を想定した衝突被害軽減ブレーキの新しい評価項目が導入されています。
そして僕が今回確認したかったのが、海外での評価です。
eビターラは2026年4月7日に発表されたANCAPでも4つ星を獲得しています。
この点は、フロンクスとは大きく異なります。
フロンクスは日本4つ星、オーストラリア1つ星。
対してeビターラは、日本4つ星、オーストラリア4つ星です。
日本だけでなく、海外の独立した評価制度でも一定の安全性能が確認されていることは、購入を検討する人にとって一つの安心材料になると思います。
eビターラのANCAP評価を詳しく見る
ANCAPが公表しているeビターラの評価は以下のとおりです。

| 評価項目 | 得点率 |
|---|---|
| 成人乗員保護 | 77% |
| 子ども乗員保護 | 87% |
| 歩行者・自転車などの保護 | 79% |
| 安全運転支援 | 71% |
| 総合評価 | 4つ星 |
特に注目したいのが、成人乗員保護77%、子ども乗員保護87%という結果です。
フロンクスのANCAP評価では、それぞれ48%、40%でした。
評価条件や年度などが異なるため、単純な性能差を示すものではありませんが、eビターラの乗員保護性能について、ANCAPが一定の評価を与えていることは確認できます。
では、なぜeビターラは5つ星ではなかったのでしょうか?
ANCAPは成人乗員保護の結果が、総合4つ星にとどまった主要な要因だったと説明しています。
前面衝突試験では、身体部位によって保護性能に差が見られました。
また、側面衝突時に運転席と助手席の乗員同士の接触による傷害を軽減するセンターエアバッグが装備されていない点も指摘されています。
つまり、全体として一定の安全性能を示したものの、5つ星を獲得するには改善の余地があるということです。
参考:ANCAP eビターラ評価
https://www.ancap.com.au/safety-ratings/suzuki/e-vitara/8a3def
日本のJNCAPではどこが良かったのか?
次に、2026年度のJNCAP評価を細かく見てみます。

予防安全性能では、歩行者に対する昼間・夜間の衝突被害軽減ブレーキ、自転車に対する衝突被害軽減ブレーキが、いずれも5段階中レベル5でした。
車線逸脱抑制、高機能前照灯、ペダル踏み間違い時加速抑制もレベル5です。
一方、交差点に関する項目では、少し違いが見られました。
| 予防安全評価項目 | レベル |
|---|---|
| 対歩行者・昼間 | 5/5 |
| 対歩行者・夜間 | 5/5 |
| 対自転車 | 5/5 |
| 交差点・対車両(右直) | 4/5 |
| 交差点・対歩行者(右左折) | 4/5 |
| 交差点・対二輪車(右直) | 3/5 |
| 交差点・対車両(出会い頭) | 2/5 |
| 車線逸脱抑制 | 5/5 |
| 高機能前照灯 | 5/5 |
| ペダル踏み間違い時加速抑制 | 5/5 |
ここで注目したいのは、新たな交差点事故の評価です。
対二輪車の右直事故はレベル3、対車両の出会い頭事故はレベル2となっています。
スズキが全車標準装備としている衝突被害軽減ブレーキは多くの場面で高評価ですが、すべての事故パターンで最高評価というわけではありません。
自動ブレーキが装備されていても、どのような状況でも止まれるわけではないということを、この結果からも理解しておきたいところです。
eビターラの衝突安全性能はどうだった?
衝突安全性能はBランクとなりました。
細かい項目を見ると、以下のような結果です。
| 衝突安全評価項目 | レベル |
|---|---|
| フルラップ前面衝突・運転席 | 5/5 |
| フルラップ前面衝突・後席 | 4/5 |
| 新オフセット前面衝突 | 4/5 |
| 側面衝突・運転席 | 5/5 |
| 後面衝突頸部保護・運転席 | 5/5 |
| 後面衝突頸部保護・助手席 | 5/5 |
| 歩行者保護・頭部 | 3/5 |
| 歩行者保護・脚部 | 5/5 |
| シートベルト着用警報 | 4/5 |
運転席の前面衝突や側面衝突などはレベル5です。
一方、後席の前面衝突、新オフセット前面衝突はレベル4で、歩行者の頭部保護はレベル3でした。
これらが、衝突安全性能を考えるうえで確認しておきたい部分です。
ただし、各評価項目の点数配分や総合得点のすべてが現時点で公表されているわけではありません。
したがって「4つ星になった原因はこの項目だけ」と断定することはできません。
少なくとも、最高評価ではない項目が複数あることは確認できます。
整備士として、eビターラはある程度安心していいと思う
僕は今回の結果を見て、eビターラについては一定の安心材料が得られたと感じました。
理由は、JNCAPとANCAPの両方で4つ星という評価が確認できたことです。
日本と海外では評価基準や試験条件が違います。それでも、別々の制度で総合4つ星を獲得しているのは評価できると思います。
さらに、フロンクスのANCAP試験で問題になったような後席シートベルトの重大な機構不具合は、今回確認したeビターラのANCAP公式評価では報告されていません。
もちろん、それはあらゆる条件で不具合が発生しないことの保証ではありません。
また、フロンクスとeビターラは別の車です。eビターラの好成績によって、フロンクスで指摘された問題が解消されたと考えることもできません。
今回分かったのは、少なくともeビターラについては、日本だけでなく海外でも一定の衝突安全性能が確認されているということです。
これからeビターラを購入しようと考えている人には、参考にしてほしい結果だと思います。
フロンクスの件から学びたいこと
今回あらためて感じたのは、車の安全性能を星の数だけで判断する難しさです。
日本で4つ星だから、海外でも同じ評価になるとは限りません。
フロンクスが、その分かりやすい例になりました。
逆に、海外で厳しい評価を受けたからといって、同じメーカーのすべての車が危険というわけでもありません。
重要なのは、それぞれの車がどのような試験を受け、何を評価され、どこが弱点として指摘されたのかを確認することです。
eビターラは予防安全性能に強みがあり、海外の衝突安全試験でも一定の成績を残しました。
ただし、交差点の一部の事故パターンや乗員保護性能など、さらに改善できる部分も残っています。
僕としては、今回の4つ星という結果は決して悪いものではないと思っています。
何より、日本の評価だけでなく、海外の試験結果も確認できたことは大きいです。
eビターラは、フロンクスのように日本とオーストラリアで極端な評価差が出たわけではありません。
だからこそ、購入を検討している人にとっては、ある程度安心できる材料になるのではないでしょうか。
安全性能に完璧はありません。
しかし、こうして試験結果を具体的に確認できることは、車選びにおいて大きな意味があると思います。
参考資料・一次情報
国土交通省:スズキ「eビターラ」2026年度自動車アセスメント結果
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000575.html
NASVA:eビターラ JNCAP評価
https://www.nasva.go.jp/mamoru/assessment_car/detail/274
NASVA:フロンクス JNCAP評価
https://www.nasva.go.jp/mamoru/assessment_car/detail/266
ANCAP:eビターラ安全評価
https://www.ancap.com.au/safety-ratings/suzuki/e-vitara/8a3def
ANCAP:フロンクス安全評価
https://www.ancap.com.au/safety-ratings/suzuki/fronx/cb710f
ANCAP:フロンクス1つ星評価とシートベルト不具合の公式発表
https://www.ancap.com.au/media-and-gallery/media-releases/1739c4
※各国の評価制度には試験方法・配点・適用車両仕様の違いがあります。星の数や得点率の単純比較だけで安全性能の優劣が決まるものではありません。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。
