2026年7月31日、ステランティス・ジャパンがシトロエン「ベルランゴ」やプジョー「308」など9車種、計1万9147台のリコールを国土交通省に届け出ました件で取り上げてみます。

不具合の内容は、エンジン内部のカムシャフトチェーン。
チェーンを構成する部品が摩耗することで、最悪の場合にはチェーンが破断し、走行中にエンジンが停止するおそれがあるというものです。
国土交通省によれば、これまでに9件の不具合報告が寄せられていますが、事故は発生していないとのことです。
ここで整備士として気になるのが、
「エンジンから異音が出ていたら、どこまで気にしていますか?」
ということです。
目次
リコールの内容を見ると「摩耗」がポイント

今回のリコールでは、カムシャフトチェーンの構成部品が摩耗する可能性があるとされています。
エンジンのタイミングを正確に保つために使われているのが、このカムシャフトチェーンです。
エンジンは、
吸気する
↓
圧縮する
↓
燃焼する
↓
排気する
という動作を非常に正確なタイミングで繰り返しています。
そのタイミングをクランクシャフトとカムシャフトの間で合わせているのが、タイミングチェーンなどの機構です。
ここに問題が起きると、単純に「エンジンの音がちょっと大きくなった」という話だけでは済まなくなる可能性があります。
タイミングが狂えば、エンジンそのものの正常な動作に影響します。
最悪の場合、チェーンが破断してエンジンが停止する。
今回のリコールが怖いのは、そこです。
エンジンオイル選びも、タイミングチェーンに影響を与えます。欧州車には欧州車用のものをきちんと選ぶことが重要です。
「変な音がするけど走れる」は危険な場合がある
整備工場にいると、
「最近ちょっと変な音がするんだけど、走れるからそのまま乗ってます」
という話を聞くことがあります。
もちろん、車から出る異音のすべてが重大故障につながるわけではありません。
ベルトが鳴いているだけかもしれない。
エンジンマウントが劣化しているだけかもしれない。
排気系から音が出ているだけかもしれない。
ただ、エンジン内部から今まで聞いたことのない音が出ているのであれば、放置しないほうがいい。
特に、
「最近エンジンをかけた直後だけガラガラ音がする」
「以前よりエンジン音が大きくなった」
「アイドリング時にカチャカチャ音がする」
など、以前とは明らかに違う音が出ている場合です。
車は突然壊れることもありますが、その前に何らかのサインを出していることもあります。
ただし「異音=今回のリコール」と決めつけてはいけない
ここも大切です。

今回のリコール対象車だからといって、異音が出たら必ずカムシャフトチェーンが原因とは限りません。
逆に、リコール対象車ではないからといって、異音を放置していいわけでもありません。
整備士は音だけで、
「これは絶対チェーンだ」
と判断するわけではありません。
実際には車両の状態を確認して、故障コードを確認したり、必要に応じて各部を点検したりしながら原因を絞っていきます。
だからこそ、ユーザー側にお願いしたいのは、
「音が出ていることを整備士に伝える」
ことです。
これ、ものすごく重要です。
「いつから」「どんな音か」を伝えてもらえると助かる
整備士として車を預かるとき、
「なんかおかしい」
だけでは、原因を探すのに時間がかかることがあります。
一方、
「朝一番のエンジン始動時だけガラガラする」
「アクセルを踏んだときだけ音がする」
「昨日から急に音が大きくなった」
などの情報があれば、診断の手がかりになります。
可能ならスマホで動画を撮っておくのもいいと思います。
入庫したときには症状が出ない。
でもユーザーが撮った動画を見ると、確かに異音が確認できる。
整備現場では、こういうこともあります。
リコールは「壊れてから修理する」ものではない
今回のようなニュースを見ると、
「リコール=メーカーが悪い」
というイメージを持つ人もいるかもしれません。
でもユーザー側からすると、リコールはむしろ、
「重大な故障になる前にメーカーが対策してくれる仕組み」
と考えたほうがいいと思います。
国土交通省は自動車のリコール情報を公開しており、2026年分についてもメーカーごとの届出を確認できます。
自分の車が対象になっていたら、
「面倒だから今度でいいや」
ではなく、早めに販売店などへ相談したほうが安心です。
車は「普通に走っているから大丈夫」とは限らない
今回のリコールで個人的に気になるのは、まさにここです。

車というのは、故障する直前まで普通に走ってしまうことがあります。
エンジンがかかる。
普通に走る。
異常な警告灯も点いていない。
だから、
「問題ないだろう」
と思ってしまう。
でも内部では少しずつ摩耗が進んでいる可能性があります。
今回のように、そのまま使用すると最悪の場合エンジン停止につながる不具合もあります。
もちろん、必要以上に怖がる必要はありません。
リコール対象車ならメーカーの案内に従えばいい。
異音があるなら整備工場で確認してもらえばいい。
それだけです。
ただ、
「走れるから大丈夫」
という判断だけはしないほうがいい。
これは今回のリコールに限らず、整備士として車を見てきた中で感じることです。
車から聞いたことのない音がした。
以前と何か違う。
エンジンの振動が増えた。
そんな小さな変化があったときは、
「まだ走れるから」
ではなく、
「何かおかしいかもしれない」
というところから、一度点検してみる。
車を長く乗るためには、こういう早めの対応が意外と大切だったりします。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。