「0W-20から0W-40へ変更、それでも壊れるGM製V8…本当に製造不良だけが原因なのか?」

アメリカでGMの6.2L V8エンジンをめぐる問題が、さらに大きくなっています。

対象になっているのは「L87」と呼ばれる6.2L V8エンジン。

シボレー・シルバラード1500やタホ、サバーバン、GMCシエラ1500、ユーコン、キャデラック・エスカレードなどに搭載されているエンジンです。

日本ではあまり馴染みのない大排気量V8ですが、今回の問題は整備に携わってきた人間からすると非常に興味深い内容です。

なぜなら問題になっているのが、センサーや補機類などではないからです。

コンロッド。

クランクシャフト。

ベアリング。

オイルギャラリー。

つまり、エンジンの中枢部分です。

しかもGMはすでにリコールを実施しています。

ところが、その対策を受けた車両からもエンジン故障が報告されている。

ここまでくると個人的には、

「本当に製造上のバラつきだけが原因なのだろうか?」

という疑問を持ってしまいます。

約100万台規模まで調査対象が拡大

米国のNHTSA(道路交通安全局)は、GMのL87型6.2L V8エンジンについて調査を進めています。

今回の調査対象は2021~2026年モデルのトラックやSUVなど、約99万台規模にまで広がっていると報じられています。

ただし、ここは誤解しないようにしなければなりません。

約99万台すべてに欠陥が確認されたという意味ではありません。

また2025~2026年モデルについて、新しいリコールが決定したということでもありません。

問題なのは、当初GMが想定していた範囲の外でも故障が報告されていることです。

問題になったのはエンジンの「ど真ん中」

この問題で個人的に一番気になるのが故障部位です。

GMが当初報告している問題には、コンロッドやクランクシャフト、クランクシャフトのオイルギャラリー、寸法や表面仕上げなどが関係しています。

オイルギャラリー内の異物などによってベアリングが損傷したり、クランクシャフト自体が仕様から外れていたりする可能性が指摘されています。

これが例えば、

O2センサーが壊れます。

イグニッションコイルが壊れます。

ウォーターポンプから漏れます。

という話なら、部品を交換して修理することができます。

しかし今回は話が違います。

クランクシャフトやコンロッド、そしてそれを支えるベアリング周辺。

エンジンが回転運動を生み出す、まさに中心部分です。

ここが損傷してしまえば、最悪の場合はエンジンAssy交換という大掛かりな修理になります。

リコール対策が非常に興味深い

そして整備士として非常に興味深いのが、GMが行ったリコール対策です。

対象となるエンジンをまず検査します。

そこで問題があると判断されたエンジンは交換。

ここまでは分かります。

興味深いのは、検査に合格したエンジンです。

こちらはそのまま使用するのですが、指定されるエンジンオイルが変更されました。

従来の0W-20から、

「0W-40」

へ。

かなり粘度が変わっています。

もちろん、

「0W-40にすれば壊れたエンジンが直る」

という話ではありません。

すでに交換が必要と判断されたエンジンは交換する。

検査に合格し、継続使用できると判断されたエンジンについて0W-40を使用する。

これがリコール対策の考え方です。

なぜ0W-20から0W-40なのか?

ここで整備をやっている人なら気になるはずです。

なぜ粘度をここまで変更するのか?

0W-20と0W-40では、低温側の「0W」は同じですが、高温時の粘度特性が違います。

40番の方が高温時により高い粘度を維持します。

クランクシャフトとベアリングの間には、エンジンオイルによる油膜が必要です。

その油膜によって金属同士が直接接触することを防いでいます。

だからこそ今回、

クランクシャフト。

ベアリング。

オイルギャラリー。

そしてオイル粘度変更。

というキーワードが並ぶと、整備を経験してきた人間としてはいろいろ考えてしまいます。

ただし、ここで注意したいのは、

「0W-20を使ったからエンジンが壊れた」

と単純化することです。

GMが報告している原因には、製造工程や品質に関する問題が含まれています。

したがって、

0W-20=原因

0W-40=根本的な修理

と考えるのは正確ではありません。

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ところが対策後にもエンジンが壊れている

問題はここからです。

NHTSAには、リコール対策が完了した後にもエンジンが故障したという報告が寄せられています。

報じられている数字では499件。

そのうち473件がオイル関連の対策を受けた車両。

さらに26件は、エンジン交換を受けた車両に関するものとされています。

これはかなり気になる数字です。

特に僕が引っかかるのは、

「交換したエンジンでも故障報告がある」

というところです。

もちろん、この26件がすべて当初とまったく同じ原因で壊れたと確定したわけではありません。

ここを一緒にしてはいけません。

だからこそ現在、規制当局が詳しく調べているわけです。

本当に「製造不良」だけなのだろうか?

ここからは僕個人の疑問です。

当初の問題が特定期間に作られた部品の製造・品質問題だけだったのであれば、その範囲を特定して対策すれば問題は収束していくはずです。

ところが現在は、当初の製造期間より後に生産されたL87についても故障報告が確認され、調査対象が広げられています。

さらに、

検査を行った。

必要なエンジンは交換した。

継続使用するエンジンは0W-40へ変更した。

それでも対策後の故障報告が出ている。

こうなってくると僕なら、

「製造工程だけを見ていて本当に大丈夫なのか?」

という疑問を持ちます。

例えば設計上のクリアランス。

オイル供給。

油圧。

潤滑条件。

負荷。

温度管理。

部品の材質や表面処理。

もちろん実際の原因を特定するには、壊れたエンジンを分解し、測定し、製造履歴まで追わなければ分かりません。

現時点で「L87には基本設計上の欠陥がある」と断定できる根拠はありません。

しかし対策後にも故障報告が続いている以上、

「製造品質だけの問題なのか。それとももっと根本的な要因が隠れているのか?」

という点は、今後の調査でぜひ明らかにしてほしいところです。

オイルを硬くして延命する、で終わっていい問題ではない

そして僕が一番気になるのがここです。

0W-20から0W-40への変更そのものが悪いと言いたいわけではありません。

メーカーが試験したうえで必要と判断した正式な対策です。

しかしユーザー目線で考えると、

「なぜこのエンジンには0W-40が必要になったのか?」

という説明が重要だと思います。

もし部品が完全に正常であれば、なぜ当初指定されていた0W-20ではなく0W-40を使う必要があるのか。

そして0W-40へ変更した車両でも故障報告があるのであれば、その対策で十分なのか。

ここが今回NHTSAが検証している重要なポイントの一つでしょう。

日本車でも「メーカー指定だから」で終わらせない方がいい

この話はアメリカの巨大な6.2L V8エンジンだから、日本には関係ないと思うかもしれません。

でも整備という観点では、非常に考えさせられる事例です。

現在のエンジンは低燃費化のため、低粘度オイルを指定する車種が増えています。

ただし大切なのは、

「柔らかいオイルは危険」

でも、

「硬いオイルならエンジンを守れる」

でもありません。

エンジンは設計されたクリアランスや油圧、オイルポンプ能力、温度などを含めて指定粘度が決められています。

だから自己判断で、

「古くなったから0W-20を0W-40にしておこう」

というのは今回のGMの対策とはまったく別の話です。

GMの場合はメーカー自身が指定を変更しています。

ここは非常に重要です。

今回の問題はまだ終わっていない

L87問題で注目したいのは、もはや単純なリコール情報ではなくなっていることです。

当初は特定期間に製造されたエンジンについて、クランクシャフトやコンロッドなどの製造・品質問題が指摘されました。

そしてリコールを実施。

エンジンを検査し、問題があれば交換。

使用可能なら指定オイルを0W-20から0W-40へ変更する。

普通なら、これで収束へ向かうはずです。

しかし対策後にも故障報告が寄せられた。

交換されたエンジンにも故障報告がある。

さらに当初想定されていた製造期間より後のエンジンにも調査が広がっている。

僕が整備士として一番知りたいのは、

「なぜ壊れるのか?」

です。

本当に特定ロットの製造品質だけが原因だったのか。

検査方法では将来壊れるエンジンを見抜けなかったのか。

0W-40への変更で何を補おうとしていたのか。

あるいは、エンジンそのものについてさらに検証すべき要因が存在するのか。

NHTSAの調査は現在も続いています。

もし既存の対策では不十分と判断されれば、対象範囲の拡大や修理方法の変更など、さらに大きな対応へ発展する可能性もあります。

約100万台規模にまで調査対象が広がったGMの6.2L V8。

個人的には「0W-20から0W-40へ変わった」という部分だけでも非常に興味深い事例です。

そして何より、

「リコール修理をしたのに、なぜまた壊れるのか?」

ここが解明されるまでは、この問題はまだ終わったとは言えなさそうです。

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