トヨタ系ディーラーでペーパー車検を行っていたことについて!何故ペーパー車検は起こるのか?

今年に入って、結構大規模な不正事案が発生しました。

それがこちらです。なんと5158台もの不正車検が行われていたということで、自動車検査員が7人も解任されたということです。

不正車検の中身は、行わなければならない整備や点検・検査を省いたものだと報じています。

3月31日に発表されたニュースですが、改めて取り上げてみたいと思います。

まず場所は愛知県にあるネッツトヨタ愛知プラザ豊橋店です。もちろん指定工場ですけど、この工場で7人の検査員が解任されたということならば、整備士の在籍人数はおそらく10人以上はいたと想像できます。

実際にネッツトヨタ愛知のHPを見ると以下のように記載があります。

2.法令違反行為の概要
 (1)対象期間:2018年12月22日から2021年1月13日
 (2)対象台数:5,158台
 (3)主な法令違反行為 
  ・保安基準適合証及び同標章を不適切に交付していたこと
  ・指定整備記録簿の記載が不適切であったこと

ネッツトヨタ愛知HPより引用

2018年12月22日から2021年1月13日までの期間とされています。

まあまあの規模の車検をやっていたんだなということがわかります。想像すると、このネッツトヨタは店舗がかなりの数ありますので、人事異動でこの期間中に異動している人も居たかもしれない。

解任された7人の検査員は純粋にこのお店のスタッフだったのか?不正期間中に在籍していた検査員で、他の店舗に異動していた人も対象になっていたのかもしれませんね。

何故不正車検が起こると思いますか?

そもそもが何故不正車検が起こるのか?僕も現役の整備士と検査員をやってますが、理由は大きく3つになると考えています。

1、人員に対するキャパシティオーバーによる理由

2、クレーマーとのやり取りで渋々受けてしまった

3、業務怠慢によるもの

この中で不正車検に通じるものとして、キャパシティオーバーによるものが多いかなと。この不正が起きた愛知ではタイヤ交換ってあるのかな?

僕ら長野県よりも北の県で整備士と検査員をやってる人ならわかると思いますけど、11月と12月、それと3月から4月にかけてってタイヤ交換がものすごく集中します。

もうそれって地獄絵図なんです。特に冬のスタッドレスタイヤの履き替え。雪がちらついたら一気にやってくるので、予約を入れてもらってる日常業務がまったく進まなくなる。

タイヤ交換も予約制にすればいいんでしょうけど、普段利用してもらっているお客さんから言われると引き受けざるを得ないです。

3月もタイヤの履き替えが多いので恒常的にキャパオーバーになる。はっきり言って人員が足りません。そんなとき、魔が差してしまうのか?

続いては2番。お客さん目線でいうと、タイヤの溝だとか荷重が足りないとかで検査をはねられてしまう場合必ず言われるのが

「そんなの承知しておくから通してくれよ」

って。これすごく多いです。タイヤは高価な部品です。しかし溝やひび割れ、荷重が足りないという理由で車検に通らなくなる部位です。

検査に通らない為、タイヤを何とかしなくちゃいけない。お金がかかるから何とか通せっていうケース。

純粋に車検の検査だけをやってる陸事だったら、問答無用に突っぱねられますよね?だけど指定工場の場合はいつも利用しているお客さんが相手です。

人情などが邪魔をしてしまい、

「じゃあ今回だけですよ、お金が出来たらすぐに交換してくださいね」

って言ってしまう人もいるのかもしれません。

3番の怠慢っていうのは、1番と2番を繰り返してくると、それが当たり前になって不正を繰り返してしまうパターンですね。

大規模な不正って大体この3番に該当してきます。ネッツトヨタ愛知の場合、残念ながら3番にあたると言わざるを得ません。

正直僕が勤めている会社の部署でも年間1500台弱の車検をこなしています。一日あたりやはり7~8台です。もちろん登録台数が月によって違うので、3月なんかは毎日12台以上整備して検査をしています。

現場の整備士はたったの6人です。検査員は僕を含めて4人です。この人数でこの数量の仕事を回しています。

スズキやダイハツ、スバルに三菱などのリコール作業も請け負っているので、その辺のディーラーと業務内容は似ているはずです。だけど、不正は一切ありません。

新車もガンガン売れる時期なので、新車仮装の仕事もしないといけない。

整備業務って、少しでも部品が止まったりするとリフトが空かなくなるといった事態が起きます。どうやって業務をスムーズに流しているかっていうと、部品屋さんに協力してもらって、入庫してくる車の部品を、入庫前に持ってきてもらっています。

もちろんそこにはお客さんの了解を得る必要がある。というのも、消耗部品は社外部品を使っているからです。値段も安く提供できます。

社外部品だと使わなかった部品は返品が効くんです。

なので、フィルター類、ベルト、ブレーキ部品、足回りのブーツ類。この辺りの部品を車が入ってくる前からお店に持ってきてもらってるんです。

受け入れをしてから注文をしなくて済むため、多少残業になってもその日に車検が完結できる。部品を待っていたら翌日になってしまいます。

翌日になるとまた新たに車検整備の車が入ってくるので、なるべくその日に入った車は全てその日に完結するようにする。ここがポイントです。

もちろんお客さんの中には純正パーツを使って欲しいという人も居ます。そういう人はあらかじめ時間を2、3日もらう。車を預かる時にそのあたりを相談して詰めておく。

逆にディーラーだと純正部品オンリーしか使えなかったりすれば、こういう事ってできないのかもしれないですね。

いずれにしても5000台規模の不正車検は検査員だけじゃなくて会社として駄目ですよね。

みんな整備士も検査員もジレンマと戦ってるんですよ。陸事で検査をしている検査員はいいですよ。自前のお客さんの検査をするわけじゃないし。はっきり言って楽です。

行政を盾にして、法でダメなんで通せませんって言えばそれで終わりでしょ?対お客さん相手だと、だったらもうお宅の整備工場なんか利用しないよ!って言われると、自分たちの収益にも響くし生活するための給料にだって響くんです。

声を大にして言いたいのは、この国の車検システムっておかしいと思うんです。

不正が起こった!はいあんたら解任ね!って上から目線の国交省は僕は嫌いです。僕が提案したいのは、国の検査を代行しているんだったら、1台当たりにその検査業務費用を国から指定工場へバックするようにすればいいんです。

そうすればお客さんから検査に対する費用を頂かなくてすむ。陸事の仕事も減る。指定工場にも若干なりの収入になる。ただみなし公務員だって罰せられてっていうのは検査員に気の毒すぎるんですよね。

やってはいけない不正だけど、解任された検査員には同じ検査員として同情してしまう部分もありますよね。現場の苦しみを知ってるので。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする