自動車の世界では、発売から年数が経過すると販売台数が落ちていくのが一般的です。

新型車が登場した直後は注目を集め、数年が経てばモデルチェンジを期待する声が増える。特にスポーツカーは、発売当初に購入希望者が集中しやすい車種だと思います。
ところが、その常識とは違う売れ方をしている車があります。
マツダのロードスターです。
現行の4代目、ND型ロードスターは2015年に発売されました。すでに登場から10年以上が経過しています。
それにもかかわらず、2025年の国内販売台数は1万2台。ND型として過去最高を記録したというのです。
2026年も販売が堅調に推移していると報じられています。
なぜロードスターは、これほど長い期間にわたって支持され続けるのでしょうか。
発売初年度より11年目の方が売れた
まず驚くのは販売台数の推移です。

| 年 | 国内販売台数 |
|---|---|
| 2015年 | 8,418台 |
| 2020年 | 4,434台 |
| 2022年 | 9,567台 |
| 2025年 | 10,002台 |
2020年には販売台数が落ち込んだものの、その後は回復。2025年にはついに年間1万台を突破しました。
一般的な乗用車なら、発売から10年以上経てば次のモデルへの移行が話題になる時期です。
しかし、NDロードスターは発売当初を上回る販売台数を記録しています。
これには、特別仕様車の投入や継続的な商品改良も影響しているようです。
マツダはこれまで、990Sや35周年記念車など、ロードスターの魅力を引き出す仕様を投入してきました。
大きく姿を変えるのではなく、もともとの良さを磨き続ける。
そんな開発方針が、長く売れる理由の一つになっているのではないでしょうか。
今となっては貴重な軽量FRスポーツ
僕がロードスターの魅力としてまず思い浮かべるのは、車の基本構成です。

コンパクトなボディ、軽量設計、FR、そして自然吸気エンジン。
ソフトトップモデルには1.5Lの直列4気筒エンジンが搭載されています。
現代の自動車は、高出力化や電動化、安全装備の充実によって、車両重量が増える傾向にあります。
もちろん、それによって快適性や安全性は向上しています。
しかし、ロードスターは昔から一貫して、軽さと運転する楽しさを大切にしてきました。
必ずしも大排気量や大出力である必要はない。
むしろ、限られたパワーを使い切る楽しさに価値があるという考え方です。
個人的には、こういうスポーツカーが今も新車で購入できること自体、貴重だと思います。
速さだけでは測れないスポーツカーの価値
近年はEVでも非常に高い加速性能を実現できるようになりました。

モーターの大きなトルクによって、驚くような加速をする車もあります。
しかし、ロードスターの魅力は0-100km/h加速の数字だけでは測れません。
自分でエンジン回転数を合わせ、ギヤを選び、車の動きを感じながら走る。
速いか遅いかではなく、運転という行為そのものが楽しい。
そこに価値を感じる人にとって、ロードスターは非常に魅力的な存在なのでしょう。
僕自身、これまで数多くの車を整備してきましたが、スペック上の性能と、運転して楽しいかどうかは必ずしも一致しないと感じています。
高出力でなくても、乗って楽しい車はある。
ロードスターは、まさにその代表格ではないでしょうか。
実は若い世代にも支持が広がっている
ロードスターというと、かつてスポーツカーに憧れた中高年層が購入しているイメージがあるかもしれません。

実際、購入者の中心は50代から60代で、40代以上が全体の約7割を占めています。
しかし、興味深い変化もあります。
マツダの説明によると、20代の購入者は2020年から2025年にかけて約2倍に増加しています。
若い女性の購入者も増えているそうです。
スポーツカー離れ、若者の車離れという言葉をよく耳にしますが、ロードスターでは違う動きが起きています。
コンパクトで扱いやすく、デザインにも個性がある。
単に走りを楽しむだけでなく、自分らしい車を選びたいという人にも支持されているのかもしれません。
2026年も商品改良。新たな特別仕様車も登場
マツダは2026年6月にもロードスターの商品改良を発表しました。

新たな特別仕様車「PS」を設定し、新色のジンクグリーンメタリックも追加しています。
PSには、MAZDA SPIRIT RACING ROADSTERで培った技術や知見が取り入れられています。
また、最新の車外騒音規制への対応も図られました。
排出ガス規制や騒音規制など、自動車を取り巻く環境は年々厳しくなっています。
そんな中でも、マツダがロードスターの販売を続け、改良を重ねていることには大きな意味があると思います。
現行型を長く販売しているのは、単にモデルチェンジしていないからではない。
商品価値を維持するための改良を継続しているからこそ、今も支持されているのでしょう。
整備士として気になる長寿モデルのメリット
僕はロードスターのような長寿モデルには、整備の面でもメリットがあると考えています。

同じ基本構造の車が長期間販売されれば、それだけ整備経験や故障事例が蓄積されます。
もちろん、年式によって部品や制御システムが改良されるため、すべてが共通というわけではありません。
それでも、整備工場にとって基本構造を理解しやすいことは利点です。
また、ロードスターは長年にわたって多くの愛好家に支持されてきた車でもあります。
純正部品だけでなく、アフターパーツや専門ショップ、オーナー同士の情報交換など、車を楽しむ環境が充実しています。
こうした文化がある車は、購入した後も長く付き合いたくなるものです。
ただし、長寿モデルだからといって、すべての部品が長期間供給される保証があるわけではありません。維持するうえでは、年式や仕様に合った整備情報の確認が必要です。
ロードスターが売れるのは、代わりになる車が少ないから?
今の自動車市場を見渡すと、ロードスターのような車は本当に少なくなりました。

コンパクトで軽量なFRスポーツ。
自然吸気エンジンを搭載し、MTを選ぶこともできる。
さらにオープンカーならではの開放感まで楽しめる。
これらの条件をすべて満たす新車となると、選択肢は非常に限られます。
SUVやミニバンが主流となった現在、ロードスターは明らかに少数派の車です。
しかし、少数派だからこそ、欲しい人にとっては代わりのない存在になっている。
それが発売から10年以上経過しても売れ続ける、大きな理由なのではないでしょうか。
変わらない価値があるからこそ売れ続ける
普通ならモデル末期と思われる時期に、販売台数の過去最高を更新したNDロードスター。

これはなかなか珍しいことだと思います。
車の性能は年々進歩しています。
燃費も安全性能も快適性も、昔の車とは比較にならないほど向上しました。
その一方で、軽い車体を自分の手で操る楽しさは、昔も今も変わりません。
ロードスターは、その価値を大切に守り続けている車です。
2025年に年間1万台を超えたという実績は、今でもこういう車を求めている人が大勢いることを示しています。
そして何より、マツダがこの車を作り続けてくれていることが嬉しいですね。
皆さんは、今のNDロードスターと歴代ロードスター、どの世代が一番好きですか?
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。

