BYD RACCO(ラッコ)の整備データが興味深い!ホイールナット130N·m、ブレーキフルードや減速機オイルの規格は?

BYDが日本の軽自動車市場に投入した電気自動車、RACCO(ラッコ)。

中国の自動車メーカーが日本の軽自動車規格に合わせて開発したEVということで、僕も以前から気になっていました。

ただ、僕がそれ以上に気になっていたのは、この車の整備は一体どうなっているのか? ということです。

長年、自動車整備士をやってきた人間として、新しい車が出れば、エンジンやモーターの仕組みだけでなく、日常点検や定期交換部品にも目が向きます。

そこで今回、BYDが公開しているRACCOの日本語版取扱説明書を調べてみました。

すると、意外な数値がいくつも見つかりました。

ホイールナットの締付トルクは130±13N·m!

まず驚いたのが、ホイールの締付トルクです。

RACCOの取扱説明書224ページには、ホイールハブナットの締付トルクとして、130±13N·mと記載されています。

中央値が130N·mで、許容幅は117〜143N·mです。

軽自動車のホイールナットというと、僕はこれまで、もっと小さな締付トルクを扱うことが多かったです。

例えばホンダN-BOXの指定トルクは108N·m。

それと比べても、RACCOはかなり強めの設定です。

軽自動車だからといって、普段の感覚で締め付けてはいけませんね。

もちろん、締付トルクが高いからといって、単純に車体が重いからだとか、ナットの強度が違うからだとか、理由を決めつけることはできません。

重要なのは、メーカーが指定する数値を確認して、適切なトルクレンチで作業することです。

タイヤ交換をする整備士にとっては、まず覚えておきたい数字だと思います。

タイヤは165/65R15、指定空気圧は250kPa

取扱説明書239ページには、タイヤの整備諸元も載っています。

項目RACCOの指定値
タイヤサイズ165/65R15
指定空気圧250kPa
ホイールバランス10g未満

サイズは軽自動車で見かける規格ですが、指定空気圧は250kPaです。

そして、タイヤ交換時には前述の130±13N·mという締付トルクを守る必要があります。

今後RACCOが整備工場に入庫するようになったら、タイヤ交換やスタッドレスへの履き替えで確認する機会が増えそうです。

エンジンオイルは不要。でも減速機には指定オイルがある

RACCOは電気自動車なので、ガソリンエンジンのようなエンジンオイル交換はありません。

しかし、駆動系にオイルがまったく使われていないわけではありません。

取扱説明書241ページの指定値はこちらです。

項目メーカー指定
トランスミッションオイルBOT 384
注入量0.5±0.05L

量としては少ないですが、指定油種が明確に定められています。

一般的なATFやギヤオイルなら何でも使ってよい、という話ではありません。

そして、取扱説明書には交換周期に関する記載もあります。

EVだから駆動系は一切メンテナンス不要、という認識ではいけませんね。

ブレーキフルードはHZY6/DOT4。容量は約900mL

これも気になった整備諸元です。

項目メーカー指定
ブレーキフルードHZY6/DOT4
注入量900±50mL

こちらも取扱説明書241ページに記載されています。

EVだからといって、ブレーキフルードが不要になるわけではありません。

回生ブレーキを使う車であっても、油圧ブレーキの点検・整備は必要です。

定期点検表にもブレーキフルードの交換周期が記載されています。

なお、900±50mLは取扱説明書に記載された注入量です。実際のフルード交換作業で毎回その量を消費するという意味ではないので、そこは区別して考える必要があります。

ブレーキローターとパッドの使用限度まで公開されている

さらに興味深いのが、ブレーキまわりの摩耗限度です。

取扱説明書240ページには、こんな数値が掲載されています。

項目基準厚さ使用限度
フロントブレーキローター20mm18mm
リヤブレーキローター9mm7mm
フロントブレーキパッド8mm2.5mm
リヤブレーキパッド6.5mm2.5mm

この数値は整備士にとって非常にありがたい情報です。

ローターの厚みを測定した際、交換が必要な状態かどうかを判断する根拠になります。

EVは回生ブレーキがあるため、摩擦ブレーキの使われ方もガソリン車とは異なる場合があります。

パッドの残量だけでなく、ローターの錆や当たり面なども含めて点検したいところです。

モーター冷却水も必要。容量は3.4L

EVにはエンジンがありませんが、熱管理は重要です。

RACCOの取扱説明書では、モーター冷却水について次のように指定されています。

項目メーカー指定
冷却水有機酸系冷却液、凍結温度−40℃の耐寒型
注入量3.4±0.2L

ガソリン車のラジエーターとは構成が異なりますが、EVでも冷却系の点検は必要です。

整備する際は、指定された冷却液を使用することが前提になります。

なお、この数値は取扱説明書にあるモーター冷却系の値です。ほかの冷却回路の容量まで同じだと判断しないようにします。

バッテリーも一般的な軽自動車とは違う

RACCOのもう一つの特徴は、低電圧側の電源構成です。

取扱説明書110ページには、通常の鉛バッテリーとは異なる、低電圧プラットフォームタイプの起動バッテリーについて説明があります。

制御モジュールやリレーを備え、駆動用バッテリーから自動的に充電される仕組みです。

そのため、一般的な軽自動車のように「M-42Rを買って交換」といった発想では対応できません。

整備前の電源遮断やジャンプスタートについても、メーカーの指定に従う必要があります。

電気自動車はオイル交換が不要だから整備が簡単、というだけの話ではないことが分かります。

RACCOの整備データは今後ますます重要になる

今回、BYD RACCOの公式取扱説明書を読んで感じたのは、EVにも整備士が確認すべき数値がしっかりあるということです。

特に印象に残ったのは、ホイールナットの130±13N·m。

そして、減速機オイルのBOT 384、ブレーキフルードのHZY6/DOT4、ブレーキローターやパッドの使用限度です。

これらは、現場で実際に車を触るときに必要になる情報ばかりです。

今後、RACCOのような新型EVが増えてくると、従来の整備経験だけでは判断できない場面も増えるでしょう。

だからこそ、メーカー公式取扱説明書に記載されている整備情報を、簡単に検索できる形で整理することが大切だと考えています。

MHO ENGINEERINGでは現在、メーカー公式資料をもとにした整備データベースを公開しています。

BYD RACCOの整備データはこちら

まだ登録項目は追加している途中ですが、今後はブレーキフルードの規格や摩耗限度なども含め、収集・確認できたデータを順次反映していきます。

新型車の整備情報を、少しでも早く、正確に調べられるサイトへ。

それが、これからのMHO ENGINEERINGで目指していることです。

※本記事はBYD RACCO日本語版オーナーズマニュアル(2026年7月版)を参考に作成しています。作業前には実車の仕様、メーカーの最新資料、整備手順を確認してください。

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