日記・戯言

7万円の中古車を買った整備士が、最初に全部の油脂類を交換した理由

中古車を買ったとき、最初に何を交換しますか?

タイヤ、バッテリー、ワイパーなど、目で見て劣化が分かる部品を思い浮かべる人が多いと思います。

僕が中古車を手に入れたとき、まず気にするのは油脂類です。

エンジンオイルだけではありません。

ミッションオイル、デフオイル、ブレーキフルードなど、交換履歴が曖昧なものを一度交換します。

目的は高級なオイルを入れることではありません。

「いつ交換したか分からない状態」を終わらせ、自分の管理を始める基準点を作るためです。

車検代込み7万円で買ったバモス

2010年3月、僕は平成13年式のホンダ・バモスを購入しました。

走行距離は99,927km。

車両代と車検代を含めて7万円でした。

10万kmを目前にした、決して新しいとはいえない軽自動車です。

もともとは、お客さんが乗っていた車でした。

タイミングベルトの交換時期を迎え、これから整備代をかけて乗り続けるより、新しい車へ買い替えることを選んだのです。

そのまま廃車になる予定だったバモスを、当時勤めていた会社から僕が買いました。

7万円という値段だけを見れば、かなり安い中古車です。

しかし、安かったから何もせずに乗れるわけではありません。

走行距離は10万km目前。

外装にも年式相応の傷みがあり、ドアを開けたところから見えるフェンダーまわりには錆も出ていました。

それでも購入したのは、エンジンとミッションに大きな異常がなく、過去の整備履歴をある程度把握できる車だったからです。

安い中古車で重要なのは、値段そのものではありません。

これから直して使える車なのかを判断することです。

中古車は前の時間を引き継いでいる

新車と中古車の大きな違いは、購入した時点ですでに過去があることです。

前のオーナーがどのように乗っていたのか。

どのくらいの距離でオイルを交換していたのか。

短距離走行が多かったのか。

重い荷物を積んでいたのか。

異常を感じても、そのまま乗っていたのか。

中古車を見ただけで、そのすべてを知ることはできません。

整備記録簿や工場の履歴が残っていても、記録されているのは主に入庫したときの作業です。

その間の使われ方まで、すべて分かるわけではありません。

特に交換時期が曖昧になりやすいのが、ミッションオイルやデフオイルです。

エンジンオイルはガソリンスタンドやカー用品店でも交換されるため、ステッカーや記録が残っていることがあります。

一方、ミッションオイルやデフオイルは、長期間交換されていない車も珍しくありません。

交換履歴が分からないまま、

「まだ大丈夫だろう」

と使い続けるより、一度交換した方が管理しやすくなります。

最初に「自分の車」に戻す

このバモスでは、車検を取得するときにミッションオイル、デフオイル、ブレーキフルードを交換しました。

車検取得後には、エンジンオイルとオイルフィルターも交換しています。

抜いたエンジンオイルはかなり黒くなっていました。

オイルが黒いから、ただちにエンジンが壊れるという意味ではありません。エンジンオイルには内部の汚れを取り込む働きがあるため、使用すれば色は変わります。

ただし、いつ交換されたのか分からないオイルを、そのまま使い続ける理由もありません。

一度交換すれば、次からは自分で管理できます。

交換した日。

そのときの走行距離。

使用したオイル。

抜いたオイルの状態。

漏れや異音の有無。

ここから先は、自分の整備履歴として残せます。

過去の使われ方を変えることはできません。

しかし、購入後の管理は自分で変えられます。

僕が中古車を買ったときに油脂類を交換するのは、車の時間を一度区切るためでもあります。

すべての中古車で全交換が必要とは限らない

購入直後に、あらゆる油脂類を無条件で交換しなければならないわけではありません。

交換直後であることを示す記録があり、使用された油脂や作業内容が確認できるなら、もう一度交換する必要はないでしょう。

車種によっては、使用するオイルの種類や交換方法に注意が必要です。

特にオートマチックトランスミッションやCVTでは、走行距離、内部の状態、過去の交換歴によって、安易な交換が適さない場合もあります。

「中古車だから全部交換」

と決めつけるのではなく、

「交換履歴が確認できないものを洗い出す」

ことが先です。

取扱説明書や整備記録簿を確認し、分からない場合は整備工場へ相談してください。

大切なのは、交換すること自体ではありません。

現在の状態と、次に何をいつ交換するのかを把握することです。

7万円で買っても、7万円だけでは乗れない

このバモスは、その後もさまざまな整備を行いました。

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タイミングベルト。

ウォーターポンプ。

ロアアームボールジョイントブーツ。

タイロッドエンドブーツ。

バッテリー。

アクセルワイヤー。

ドライブシャフトブーツ。

クラッチ。

リヤクランクシール。

シャックルブッシュ。

車両代が7万円だったからといって、7万円だけで約6年間乗れたわけではありません。

古い車は、買ったあとにもお金がかかります。

それでも僕は、このバモスを高い買い物だったとは思っていません。

必要な場所へ手を入れれば、日常の足として普通に使えたからです。

購入時99,927kmだったバモスは、約6年間で約3万km走りました。

最後は故障して動けなくなったのではありません。

家族の車の入れ替えに伴い、別の車へ乗り換えることになったため手放しました。

まだ使える状態で役目を終えたのです。

怖いのは走行距離より「分からないこと」

10万kmという数字だけを見て、

「もう寿命だ」

と考える人もいます。

しかし、10万kmは車の終点ではなく、大きな整備が重なりやすい節目です。

油脂類を交換する。

タイミングベルトを確認する。

ゴム部品の亀裂を見る。

クラッチやブレーキの状態を把握する。

必要な整備を行えば、その先も使える車はあります。

反対に、走行距離が少なくても、整備履歴が分からず、長期間放置されていた車が安心とは限りません。

中古車で怖いのは、単純な走行距離だけではありません。

何を、いつ、どのように整備したのか分からないことです。

中古車を買ったら、まず現在地を確認してください。

交換履歴が分からない油脂類はないか。

次の交換時期が近い部品はないか。

漏れや異音はないか。

その車を安く買えたかどうかは、購入価格だけでは決まりません。

購入後に必要な整備を行い、目的どおり使えたかどうかで決まります。

僕が7万円のバモスで最初に行ったのは、派手な改造でも高価な部品交換でもありませんでした。

油脂類を交換し、「いつ替えたか分からない状態」を終わらせることでした。

古い中古車を長く使うための第一歩は、そこから始まります。

※このバモスを購入してから手放すまでの約6年間の整備記録は、電子書籍『7万円のバモスを整備士が直して乗った話』にまとめています。