EV補助金、空白期間は回避へ。しかし減額は避けられず?普及にブレーキがかかる可能性も

自動車ニュース

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)などの購入を支援する「CEV補助金」について、2027年1月以降も制度を継続する方向で政府が調整していることが分かりました。

今回のポイントは、補助金制度が切り替わる際に発生する可能性があった「空白期間」を、遡及適用によって回避しようとしていることです。

ただし、喜んでばかりもいられません。

2027年1月以降の暫定的な補助額は、現在の6〜8割程度に減額される見通しだからです。

ようやく日本国内でも販売に勢いが出てきたEVですが、補助額が減ることで、購入を検討しているユーザーの判断にも影響が出そうです。

EV補助金の空白期間を遡及適用で埋める

現在のCEV補助金は、2026年12月中に終了する見通しとなっています。

問題になるのが、2027年1月から新年度の補助金制度が始まるまでの期間です。

仮に、この間に補助金が一切支給されないことになれば、EVを購入しようとしていたユーザーが購入を先送りする可能性があります。

そこで政府は、新しい予算が成立する前に登録された車両についても、後から補助金を適用する仕組みを検討しています。

これが遡及適用です。

こうした措置は今回が初めてではありません。

2009年のエコカー補助金でも、申請受付開始より前の新規登録車を補助対象にする仕組みが導入されました。

自動車の販売は、補助金や減税制度に大きく左右されます。

特に年度末の販売商戦を控えた時期に補助金が途切れてしまえば、販売店だけでなく自動車メーカーの生産計画にも影響するでしょう。

今回の遡及適用は、そうした混乱を防ぐ意味では評価できると思います。

ただし、現時点では調整段階であり、正式な制度内容や交付条件は今後の発表を確認する必要があります。

トヨタbZ4Xは補助金が130万円から78万円に?

今回の報道で気になるのが、補助額の減額です。

例えば、トヨタのEV「bZ4X」。

現在は130万円のCEV補助金が設定されています。

仮に車両価格480万円のモデルで考えると、補助金適用後の車両価格は350万円です。

これなら、同程度の車格を持つハイブリッドSUVと比較しても、購入価格で十分な競争力があります。

ところが、補助額が78万円に減額された場合、実質的な車両価格は402万円になります。

つまり、同じクルマなのに補助金の変更だけで52万円もの差が生まれるわけです。

比較現行減額後の試算
車両価格480万円480万円
CEV補助金130万円78万円
差引価格350万円402万円

※補助額78万円は報道に基づく想定であり、正式決定額ではありません。諸費用や自治体補助金は含みません。

購入時期が少し違うだけで50万円以上も負担が変わるとなれば、ユーザーが迷うのも当然でしょう。

EVの普及を後押しするはずの補助金が、逆に買い控えの原因になってしまう可能性があります。

ホンダSuper-ONEの補助金は、さすがに大きすぎないか?

そして、僕が以前から気になっているのが、EV補助金の公平性です。

例えばホンダの小型EV「Super-ONE」。

車両価格は339万200円で、現在の国のCEV補助金は130万円です。

補助金を差し引くと209万200円になります。

さらに東京都の場合、条件によっては自治体の補助金も加わります。

ホンダが紹介している一例では、国と東京都の補助金を合わせて220万円となり、補助金適用後の参考価格は119万200円です。

もちろん、補助金の適用には地域や登録日、申請条件などの制約があります。

それでも、339万円のEVに対して220万円もの補助金が適用されるケースがあるというのは、なかなか衝撃的です。

個人的には、ここまで来ると価格設定がバグっているようにも感じます。

Super-ONE自体が悪いクルマだと言いたいわけではありません。

むしろ、小型EVという新しい選択肢が増えることは歓迎しています。

ただ、補助金によって実質価格がここまで大きく変わる仕組みは、本当に公平なのだろうかと考えてしまいます。

BYDなど輸入EVとの補助額にも大きな差

一方で、BYDの一部車種に適用される補助金は15万円にとどまっています。

今回の減額方針では、これまで大きな補助金を受けていた車種ほど影響が大きくなる可能性があります。

そのため、結果的にメーカー間の価格差が縮まるケースも出てくるでしょう。

もちろん、補助金の評価には車両性能だけでなく、充電インフラへの取り組みやメーカーの活動など、さまざまな要素が含まれています。

単純に車両価格に比例させればよいという話でもありません。

しかし、消費者から見ると、なぜ同じEVなのにこれほど補助額が違うのか、分かりにくい部分があるのも事実です。

EVの普及を目的とするのであれば、車両価格、電費、バッテリー性能、環境負荷、充電インフラへの貢献などを適切に評価し、納得できる基準にする必要があると思います。

補助金が頻繁に変わると販売現場も困る

僕は自動車整備業界で長く働いてきましたが、クルマを購入するお客さんにとって、数十万円の違いは決して小さくありません。

特にEVの場合は、車両価格に加えて自宅の充電設備や電気契約、使用環境まで考える必要があります。

そこに補助金の変更が重なれば、購入判断はさらに難しくなります。

販売店にしても、現行制度では130万円の補助金が出ると説明していたものが、数カ月後には78万円になるかもしれない。

しかも、その次の2027年度の正式制度では、再び金額や評価基準が変わる可能性があります。

これでは販売戦略を立てる側も大変でしょう。

補助金の予算には限りがあるため、金額の見直し自体は仕方がないことだと思います。

ただ、少なくとも数年先までの方向性を示し、段階的に変更していくなど、購入者が安心して計画を立てられる制度にしてほしいところです。

EV普及に必要なのは、補助金だけではない

僕はEVの普及そのものには期待しています。

モーターならではの走行性能や静粛性、エネルギー効率など、EVにはガソリン車とは異なる魅力があります。

一方で、地方では充電インフラや航続距離、冬場の使い勝手など、まだまだ気になる点もあります。

EVを本当に普及させたいのであれば、購入時の補助金だけでなく、充電環境の整備や車両価格そのものの低下も重要でしょう。

大きな補助金がなければ購入しにくいという状況が続けば、制度が縮小されたときに販売が急減する恐れもあります。

補助金によってEVを一時的に安くすることと、EVそのものを買いやすいクルマに育てることは、必ずしも同じではありません。

補助金の継続は歓迎。ただし公平性と安定性を

今回、CEV補助金の空白期間が遡及適用によって回避される方向になったことは、購入者にとっても自動車業界にとっても良いニュースだと思います。

一方で、2027年1月以降の補助額が現行の6〜8割になるのであれば、車種によっては購入負担が数十万円増えることになります。

EVの普及にブレーキがかかる可能性も否定できません。

そして僕がもう一つ重要だと思うのは、補助金の公平性です。

Super-ONEのように、条件次第では車両価格の大部分が補助金でカバーされるケースもあります。

一方で、同じEVでも補助額が非常に少ない車種も存在します。

これからの制度では、なぜその車種にその金額が支給されるのか、ユーザーが納得できる仕組みにしてほしいと思います。

EVを普及させるための補助金が、購入時期や車種によって大きな不公平感を生む制度になってしまっては本末転倒です。

補助金の金額だけを増減させるのではなく、長期的な安定性と公平性を両立させる制度への見直しを期待したいところです。

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