なぜ大型トラックのタイヤは左後輪ばかり外れる?年間128件の脱落事故とISO規格への疑問

大型トラックのタイヤ脱落事故が、また増加しています。

国土交通省が2026年10月1日に公表した資料によると、2025年度に発生した大型車の車輪脱落事故は128件。前年度の120件から8件増えました。

しかも、事故の発生状況を見ると、非常に気になる数字があります。

  • 9割以上が左後輪で発生
  • 5割以上がタイヤ脱着後1か月以内
  • 約5割が11月から1月に集中

つまり、冬タイヤへ交換したあと、比較的短期間で左後輪が脱落する事故が多いということです。

僕は2022年にも、この問題について記事を書きました。

当時から疑問に思っていたのは、大型トラックのホイール取り付け方式がJIS方式からISO方式へ変更されたことです。

あれから4年以上が経過しましたが、今でも年間128件もの事故が発生している。

本当に現場の作業方法や点検だけの問題なのでしょうか?

JIS方式からISO方式へ。大型トラックのホイールは何が変わった?

かつて日本の大型トラックでは、JIS方式と呼ばれるホイールの締結方式が広く使われていました。

この方式には特徴があります。

右側のタイヤには右ねじ、左側のタイヤには左ねじを使っていたことです。

つまり、左右でナットを締める方向が違っていたわけです。

さらに、ダブルタイヤの場合はインナーナットとアウターナットを使い、それぞれを固定する構造でした。

一方、日本では2009年から2010年にかけて、国際的に使用されているISO方式が採用され始めました。

ISO方式は左右とも右ねじです。

また、ダブルタイヤを1つのホイールナットで共締めする構造になっています。

JIS方式が球面座を使っていたのに対して、ISO方式は平面座を使用します。ホイールの位置決めもハブとの適合が重要になります。

ISO方式は構造がシンプルで、タイヤの脱着や増し締めが容易になるメリットがあります。

ただし、ここで気になることがあります。

それは、なぜ脱落事故が左後輪に集中するのかということです。

車が前進するとき、左右の車輪は車体の外側から見ると逆方向に回転しています。

かつてのJIS方式では、その左右差を踏まえ、左側に左ねじが採用されていました。

ISO方式では左右とも右ねじになっています。

もっとも、車輪の回転方向とナットの締付方向が逆だからといって、それだけでナットが緩むと断定できるわけではありません。

正常なホイールは、適切な軸力によって固定されているからです。

しかし、何らかの原因で締付力が低下したときに、回転方向や走行時の荷重がどのように影響するのか。

僕は、この点についてもっと検証する必要があると思っています。

日本は左側通行で、左折時には左後輪が内輪側になります。

こうした走行環境も含め、なぜ左後輪にこれほど事故が集中するのか、構造面からの検証を続けてほしいところです。

トルクレンチで締めても安心できない理由

大型トラックのタイヤ交換で重要なのが、ホイールナットの締付トルクです。

ただし、トルクレンチで規定値まで締めたからといって、必ず適切な締結力が得られるとは限りません。

ここが非常に重要です。

例えば、ホイールの取り付け面やハブに錆が残っていた場合です。

錆や異物が挟まった状態で締め付けると、走行中にそれらがつぶれたり、なじんだりすることで、締付力が低下する可能性があります。

また、ホイールナットやボルトの状態も重要です。

適切な潤滑がされていなかったり、ワッシャーの動きが悪かったりすると、規定トルクで締めても必要な軸力が得られない場合があります。

国土交通省の調査でも、潤滑不良によって締付けを繰り返すと軸力が低下することが実証されています。

つまり、トルクレンチだけが正しければいいわけではないんです。

錆を除去し、指定された箇所に適切な潤滑を行い、ホイールとハブ、ボルトやナットの状態を確認する。

これらの作業が欠かせません。

そして、タイヤ交換後50~100km走行した段階を目安に、指定方法による増し締めを実施することも重要です。

ISO方式ではダブルタイヤを1つのナットで共締めしているため、締結力が失われれば内外両輪が脱落する危険があります。

だからこそ、点検と管理が重要になります。

国交省は現場への注意喚起だけでいいのか?

今回、国土交通省は2026年10月から翌年2月まで、大型車の車輪脱落事故防止キャンペーンを実施すると発表しています。

対策の中心は、適切なタイヤ脱着作業、錆の除去、潤滑、増し締め、日常点検の徹底です。

もちろん、これらは必要な対策です。

僕も整備士として働いてきたので、作業の基本を守ることがどれほど重要かは理解しています。

しかし、ここで一つ疑問があります。

なぜ、これだけ長い間注意喚起が続いているのに、事故がなくならないのでしょうか?

ISO方式が普及したことと事故件数の変化には、調査する価値があると思います。

ただし、事故の増加をISO方式だけの責任と決めつけることはできません。車両の使用年数、タイヤ交換作業、部品の劣化、点検状況など、複数の要因が関係するためです。

実際に国交省の調査では、錆の除去不足、潤滑不良、締付不足、増し締めの未実施なども確認されています。

それでも、事故の9割以上が左後輪という数字は、無視できないと思います。

単純に整備士やドライバーへ注意を呼びかけるだけでなく、構造そのものの安全性や、作業ミスが起きても重大事故につながりにくい仕組みについても、継続的に検討すべきではないでしょうか。

国交省も車輪脱落予兆検知装置の普及を進めていますが、僕はこうした技術的な対策がもっと広がってほしいと思います。

長野県でも、これから冬タイヤへの交換が本格化します。

トラックのタイヤは非常に重く、走行中に脱落すれば人命に関わる重大事故につながります。

「きちんと締めたつもり」ではなく、「適切な締結力が維持されているか」まで確認すること。

そして現場だけに責任を求めるのではなく、構造面の検証や安全技術の導入も進めること。

年間128件という数字を、毎年繰り返されるニュースで終わらせてはいけないと思います。

出典:国土交通省「大型車の車輪脱落事故防止キャンペーン」(2026年10月1日)

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