車検は、満了日の直前に受ければいい。

そう考えている人は少なくありません。
自家用車なら、整備工場へ預けるのが多少遅くなっても、代車を借りればなんとかなるかもしれません。
しかし、現場で使う車は事情が違います。
トラック、ダンプ、ローリー、冷凍車、福祉車両などは、単なる移動手段ではありません。その車自体が仕事をするための道具です。
一日使えないだけでも、仕事の予定が崩れます。
だからこそ、毎日現場で使う車には「2か月前車検」をうまく利用してほしいと思います。
目次
車検は満了日の2か月前から受けられる
2025年4月1日から、車検を受けられる期間が従来の「満了日の1か月前」から「2か月前」へ拡大されました。

満了日の2か月前から満了日までに車検を受ければ、次回の車検有効期間が短くなることもありません。
例えば7月31日が車検満了日なら、5月31日から車検を受けられます。
国土交通省も、余裕を持って車検を受けるよう案内しています。
参考:国土交通省 近畿運輸局「令和7年4月より、車検を受けられる期間が延びます」
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/press/00001_03236.html
この変更は、年度末などに車検が集中するのを避けることが主な目的です。
しかし整備の現場から見ると、もう一つ大きなメリットがあります。
それは、部品がすぐに入荷しない車への対応です。
5月に預かったボンゴローリー
以前、マツダのボンゴをベースにしたローリーを車検で預かったことがあります。

燃料などを運ぶために使われる、仕事用の車です。
当然ですが、会社としては一日でも長く使いたい車です。
車検だからといって、何週間も整備工場へ置いておくわけにはいきません。
このボンゴローリーは、車検満了日の約2か月前となる5月に入庫しました。
点検してみると、トーションバーやアッパーアーム周辺にガタつきが見つかりました。
年式や車の状態を考えると、一部だけを直して終わらせるよりも、アーム単位で交換した方が確実だと判断しました。
そこで部品を注文したのですが、返ってきた納期を聞いて驚きました。
「バックオーダーで、入荷は7月中旬になります」
5月に注文した部品が、届くのは7月中旬。

約2か月待ちです。
もし車検満了日の直前に預かっていたら、その車はどうなっていたでしょうか。
部品が届くまで車検を通せません。
車検が切れれば、公道を走ることもできません。
仕事に必要なローリーを長期間使えなくなり、会社の業務そのものに影響が出ていた可能性があります。
早く預かったから、一度返すことができた
この車は2か月前に早めの入庫をしていたため、車の状態を確認して必要な部品を先に注文できました。

部品はすぐに届かない。
しかし、その時点ではまだ車検の有効期間が残っています。

そこで一度車を会社へ返し、車検満了日が近づくまで現場で使ってもらうことにしました。
そして部品が入荷する時期に合わせて再入庫してもらい、修理と車検を実施しました。
結果として、現場でローリーを使えない日数を最小限に抑えられました。

早めに入庫したからといって、必ずその日から車を預かり続けなければならないわけではありません。
点検して、必要な部品がすぐにそろうなら、そのまま車検を進める。
部品が1週間後、1か月後、あるいは2か月後になるなら、一度返して使ってもらう。
この選択肢を持てることが、現場で使う車にとって非常に大きいのです。
古い車ほど部品がすぐに来るとは限らない
最近は、注文した部品が翌日に届くとは限りません。

特に年式が古い車、販売台数が少ない車、特殊な架装が施された車では、部品の供給が怪しくなってきます。
メーカー在庫がなく、バックオーダーになる。
生産予定が決まっていない。
国内に在庫がなく、納期の回答すらすぐに出ない。
場合によっては、すでに部品の供給が終了していることもあります。
昔なら「壊れた部品を交換すれば直る」で済んだ車でも、今はその交換部品を手に入れられるかどうかが問題になります。
さらに古い現場車では、車体の錆も大きなネックです。
足回りの部品を外そうとしても、ボルトやナットが錆びて緩まない。
フレームや取付部分の腐食が進み、部品を交換するだけでは済まない。
錆びたボルトが折れれば、通常より作業時間がかかります。
溶接修理や追加部品が必要になれば、当初の予定より入庫期間が延びることもあります。
これは整備士の作業が遅いからではありません。
車を分解して初めて分かる状態や、古い車特有の事情があるのです。
車検満了日ギリギリでは、こうした問題が見つかったときに逃げ道がありません。
車検は予約日だけ決めれば終わりではない
仕事で使う車の車検では、単に整備工場の予約を取るだけでは不十分です。

大切なのは、次の点を事前に考えることです。
・その車が一日止まると、仕事にどの程度影響するか
・代わりに使える車があるか
・年式が古く、部品の供給に不安がないか
・過去に足回りや錆を指摘されていないか
・特殊な架装があり、一般的な代車では代用できないか
該当する項目が多い車ほど、満了日の2か月前に一度点検してもらうメリットがあります。
もちろん、整備工場によって受け入れ方法は異なります。
2か月前に一度点検だけ行い、部品を手配してから改めて入庫できるか。
部品がすぐにそろった場合、そのまま車検を進められるか。
予約を取る際に相談しておくと安心です。
早く預ける目的は「長く預けること」ではない
2か月前車検と聞くと、
「2か月も前から車を預けたくない」
と思う人もいるかもしれません。
しかし目的は、車を長期間預けることではありません。
むしろ逆です。
早めに状態を確認して部品を確保し、実際に車を使えない期間を短くするための方法です。
今回のボンゴローリーも、満了日直前に初めて点検していたら、部品が届くまで動かせなくなるところでした。
2か月前に受け入れたことで、問題を先に発見し、部品を待つ間も現場で使ってもらえました。
車検は「期限までに通せばいい手続き」と思われがちです。
しかし、毎日仕事で使う車にとっては、仕事を止めないためのスケジュール管理でもあります。
古い車ほど部品の納期は読みにくく、錆や追加整備のリスクも高くなります。
本当は一日だって空けたくない車だからこそ、満了日ギリギリまで何もしないのではなく、2か月前から動き始める。
急がば回れという言葉がありますが、現場車の車検では「早く預けることが、預ける日数を短くする」こともあるのです。
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整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。
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ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。