まだ直していないのにお金がかかる?整備工場が「診断料」を請求する本当の理由

車の調子が悪くなり、整備工場へ持ち込んだ。

整備士が診断機を車につなぎ、しばらく点検したものの、その日は修理しなかった。

ところが、請求書を見ると「診断料」や「テスター使用料」として3,000円ほど計上されていた。

「まだ何も直していないのに、どうしてお金がかかるの?」

こう思う人もいるかもしれません。

しかし、現在の車では「故障の原因を調べること」自体が、一つの作業になっています。

診断機をつないで故障コードを読み取るだけでも、整備工場には設備費、更新費、整備士の作業時間などが発生しています。

今回は、自動車整備士、検査員、サービスフロントとして約25年間働いてきた経験から、整備工場が診断料を請求する理由を説明します。

故障コードを読むだけでも無料ではない

現在の車には、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、エアバッグ、電動パワーステアリングなどを制御するコンピューターが数多く搭載されています。

警告灯が点灯したとき、整備士は車両へ故障診断機を接続し、各コンピューターが記録している故障コードを確認します。

この作業を一般的に「テスターを当てる」と呼ぶことがあります。

僕が整備業界で働いてきた感覚では、診断機を接続して故障コードを確認した場合、3,000円程度から診断料を設定している整備工場が多いです。

ただし、全国共通の料金ではありません。

輸入車や特殊な故障、診断に長時間かかる場合は、もっと高くなることもあります。

反対に、そのまま修理を依頼すれば診断料を修理工賃に含める工場もあります。

診断機は非常に高価

お客さんから見ると、整備士が小さな端末を車につないで、画面を確認しているだけに見えるかもしれません。

しかし、自動車用の故障診断機は決して安い機械ではありません。

複数メーカーに対応する汎用診断機でも、本格的なものは高額です。

メーカー専用の診断機や、車両メーカーが指定する環境をそろえなければできない作業もあります。

例えば、単に故障コードを読み取るだけではなく、

・センサーの数値をリアルタイムで確認する
・アクチュエーターを診断機から強制的に作動させる
・電子制御部品を交換したあとに初期設定する
・新しいコンピューターへ車両情報を書き込む
・ブレーキやステアリングの学習値をリセットする
・新しいキーを車両へ登録する

といった作業です。

部品を物理的に交換できたとしても、最後に診断機で登録や学習をしなければ、正常に動かない車も増えています。

つまり現在の整備では、工具だけでなく診断機も必要不可欠な設備になっているのです。

購入したら終わりではない

診断機の大変なところは、本体を一度購入すれば永久に使えるわけではないことです。

毎年のように新型車が発売され、新しい制御システムやコンピューターが登場します。

古い診断機のデータには、新しく発売された車種の情報が入っていません。

そのため整備工場は、診断機のソフトウェアや車種データを定期的に更新する必要があります。

このバージョンアップにも費用がかかります。

月額や年額で契約するものもあれば、更新のたびに費用が発生するものもあります。

更新を止めれば古い車には使えても、新しい車へ対応できなくなる可能性があります。

幅広い年式やメーカーの車を受け入れる整備工場ほど、診断環境を維持する負担は大きくなります。

数年後には診断機自体を買い替えることもある

さらに厳しいのが、診断機そのものの買い替えです。

車側の通信方式やセキュリティーが変化すると、ソフトウェアの更新だけでは対応できない場合があります。

本体の処理能力や接続端子が古くなり、新しい車両へ対応できなくなることもあります。

高いお金を出して購入し、毎年更新費用を払い、それでも数年後には新しい診断機へ買い替えなければならない。

これが現在の整備工場が抱えている設備投資の一つです。

こうした費用をすべて整備工場が負担し、診断作業を無料で続けていたら、経営が成り立たなくなってしまいます。

故障コードを読んでも原因が確定するとは限らない

ここで誤解されやすいのが、診断機をつなげば壊れている部品がすぐに表示されるという考え方です。

診断機に表示されるのは、基本的にはコンピューターが検知した異常です。

例えば、「酸素センサー系統異常」という故障コードが表示されても、酸素センサー本体が壊れているとは限りません。

配線の断線や接触不良、電源の異常、排気漏れ、別のセンサーの不具合などが影響している可能性もあります。

故障コードは、原因を絞り込むための入口です。

そこから整備士は、

・現在故障なのか過去故障なのか
・故障コードを消しても再入力されるか
・センサーの数値に異常があるか
・電源やアースが正常か
・配線に断線やショートがないか
・同じ車種に特有の故障事例がないか

などを調べます。

診断機が答えを教えてくれるのではありません。

診断機から得た情報をもとに、整備士が原因を考えて確認する必要があります。

「診断機をつないだだけ」に見えても、実際にはその先に経験や知識が必要なのです。

原因が分からなくても作業時間は発生している

故障診断では、必ず短時間で原因が判明するとは限りません。

症状が出たり出なかったりする故障は、特に時間がかかります。

お客さんが乗っているときには警告灯が点灯したのに、整備工場へ入庫すると正常に戻っていることもあります。

症状を再現するために何度も試運転したり、車を一晩預かったりする場合もあります。

配線図を確認し、内装を取り外し、一本ずつ電圧や導通を測定することもあります。

最終的に「今回は症状を確認できなかった」という結果になったとしても、それまでに整備士は時間を使っています。

故障箇所が分からなかったから何もしていない、ということではありません。

医療機関で検査を受け、病気が見つからなかった場合でも検査費用がかかるのと似ています。

修理しなくても、異常の有無を調べるための設備と作業は使われています。

無料診断だけを別の店へ持っていく問題

整備工場側が困るのは、無料で故障診断だけを依頼され、その結果を持って別の店やインターネットで部品を購入されるケースです。

整備工場が時間をかけて原因を突き止めても、修理を依頼されなければ売り上げにはつながりません。

もちろん、見積もりを確認してから修理するか判断することは当然です。

高額修理なら、ほかの工場から意見を聞くことも悪いことではありません。

しかし、原因を調べる作業そのものには価値があります。

診断結果だけを無料でもらえるサービスだと考えてしまうと、整備工場は高価な診断設備を維持できなくなります。

今後は診断料を請求する工場が増える

車の電子制御化は、今後さらに進みます。

電気自動車、ハイブリッド車、先進運転支援システム、電子制御ブレーキなど、診断機がなければ触れない部分は増え続けています。

メーカー専用のシステムへ接続しなければできない作業や、オンライン認証が必要な作業もあります。

そのため、これまで「サービス」で行われていた簡単な診断でも、今後は有料になる可能性があります。

診断料を取る工場が不親切なのではありません。

高価な機材を購入し、更新を続け、整備士が知識と時間を使って原因を調べるために必要な料金です。

預ける前に料金の範囲を確認する

診断料をめぐるトラブルを防ぐには、車を預ける前に料金を確認することが大切です。

「診断機をつなぐだけでいくらですか?」

「原因を詳しく調べる場合、診断料はいくらまでかかりますか?」

「そのまま修理を依頼した場合、診断料は工賃に含まれますか?」

この3点を聞いておくと安心です。

原因が簡単に分かる故障もあれば、何時間調べても分からない故障もあります。

そのため、「まず5,000円分まで診断してください」「追加費用がかかる前に連絡してください」と上限を決めておく方法もあります。

整備工場側も、お客さんの了承なしに際限なく診断を続けるべきではありません。

どこまで調べるのか、費用はいくらなのかを、双方で確認しておく必要があります。

診断料は「直した料金」ではなく「原因を探した料金」

部品を交換していないのに診断料が請求されると、損をしたように感じるかもしれません。

しかし、診断料は車を直した料金ではありません。

高価な診断機を使い、整備士が知識と時間を使って、故障の原因を探した料金です。

診断機は購入費だけでなく、バージョンアップや買い替えにも費用がかかります。

そして、故障コードを読み取っただけでは原因が分からず、その先の点検が必要になる車も少なくありません。

テスターを接続した場合、まず3,000円程度から。

さらに詳しい診断が必要なら、作業時間に応じて料金が加算される。

これからの車では、こうした料金体系が当たり前になっていくと思います。

診断料が高いか安いかだけで判断するのではなく、どこまで調べて、何が分かったのかを説明してくれる整備工場を選ぶことが重要です。

故障コードを読んで、消去するだけなら汎用診断機を自分で買うのも一つの手です。

僕もプライベートように一台買いました。

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