ギヤが入らない原因はヒューマンエラー?思わぬ原因でシフトが効かなくなった車

お客さんから一本の電話が入りました。

「ギヤが入らなくなったから助けてくれ!」

何の車かと問診を続けていくと、スバルのサンバーだといいます。どのようにギヤが入らないのか聞いてみたら、ローとセカンドにははいるけど、それ以外は入らなくなったとのこと。

とりあえずある程度の装備をして車両を出張で見に行きました。

ギヤが入らなくなる原因はいろいろ考えられます。

例えばクラッチが切れなくなっても、ギヤがはいりません。

クラッチのトラブルやクラッチワイヤー切れなど。

もちろんミッション内部が駄目になっていても、ギヤは入りません。2回ほどミッションが壊れた車に遭遇しましたが、セカンドがまったく入りませんでした。2速のシンクロがもとより、ギヤもダメになっていたんだと思います。

FRの場合、デフがぶっ壊れると走れなくなります。ミッションがぶっ壊れたとしても、多段なので、どこかで生きてるギヤがあればそのギヤで走ることが可能なんです。

このサンバーの場合、1速と2速だけは入るというので何が起きているのか?

シフトレバーに違和感が

現車を確認すると、一発で違和感の原因がわかりました。

シフトレバーが変なんです。Hパターンのシフトポジションながら、左右にセレクトしようとしても手ごたえがスカスカ。

上下にシフトすると手ごたえはきちんとありました。

ここまでシフトがすかすかになるということは、本体というよりはワイヤー側に問題があると思い、エンジンフードをはぐってみると。

ワイヤーを固定しているピンがなくなっていたんです。

サンバーの場合、シフトレバーの左右の動きはセレクトワイヤー。上下の動きはシフトワイヤーの2本で運転席からミッションをつないでいます。

セレクトワイヤーを固定しているピンが飛んでいました。

ただ、このピンってくさびのようになっていて普通は抜ける構造じゃありません。とりあえず動かす目途がついたので会社に戻ってピンを注文。

車はしばらく使わないという事なので、ピンが入荷してから預かることに。

ピンが飛んだ原因がまさかの・・・・

セレクトワイヤーの固定ピンが入荷したので、取り付けて車両をあずかりました。

ピンをつければ、その時点できちんと症状は改善されます。

でも気になったのは何故このくさびが抜けたのか?という疑問です。この車両はうちの会社で修理をし始めたのは歴史が浅く、オイル交換やタイヤ交換くらいしかしていません。

何か原因があるんじゃないかと、記録簿をめくっていってみると、発見しました。

やはり数年前にクラッチをOHしている。その際に、ワイヤーを外している可能性があります。修理した時に、くさびの打ち込みが甘かった可能性もぬぐえません。

一応、クラッチをOHしたときに脱着したであろう箇所を点検すると・・・。

まさかの原因の大元を発見しました。

ミッションケースが割れているのがわかりますね?

ここ、ミッションマウントをミッションに結合するブラケットです。

このネジは4本でミッションにネジ山が切ってあります。ミッションはアルミ製です。

この部位ってクラッチをOHするときでもミッションを脱着する時でも、切り離す必要があります。4本のネジは位置合わせが少しでもズレると、ミッションケースのネジ山に負担がかかります。

おそらく作業をした時に無理やりネジを回したのか、締め忘れたのか?

ネジは4本全てなくなっていました。つまりミッションを固定するフロント部分のマウントが機能してなかったので、発進時にミッションが大きく振動します。それがもとでセレクトワイヤーのくさびが飛んだんでしょう。

なにはともあれ原因が分かったので、最大限のリカバリーを施しておきました。ネジ山をワンサイズ大きいタップで立て直し、ワイヤーのくさびは抜けないように細工をしておきました。

心の中で誰がやったんだこれーと激怒しておきました。見知らぬ整備士よ!あなたの失敗はリカバリーしておきました。

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