エンジンオイルの劣化が原因で車両火災になるということ

ちょっと古い 資料なんですが、興味深いものがあったので紹介。それは、エンジンオイルの劣化が原因で車両火災になるというものです。ソースは国土交通省の調査です。

結果を先に書くと、オイル交換を怠っていると車両火災になる可能性があるということ。

オイル交換をしないだけで、車が燃えてしまう。順を追って説明します。

エンジンオイルって、車のメンテナンスでいうと基本中の基本。免許を取り立てのドライバーであっても、車はオイル交換をしないといけない。という情報を教習所から教わってきます。

しかし、普段車に乗っていなかったり、無頓着だったりすると、オイル交換の重要性は忘れていってしまう。教習所でタイヤチェーンの巻き方を習ったとしても、ずっと使わないスキルだと、いざっていう時に巻けなくなるのと同じような感覚ですかね。

オイルの役割って「潤滑」「冷却」「密封」「清浄・分散」「防錆」など車に使われているオイルは大きくこの5つを求められています。

潤滑はエンジン内部の各部品を潤滑する。冷却はエンジンは高回転で使われるのでその熱を吸収し外部へ放出させています。密封はオイルの粘度によって、圧縮圧力や燃焼ガスなどが漏れないように隙間を埋める。清浄・分散はエンジンを使い続けることによるカーボンやスラッジの汚れを洗い落とす。防錆はエンジン内部が錆びないようにする。

車両火災に繋がるのは、主に潤滑の性能です。

エンジンって、1分間にそれこそ何千回転もクランクシャフトが回転しています。これって相当なエネルギーです。エンジンオイルが劣化してしまうと潤滑がうまく行われなくなる。

すると熱を持つようになる。これが焼きつきからエンジンブロー、さらには車両火災へとつながります。

オイル交換を怠ると、エンジン内部にスラッジと言われる黒い煤のようなゴミが堆積してきます。

写真のエンジンはおよそ2万キロオイル交換をしなかった車。シリンダーヘッドカバーを開けただけでもこの有様です。

このスラッジが、オイルパンの底にもたまっている。このスラッジがやばい。

国土交通省の調査によると、意図的にオイルパンの中にあるオイルストレーナーの入り口を16分の1まで覆った状態でテストした。

写真中央にある網の部分がオイルストレーナーです。オイルパンに溜まったおいるをこのストレーナーから吸い出して各部へ行き届けている。

これを意図的に16分の1まで塞いだ状態で実験をした。

実験結果は時速20kmで低速走行をしていると、およそ9分を経過した段階でエンジン上部から煙がでて、エンジンが破損。そこから発火して自然消火したということ。

何故エンジンに火がついたか?これは潤滑不足によって、内部の温度が高くなり焼きつきを起こしてしまった。焼きついた結果、ピストンを支えているコンロッドが折れてしまい、エンジンからコンロッドが外へ飛び出した。

破損したエンジンからオイルが吹き出し、エキゾーストに付着して燃えた。このような流れになります。

意図的にオイルストレーナーを塞がなくても、オイル交換を怠っていくうちにスラッジがストレーナーを塞いでいきます。それこそ16分の1という状態近くまで詰まることもあります。

一度経験したことがありますが、オイルの量は入ってるだけど油圧の警告灯が点灯する車がありました。オイルパンを剥がすとものすごいスラッジ。オイルをストレーナーからうまく吸えなくて、油圧が上がらなかった。

これらを防ぐには、オイル交換をきちんとしたスパンで行わなければいけない。基本に立ち返る必要があるわけですね。

特に近年のハイブリッド車やアイドリングストップ車。これらの車両はエンジンが止まったりかかったりを繰り返して、オイル自体も十分温まらない。以外と普通に使われてるガソリンエンジンよりもオイルの状況は過酷なんです。

オイルの劣化は走行距離もさることながら、一度熱を入れてしまえば酸化が始まります。例えばオイル交換をして、100km程度走行した。その後1年間全く車を使わなかったとしても、オイル交換をしないといけない時期になります。

これは、オイルが酸化して性能を維持できなくなっているから。一度熱を加えたオイルは時間とともに劣化も始まっている。これがなかなかユーザーに浸透しない情報です。

オイルの劣化を汚れだけで判断するのは簡単です。時間経過の劣化を見抜くには熟練した人間じゃないと難しい。それこそ匂いだったり艶だったり総合的にみないとわからない。

いつも入庫してくれる車両なら、メンテナンス歴を照会できるからわかりやすいですけど。一見さんの場合はオーナーに話を聞いて委ねるしかないところもあります。

エンジンが温まらないうちに、切ってしまう短距離走行を繰り返すのもよくないです。エンジンは完全暖気で各部の隙間であるクリアランスが規定になります。

エンジンが冷たいうちは、クリアランスが広いので混合気がシリンダーへ流れ落ちる割合が高くなります。するとガソリンでオイルが希釈されてどんどんと性能が劣化する。

短距離しか走らない場合は、シビアコンディションといわれ、通常よりもオイル交換の時期と距離を半分くらいに考えないといけません。

オイル交換をしないと車両火災になる。ちょっと考えればわかることなんですが、オイルの重要性っていうのは今一度考えないといけないと思います。

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コメント

  1. むきんぽ より:

    いやぁ、時々目にする、交換を怠ったエンジンオイルのせいで溜まったスラッジ。
    いつもながら、痛々しくて見ていられない・・・
    でも、恐いモノ見たさで薄目で見てしまう・・・

  2. 愛知の事務員 より:

    業務用者は前交換は「適当」だったんですが、方針が変わり点検は3か月ごと・オイル交換は3か月ごと(距離関係なく)・オイルフィルター6か月ごと(距離関係なく)になりました。リース車両ではありません。

  3. MHO より:

    ここ最近はずいぶんと減ってきましたね。こういう車。昔はもっとたくさんいましたよ。

  4. MHO より:

    そこまで細かく整備すると事業用貨物なみですね。リースでなくそこまで徹底されるのはすごいと思います。