「鹿とぶつかってしまいました」
整備工場で仕事をしていると、そんな連絡が入ることがあります。
山道を走っていて突然、道路脇から鹿が飛び出してくる。
ブレーキを踏んでも間に合わない。
そして、
「ドンッ!」
車は大きく損傷してしまいます。
先日、北海道で走行中の車にクマが飛び出し、新車が大破したというニュースがありました。
ニュースを見ていて、僕は以前、実際に鹿と衝突したお客さんのことを思い出しました。
その話を以前Xに投稿したところ、かなり大きな反響がありました。
そこで今回は、整備士として実際に見てきた「動物との衝突事故」と、気になる車両保険について書いてみます。
そのお客さんの車は、走行中に鹿と衝突してしまったものでした。
鹿は突然飛び出してきます。
「鹿が見えたからブレーキを踏めばいい」
そんな簡単な話ではありません。
道路を走っていて、突然目の前に大きな動物が出てくる。
気付いたときには、もう避けられない距離になっていることもあります。
実際、車のフロント部分はかなりのダメージを受けていました。
バンパーが壊れる。
ライトが壊れる。
ボンネットが変形する。
そして、最近の車ではさらに厄介な問題があります。
昔の車なら、
「バンパーが壊れたから交換して終わり」
というケースもありました。
ところが最近の車は、そう簡単にはいきません。
フロント部分には、さまざまな部品が取り付けられています。
例えば、
・ヘッドライト
・ラジエーター
・エアコンのコンデンサー
・各種センサー
・カメラ
・レーダー関連部品
・バンパー内部の部品
などです。
外から見ると「バンパーがへこんだだけ」に見えても、内部まで確認すると複数の部品が壊れていることがあります。
さらに、衝突した後に車を元通り走れる状態にするだけでは終わりません。
最近の車には衝突被害軽減ブレーキなどの運転支援システムが搭載されています。
部品を交換したら、必要に応じてカメラやレーダーなどの調整も必要になります。
そのため、
「ちょっとぶつかっただけなのに、修理見積もりを見たらびっくりする」
ということも珍しくありません。
鹿とぶつかった。
クマとぶつかった。
イノシシとぶつかった。
では、こうした事故で車両保険は使えるのでしょうか?
ここは自動車保険の契約内容によって変わるので、一概には言えません。
ただ、今回のような事故を経験すると、
「車両保険って、こういうときのためにあるんだな」
と感じることがあります。
実際、僕が見た鹿との衝突事故でも、お客さんは車両保険を使って修理することになりました。
お客さんにとっては突然の事故です。
鹿にぶつかろうと思って運転している人なんていません。
それでも、修理にはまとまったお金が必要になります。
もし車両保険に入っていなかったら、その修理費を自分で負担しなければならない可能性があります。
もちろん、車両保険には保険料もかかります。
だから、
「絶対に車両保険を付けた方がいい」
という話ではありません。
車の年式や車両価格、年間保険料、免責金額、普段走る場所などによって考え方は変わります。
ただ、一度こういう事故を目の前で見てしまうと、考え方は少し変わります。
たぶん、多くの人がそう思っていると思います。
僕も長野で車の仕事をしていますが、山道を走っていると鹿を見ることがあります。
でも、
「自分が鹿とぶつかるかもしれない」
と考えながら毎日運転している人は、それほど多くないでしょう。
ところが、事故は突然やってきます。
鹿だけではありません。
イノシシが飛び出してくることもあります。
道路に動物が出てくることもある。
台風で物が飛んでくることもある。
大雨で車が水没することもある。
雹で車のボディがボコボコになることもあります。
自分がいくら安全運転をしていても、防ぎきれない事故というものがあります。
整備士として仕事をしていると、事故で入庫する車をたくさん見ます。
そこで感じるのは、
「事故を起こしたから保険を使う」
だけではないということです。
自分がどれだけ気を付けていても、相手や自然、動物によって事故に巻き込まれることがあります。
今回の鹿との衝突もそうでした。
お客さんが無茶な運転をしていたわけではありません。
突然、鹿が飛び出してきた。
それだけです。
それでも車は壊れます。
そして、車は壊れれば直さなければなりません。
一番大事なのは、無理に避けようとしないことです。
突然動物が飛び出してきたとき、反射的にハンドルを大きく切ってしまうと、対向車やガードレール、電柱などに衝突する危険があります。
まずはブレーキ。
周囲の状況を確認しながら、できる限り減速する。
そして、もし衝突してしまった場合は、無理に車を動かさず、安全を確保したうえで警察や保険会社などへ連絡する。
車が走れるからといって、そのまま帰ってしまうのもおすすめできません。
見た目では分からない部分が壊れている可能性もあるからです。
車を運転している以上、事故の可能性をゼロにすることはできません。
鹿とぶつかるなんて、自分には関係ないと思っている人もいるでしょう。
でも、動物は交通ルールを守ってくれません。
突然道路に飛び出してきます。
そして最近の車は、見た目以上に修理費が高額になることがあります。
僕が実際に見た鹿との衝突事故でも、車両保険を使って修理することになりました。
だからこそ、一度自分の自動車保険を確認してみてください。
「車両保険、付いてたっけ?」
「鹿とぶつかった場合はどうなる?」
「免責はいくらだった?」
こういうことは、事故が起きてから確認するより、何も起きていないときに確認しておいた方がいいです。
事故は、こちらの都合を待ってくれません。
そして整備士として一つだけ言えるのは、
「事故に遭わないように運転すること」と「事故に遭ったときの備えをしておくこと」は別の話です。
自分では避けられない事故もあります。
そのとき、車をどうするのか。
一度くらい、自分の自動車保険を確認してみてもいいかもしれません。
※車両保険の補償範囲や保険金の支払い条件は契約内容・保険会社によって異なります。実際の事故については加入している保険会社へ確認してください。この車両の場合、「某共済」でした。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。