もし日本の車検がなくなったら整備士が本気でシミュレーションしてみた
こんにちは、チームMHOです。
「車検って高いし面倒だな」と思ったことがある方は多いと思います。実際、車検がある国は世界的に見ると少数派で、多くの国では日本のような定期的な車両検査制度を持っていません。この事実自体はいろいろなメディアで紹介されていて、目新しさはあまりないかもしれません。
でも今回は一歩踏み込んで、「じゃあ実際に日本の車検がなくなったらどうなるのか」を、現場で整備をしている僕の目線で本気でシミュレーションしてみようと思います。単なる制度比較ではなく、実際に整備の現場で見てきた整備不良の実例を交えながら考えていきます。
まず前提として、車検制度自体は日本独自というわけではなく、ヨーロッパの一部の国などにも似た仕組みはあります。ただ、アメリカの多くの州のように登録更新はあっても厳密な車両検査がない地域、あるいは検査項目が日本よりずっと簡易な国も少なくありません。つまり「車を一定期間ごとに整備士がしっかりチェックする」という仕組みは、世界的にはむしろ珍しいということです。
日本の車検は、費用も時間もかかるので不満に感じる方が多いのは当然だと思います。ただ、僕たち整備士の立場から見ると、車検や点検のタイミングだからこそ発見できている不調が、現場には本当にたくさんあります。ここからは、もし車検がなくなったらどうなっていたかもしれない、実際に現場であった出来事を紹介します。
最近、会社にはブレーキパッドの残量がかなり少なくなった状態で来店されるお客さんが増えています。ブレーキパッドは走行するたびに少しずつ削れていく部品で、残量が減ってくると「キーキー」という音が出るように作られているものが多いのですが、この音に気づかずに、あるいは気づいても「そのうち直そう」と後回しにしてしまう方が一定数いらっしゃいます。
ブレーキパッドが限界まで減った状態で走り続けると、パッドの下にある金属のディスクプレートと、ブレーキローターという金属部品同士が直接こすれ合うことになります。そうなると制動距離が伸び、最悪の場合ブレーキの効きが著しく悪化します。信号での急な停止や、下り坂での連続ブレーキなど、日常のどこにでもある場面で「効かない」という事態が起きうるということです。
もし車検や定期点検という制度がなく、ドライバー自身の判断だけに任されていたら、この手の摩耗はもっと発見が遅れていたはずです。整備士がリフトに車を上げてタイヤを外し、目視でパッドの厚みを確認する。この一手間が、実は事故を未然に防いでいる場面だと僕は感じています。
もうひとつの例がバッテリーです。バッテリー上がりというトラブルは、多くの方が「ある日突然エンジンがかからなくなる」というイメージを持っていると思います。実際その通りで、バッテリーは劣化してもパッと見た目で分かるものではありません。外観はきれいなまま、内部の性能だけがじわじわ落ちていくというケースがほとんどです。
整備工場では、バッテリーの寿命を見分けるために専用のテスターで内部の状態を測定し、数値として劣化度を確認しています。ドライバー自身の感覚だけでは「まだ大丈夫」と思っていても、テスターの数値上は交換時期に入っているというケースは珍しくありません。
もし点検の機会がなければ、こうした劣化は「バッテリーが上がって動かなくなった」という結果でしか気づけません。しかもバッテリー上がりは、出先や早朝、深夜など困るタイミングを選ばずに起こります。事前に交換提案ができるのは、点検という仕組みがあるからこそだと感じています。
万が一、バッテリーが上がってしまった時のために、ジャンプスターターを持っておくのをお勧めします。一番いいのはこちらのコンデンサタイプですね。事前充電は不要で、長寿命のハイパワー。しかも安全です。
3つ目はタイヤです。タイヤには摩耗が進むと表面に現れる「スリップサイン」という目印があり、これが出ている状態は、道路運送車両の保安基準でも交換が必要とされるレベルの摩耗です。僕も、実際にスリップサインが出ている状態のお客さんに交換を何度も何度も提案したことがあります。
タイヤの溝は、雨の日に路面の水を排出して滑りにくくするための重要な役割を持っています。溝が減ってスリップサインが出るレベルまで摩耗すると、この排水性能が大きく落ち、雨の日のブレーキ性能や、カーブでのグリップ力が明らかに低下します。見た目ではそこまで気にならないように見えても、実際の性能差は想像以上に大きいというのが現場の実感です。
もし車検や点検の機会がなければ、タイヤの摩耗は「パンクしてから気づく」「滑って初めて気づく」という形になりがちです。日常的に自分のタイヤの溝をチェックする習慣がある方は、正直そう多くはないと思います。
これら3つの実例を踏まえてシミュレーションすると、もし日本の車検がなくなった場合、こうした不調の発見はドライバー自身の注意力や知識量に完全に依存することになります。整備に詳しい方や、定期的に自主的な点検を受ける方は問題ないかもしれませんが、そうでない方にとっては、不調のサインに気づかないまま走り続けるリスクが一気に高まるはずです。
車検という制度は、費用や手間の面で確かに負担に感じる部分があります。ただ、その裏側には「整備士がプロの目で車両全体をチェックする機会を、強制的に一定周期で作る」という役割があります。ブレーキ、バッテリー、タイヤ、どれも普段の運転では気づきにくい部分だからこそ、この仕組みが機能している場面を僕は現場で何度も見てきました。
車検や点検を「面倒なもの」と感じる気持ちはよく分かります。でも、その機会があったからこそ発見できた不調が、実際に事故を防いでいるかもしれないということは、ぜひ知っておいてほしいと思います。もし今、ブレーキの異音やタイヤの溝の減りが気になっている方は、次の点検を待たずに一度見てもらうことをおすすめします。
そして車検の時に重量税を国に変わって徴収したり、自賠責保険に入ってもらったりしているので、それら諸費用と呼ばれる部分でも割高に感じてしまうところもありますね。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。