トラックのタイヤ組替え作業で何故事故が起きるのか?乗用車とトラックのホイールの違いを解説

整備士が作業中にケガをすることは多々あります。誤って手を切ってしまったり、足にモノを落としてしまったり。

これら細かい怪我は日常茶飯事ですが、重大事故が起きているのも事実です。整備士の人命に直結する事故は大きく2つあります。1つがリフトアップなどが外れて下敷きになってしまうケース。

ダンプカー等の整備中に、荷台と挟まれるといった事故もそうです。リフトアップする時は、ちゃんと足が安全な場所にかかっているか、ダンプの荷台を持ち上げているときは安全バーをきちんとかけているかなどの再確認をすることで、ある程度は防げます。

次いで多い事故がトラックのタイヤ交換時の怪我。乗用車のタイヤ交換では聞かない事故ですが、トラックのタイヤは何故事故につながるのか?

トラックのホイールはリングホイールを使っている

トラックのホイールには2種類あります。リング付きかリングなしか。事故が発生するのはリング付きホイールです。

違いは何か?リング付きはタイヤとホイールの間にチューブがあります。リングなしのホイールはチューブレスタイプになっています。

このリング付きタイヤでの事故が後を絶ちません。どのような事故が起こるのか?

まずチューブレスタイプのタイヤ組替え作業を見てみましょう。

チューブレスタイプのホイールは、タイヤチェンジャーに固定して交換作業をするのが殆どです。2tや3tくらいのトラックであっても、チューブレスタイプはタイヤチェンジャーで組替えができます。

これに対してリング付きのホイール。こちらは基本的に手組になります。

タイヤとホイールの間にリングが見えますね。これが事故の原因になります。

まずはリングホイールの組み換え作業をざっと見てください。

まずは空気を完全に抜いた後に、ビードを落とします。リングホイールの場合、このような鉄製のくさびを打ち込んでいきます。

ビードが落ちたらホイールからリングをはがします。この辺はハンマーの取り扱いなどを気を付けるだけ。

タイヤとリング、チューブを外した状態。

スタッドレスからノーマルタイヤに履き替えるときは、逆の動作でホイールにタイヤとチューブをあてがって、リングを打ち込んでいきます。

そして、最後に空気を入れる作業。これが危ない。僕はリング付きのホイールを組み替える際にはこのようにタイヤレバーをホイールの中に2本差し込んでおきます。

そして離れたところからエアーを充填します。この時、作業スペースには同僚達を入らないようにしておく。

何故こんなことが必要なのか?

タイヤの空気が入っていくと、途中でビードが上がる瞬間があります。その時って

「バン!」

という結構な音とともにタイヤがホイールと密着するのです。この瞬間のエネルギーでリングが外れて飛んで行ってしまうことがある。

これが事故につながるのです。

リングは鉄の塊です。真上に飛んで来たら作業者の頭部や首などを直撃することが考えられます。

リングホイールの空気充填は最新の注意を!

多分、事故が発生している場合は技術も熟練した人がやってると思うんです。

ニュースでトラックのタイヤ交換時の事故と聞けば、このリングホイールが頭をよぎります。でもはっきり言って作業している人たちは僕よりよっぽど熟練した人たち。

何故そんな人たちが事故にあってしまうのか?

これは、何かの間がさしてしまったのか。想定外の事態だったのか。その辺はわかりません。

僕はタイヤの空気を入れる時も何段階かに分けて入れます。最初にほんの少しエアーを入れて、若干ビードが上がったなと思ったら一度抜く。

そしてそこからまた入れ始めて3回くらいに分けて規定空気量へ調整します。そんな面倒なことやってられないよという作業者の人もたくさんいると思います。

確かにその通りで、僕の会社はリングホイールに遭遇することのほうが珍しいので、逆に最新の注意を払って作業ができます。

ひたすらリングホイールを組まないといけないような環境下だと、どこかで間がさしてしまうのかなと。

リングホイールって本当に危ないです。できれば無人スペースでエアーの充填をしてほしいくらい。もし作業をしないといけない時は改めて注意してください。

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