車検に通ったからあと2年安心?整備士が何度も説明した「車検で保証できないこと」

「この車、この前車検を取ったばかりなんです」

故障した車が整備工場へ入ってきた時、お客さんから何度も聞いた言葉です。

車検を取ったのは数カ月前。

それなのにエンジンがかからない。警告灯が点灯した。エアコンが効かない。走行中に異音が出る。

お客さんとしては、当然疑問に思います。

「車検の時に分からなかったの?」

「ちゃんと点検してくれたの?」

「車検に通ったのに、どうしてもう壊れるの?」

僕は長年、整備士、自動車検査員、サービスフロントとして働いてきました。

その中で感じたのは、「車検に合格した車は、次の車検まで故障しない」と考えている人が非常に多いことです。

しかし、車検はその後2年間の安全や故障しないことを保証する制度ではありません。

国土交通省も、車検は国が定める基準に適合しているかを一定期間ごとに確認するものであり、次の車検までの安全性などを保証するものではないと説明しています。

参考:国土交通省「自動車の点検整備」
https://wwwtb.mlit.go.jp/shikoku/benri/tenken.html

車検で確認するのは「検査した時の状態」

車検では、ブレーキ、ライト、排気ガス、足回り、車体などが保安基準に適合しているかを確認します。

指定整備工場では、必要な点検や整備を行ったあと、自動車検査員が検査を実施します。

僕も自動車検査員として、数多くの車を検査してきました。

検査をする時は、

・ブレーキが基準を満たしているか
・ヘッドライトの光量や向きに問題がないか
・排気ガスが基準内か
・タイヤや足回りに危険な不具合がないか
・オイルや燃料が漏れていないか
・警告灯が正常に作動しているか

などを確認します。

ここで重要なのは、「検査した時点で基準を満たしているか」ということです。

今日正常に動いている部品が、半年後も必ず正常とは限りません。

今は漏れていない部品から、数カ月後にオイルや冷却水が漏れ始めることもあります。

車検に合格したという事実は、2年間の故障保証を受けたという意味ではないのです。

車検直後にバッテリーが上がることもある

分かりやすいのがバッテリーです。

車検時にバッテリーテスターで測定し、良好という結果が出たとします。

エンジンのかかり方にも問題がなく、充電状態も正常だった。

その状態なら、整備士が「今すぐ交換してください」と強く勧める理由はありません。

ところが、その数カ月後に急激に性能が落ちて、ある朝突然エンジンがかからなくなることがあります。

特に最近のバッテリーは、弱っていても直前まで普通にエンジンを始動できる場合があります。

昨日まで元気だったのに、今日になって突然かからない。

車検時に問題がなくても、その後の気温、走行状況、充電状態、車の使用頻度などによって状態は変わります。

これは車検で見落としたとは限りません。

車検時には正常で、その後に劣化が進んだ可能性もあるのです。

電装品は故障時期を予測しにくい

センサー、リレー、モーター、コンピューターなどの電装品も、故障時期の予測が難しい部品です。

例えば、車検時にはエンジンチェックランプが消えていて、故障コードも記録されていなかった。

エンジンも正常に動き、異音や不調もなかった。

それでも、車検から数日後にセンサーが故障して警告灯が点灯することがあります。

エアコンのコンプレッサーやパワーウインドウのモーターなども同じです。

点検時に正常に動いている部品を分解し、壊れる日を予測することはできません。

整備士は車の状態を診断できますが、すべての部品の寿命を日付まで当てられるわけではないのです。

車検時に交換を勧められた部品はどうなる?

一方で、車検時に整備工場から交換を勧められたものの、お客さんの判断で作業を見送ることもあります。

例えば、

・残量が少なくなったブレーキパッド
・ひび割れが始まった補機ベルト
・年数が経過したバッテリー
・溝やひびが気になるタイヤ
・小さなオイル漏れ
・わずかにガタが出始めた足回り

などです。

現時点では車検に通る。

しかし、次の車検まで安心して使えるとは言い切れない。

そのような部品について、整備工場が説明したうえで「今回は交換しない」という選択になる場合があります。

この時、見積書や点検整備記録簿に記載があっても、お客さんが内容を覚えていないケースもありました。

そして半年後に故障すると、

「車検を取ったばかりなのに壊れた」

という話になります。

車検時にどの部品を交換し、どの部品を経過観察にしたのか。

ここを確認しておくことは非常に大切です。

安い車検が悪いわけではない

短時間で終わる車検や、料金が安い車検がすべて悪いわけではありません。

普段からきちんと点検と整備をしている車なら、車検時に大掛かりな作業が必要ないこともあります。

一方、数年間ほとんど点検されていない車を「とにかく安く通してほしい」と依頼すれば、車検に合格するための最低限の作業が中心になる可能性があります。

ここで生まれるのが、整備工場とユーザーの認識のズレです。

整備工場側は、

「今回は車検に通る状態へ整えました」

と考えている。

ユーザー側は、

「これであと2年間、何もしなくても安心だ」

と考えている。

同じ車検でも、両者が想定している内容が違います。

車検代の違いを見る時は、総額だけではなく、

・定期点検が含まれているか
・どこまで分解して確認するか
・交換部品は何か
・今回は交換しない部品は何か
・次回点検まで注意する場所はどこか

まで確認した方がいいでしょう。

見積書の「おすすめ整備」を確認する

車検の見積書には、今回必ず必要な整備と、今後を考えて推奨する整備が分けて記載されていることがあります。

例えば、ブレーキパッドの残量が車検には通るものの、次の車検まで持つか分からない場合。

整備工場としては交換を勧めても、お客さんが年間にどのくらい走るかによって判断が変わります。

年間2,000kmしか走らない車と、年間20,000km走る車では、同じ残量でも減り方が違います。

整備士へ伝えてほしいのは、

「あと何年乗る予定なのか」

「年間に何kmくらい走るのか」

「高速道路をよく使うのか」

「通勤や仕事で毎日使うのか」

という情報です。

使用状況が分かれば、今交換すべき部品と、次回まで待てる部品を判断しやすくなります。

車検後に故障したら、まず前回の工場へ相談する

車検後すぐに不具合が出た場合は、前回車検を依頼した整備工場へ相談してください。

車検とは関係のない偶発的な故障かもしれません。

車検時に経過観察とした部品が悪化した可能性もあります。

あるいは、車検で実施した作業と関係している可能性もゼロではありません。

例えば、

・交換した部品の初期不良
・取り付け部分の不具合
・作業時に触れた配線やホースの問題
・締め付けや調整の不備

など、前回作業との関連を確認すべきケースもあります。

同じ整備工場で確認してもらえば、車検時の点検記録や交換履歴と現在の状態を照らし合わせることができます。

「車検後だから故障するはずがない」と決めつけることも、「車検とは関係ありません」と最初から切り離すことも適切ではありません。

まず原因を調べ、前回の作業との関係を説明してもらうことが大切です。

車検後に自分で確認したいこと

車検が終わったら、請求金額だけでなく整備内容も確認してください。

最低限、次のことを聞いておくと安心です。

・今回交換した部品
・今回は交換しなかった部品
・次の点検まで注意する場所
・近いうちに交換が必要になりそうな部品
・オイルや冷却水の漏れの有無
・タイヤとブレーキの残量
・バッテリーの測定結果
・次回の点検時期

点検整備記録簿には、各装置の点検結果や整備内容が記録されています。

書類を受け取ったら車検証と一緒に保管し、次回の点検や故障時に確認できるようにしておきましょう。

国土交通省も、車は時間や使用状況に応じて部品の劣化や摩耗が進むため、日常点検と定期点検を行う必要があると案内しています。

参考:国土交通省東北運輸局「自動車の点検・整備」
https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/jg/jg-sub41.html

車検はゴールではなく定期検診

車検に合格した車でも、その翌日に故障する可能性はあります。

それは車検が無意味だからではありません。

車検と点検整備には、それぞれ役割があります。

車検は、検査時点で国の保安基準に適合しているかを確認するもの。

定期点検整備は、現在の状態を調べ、摩耗や劣化を確認し、今後のトラブルを予防するためのものです。

そして日常的に車の変化へ気づくのは、普段その車に乗っているユーザーです。

いつもよりエンジンのかかりが悪い。

変な音が出るようになった。

ブレーキの感触が違う。

駐車場に液体の跡がある。

警告灯が一瞬点灯した。

こうした変化があれば、「車検を取ったばかりだから大丈夫」と考えず、早めに点検を依頼してください。

車検は2年間何もしなくてよいという保証書ではありません。

人間が健康診断を受けた翌日に体調を崩すことがあるように、車も検査後に状態が変わります。

車検をゴールにするのではなく、次の2年間を安全に使うための定期検診として考える。

それが、車検後の思わぬ故障や高額修理を減らすために大切な考え方です。

警告灯が点灯した時、異常の手掛かりを自分でも確認したい人には、OBD2診断機という選択肢があります。

僕がプライベートで使っているのは、LAUNCHのCR529です。

車の診断コネクターへ接続すると、エンジンコンピューターに記録された故障コードを読み取ることができます。

ただし、表示された故障コードだけで、壊れている部品を断定できるわけではありません。

例えばセンサーに関するコードが表示されても、原因がセンサー本体ではなく、配線やコネクター、別の装置にある場合もあります。

診断機は整備士の代わりになる道具ではなく、「どの系統に異常が記録されているか」を確認するための道具です。

また、すべての国産車へ対応するわけではありません。特に古いJOBD規格の車では読み取れない場合があるため、購入前に対応車種を確認してください。

僕が実際に3台へ接続して確認した結果や、使えた車と使えなかった車については別の記事でも紹介しています。

車検に通ったあとも、警告灯が点灯する可能性はあります。

その時に何が記録されているのか、自分でも手掛かりを確認したい人には便利な一台です。

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