BYDの軽自動車EV「RACCO(ラッコ)」が、かなり好調なスタートを切っているようです。

BYD Auto Japanは8月10日、7月28日に発売したラッコの累計受注台数が1000台を突破したと発表しました。
発売からわずか2週間。
これまで日本に導入したBYD車の中でも、最も早いペースで1000台に到達したとのことです。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)
グレード別に見ると、
- 300プレミアム:80%
- 300プラス:14%
- 200:6%
という構成。
なんと8割が最上級グレードの「300プレミアム」です。
価格だけを見ると一番安いグレードを選びたくなりそうですが、実際には装備の充実した上級グレードに人気が集まっています。(マガジンXニュース)
そして購入形態を見ると、「増車」が37.5%。
つまり、今乗っている車を手放してラッコに乗り換えるというより、セカンドカーなどとして追加する人が多いようです。
さらに、自宅に充電設備がある人が55.4%、ない人が43.0%。
自宅充電環境がない人もかなりいることが分かります。
これは個人的には少し興味深い数字です。
目次
整備士としてラッコを見て気になったところ
ここからは、あくまで僕個人の感想です。

ラッコはかなりよく考えられた軽EVだと思います。
そもそも日本の軽自動車市場をかなり研究して開発されていますし、BYD自身も日本専用の軽EVとして、室内空間やスライドドア、冬季の暖房性能などを含めて日本市場向けに設計したと説明しています。(BYD)
さらに、バッテリーにはBYD独自の「ブレードバッテリー」を採用。
リン酸鉄リチウムイオン電池で、BYDは高い熱安定性や安全性を特徴としてアピールしています。(BYD)
そしてRACCOはCTB(Cell to Body)構造を採用しており、バッテリーを車体構造の一部として利用する設計です。
ですから、
「中国メーカーだからバッテリーが危ない」
という単純な話ではありません。
むしろ、そこはかなり真面目に作っている印象です。
それでも僕が気になるのが、
雪国での使い勝手です。
気になるのは床下バッテリーと雪
ラッコを見ていて気になったのが、床下に搭載された駆動用バッテリー。

EVなので当然といえば当然なのですが、バッテリーが車両の下側に大きく配置されています。
そして最低地上高について、外部では130mmという情報も出ています。
一般的な背の高い軽自動車では145mm前後の車種もあるため、数字だけを見ると「それほど余裕がないのでは?」という印象があります。(kakaku.com)
もちろん、最低地上高の数値だけで「危険だ」と判断することはできません。
バッテリー自体も当然、路面からの衝撃を考慮して設計されているでしょう。
ただ、僕が住んでいるような雪国で使うことを考えると、少し話が変わってきます。
雪国では「雪の塊」が問題になる
普通の雪道なら、FFの軽EVでもそれほど困らない場面は多いと思います。
むしろバッテリーを床下に搭載することで重心が低くなり、安定した走りが期待できます。
問題は、
豪雪地帯の雪道です。
除雪された道路でも、道路脇に寄せられた雪が凍結して巨大な塊になることがあります。
交差点や駐車場の出入り口などでは、車の下側に雪の塊が入り込んでいることもあります。
そういう場所を乗り越えるとき、
「ここ、バッテリー大丈夫かな?」
と整備士としてはどうしても気になります。
特にFFの車では、駆動輪が前輪です。
多少の雪なら問題なく進めても、車体中央から後方にかけて雪の塊が残っているような場所では、車体下面を擦る可能性があります。
できればバッテリーをもっと車体に一体化してほしい?
ここは完全に僕個人の感想です。
ラッコはCTB構造を採用しているので、単純に「床下にバッテリーをぶら下げているだけ」という車ではありません。BYDもバッテリーを車体剛性に組み込むことで、安全性や剛性を高める設計を説明しています。(Business Insider Japan)
それでも、雪国で使用することを考えるなら、
「車体下面をできるだけフラットにして、バッテリーを雪や路面から守る」
という方向に、さらに進化してくれたら個人的には嬉しいと思います。
特に長野県のような雪の多い地域では、カタログ上の航続距離だけではなく、
「雪道で安心して使えるのか?」
という部分も重要です。
2WDだけというのも雪国では気になる
現在のラッコは2WDのみ。
もちろん、軽自動車だから2WDがダメという話ではありません。
FFなら雪道でも十分走れます。
ただ、豪雪地域で生活する人間からすると、
「4WDがあったらもっと安心なのにな」
と思ってしまいます。
ラッコが日本の軽自動車市場を狙っているのであれば、今後4WDモデルが登場したら雪国ではかなり面白い存在になるのではないでしょうか。
それでも1000台突破はすごい
ここまで気になる点を書きましたが、ラッコが発売2週間で1000台以上の受注を獲得したことは素直にすごいと思います。
しかも最上級グレードが80%。
「安いから売れた」というより、装備や航続距離を含めて、ラッコそのものに魅力を感じて購入する人が多いということなのかもしれません。(マガジンXニュース)
一方で、購入者の43%は自宅に充電設備がないというデータもあります。
EVがこれから本当に普及していくのであれば、
「どこで充電するのか」
だけでなく、
「雪国でどう使うのか」
「雪で車体下部を擦ったらどうなるのか」
「長期間使ったときにバッテリー周辺はどうなるのか」
といった、実際の生活に密着した部分も重要になってくるでしょう。
ラッコは、BYDが日本の軽自動車市場に本気で入ってきたことを象徴する一台だと思います。
だからこそ、これから実際にオーナーが増えて、
「雪国で1年使ったらどうだった?」
というリアルな声が出てくるのが楽しみです。
個人的には、そこを一番注目しています。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。