ブレーキパッド残量3mmでも「まだ走れる」?妻が乗る車の交換を夫が断った話

車検で入庫した車のブレーキを点検したところ、ブレーキパッドの残量が約3mmになっていました。

すぐにブレーキが効かなくなる状態ではありません。しかし、新品時と比べればかなり摩耗が進んでおり、今後の走行距離によっては次の点検まで持たない可能性があります。

そこで、車を持ち込んだ奥さんへ交換を提案しました。

奥さん「主人に確認しないと決められなくて」

僕「分かりました。ブレーキパッドの残量は約3mmです。今回の車検で交換するか、ご主人と相談してください」

それから30分ほどすると、ご主人から直接電話がかかってきました。

ご主人「ブレーキパッド、まだ3mmあるんですよね?」

僕「はい。現時点では約3mm残っています」

ご主人「それなら、まだ走れるから今回は交換しなくていいです」

確かに、ブレーキパッドが3mm残っているからといって、その場でブレーキが効かなくなるわけではありません。

しかし、そこで少し気になったことがありました。

僕「普段、この車へ乗っているのは奥さんですよね?」

ご主人「そうです」

僕「その『まだ走れる』という判断は、ご主人が運転しているときの話ですか?それとも、奥さんが夜に保育園のお迎えへ行くときの話ですか?」

電話の向こうで、ご主人が少し黙りました。

ブレーキパッド3mmは車検に通らないのか?

ブレーキパッドの残量が3mmだからという理由だけで、直ちに車検へ通らなくなるわけではありません。

車検では、ブレーキが基準を満たす制動力を発揮しているかなどを確認します。

そのため、ブレーキパッドが摩耗していても、その時点で必要な制動力が出ていれば検査に合格する可能性があります。

しかし、車検に合格することと、次の車検まで安心して使えることは別です。

車検は、検査した時点で保安基準に適合しているかを確認するものです。今後2年間、ブレーキパッドが残っていることを保証する検査ではありません。

「車検に通るなら交換しなくていい」

そう考える人もいますが、整備工場では車検後の使い方まで考えて交換を提案しています。

残量3mmであと何km走れる?

ブレーキパッドが3mm残っている場合、あと何km走れるのか。

これは残量だけでは断定できません。

新品のブレーキパッドの厚さは車種や製品によって異なります。摩耗の進み方も、車の重さ、運転方法、走る道路、年間走行距離によって変わります。

高速道路を一定速度で走ることが多い車と、信号や坂道が多い地域で毎日使う車では、同じ走行距離でもブレーキの使用回数が違います。

さらに、外側から見えるパッドが3mmでも、内側のパッドがそれ以上に減っている場合があります。

ブレーキキャリパーの動きが悪くなっていると、左右や内外で摩耗量に差が出ることもあります。

そのため整備士は、単純に「3mmならあと何km」とは答えられません。

まだ使えると安心して使えるは同じではない

ブレーキパッドは、限界まで使い切ることが得になる部品ではありません。

摩擦材がなくなるまで使用すると、パッドの金属部分がブレーキローターへ接触します。

その状態になると異音が発生し、ブレーキローターまで傷める可能性があります。

本来ならブレーキパッドの交換だけで済んだものが、ローターの交換まで必要になれば修理代は高くなります。

さらに、摩耗警告装置が付いていない車もあります。警告灯が点く前に交換できるとは限りません。

「あと少し使えるから交換しない」という判断が、必ずしも節約になるわけではないのです。

誰が乗り、どのように使う車なのか

今回、僕が気になったのは、交換するかどうかを決めたご主人と、普段その車を運転する奥さんが別の人だったことです。

家計から修理代を出すため、ご主人への確認が必要になること自体は珍しくありません。

整備の現場では、奥さんが車を持ち込んでも、

「主人に確認します」

「夫がまだ交換しなくていいと言っています」

と回答されることがあります。

反対に、ご主人が車を持ち込み、奥さんへ相談するケースもあります。

大切なのは、誰がお金を払うかだけではありません。

誰がその車へ乗るのか。

毎日どれくらい走るのか。

子供を乗せるのか。

夜間や雨の日にも使うのか。

次に点検を受けるのはいつなのか。

こうした使用状況まで含めて判断する必要があります。

残量だけで決めず次の点検時期も考える

ブレーキパッドが3mmでも、走行距離が少なく、数か月後にもう一度点検できるのであれば、経過を確認する選択肢はあります。

一方で、年間走行距離が多く、次の点検まで長期間ある車なら、車検時に交換した方が安心です。

交換を見送る場合は、整備士に次のことを確認してください。

残量は内側と外側で同じか。

左右で偏った摩耗はないか。

ブレーキローターに大きな傷や摩耗はないか。

次はいつ点検を受けるべきか。

異音が出た場合はどうすればよいか。

「今回は交換しない」で話を終わらせず、次に確認する時期を決めておくことが重要です。

ブレーキパッドが3mm残っていれば、まだ走れるかもしれません。

しかし、整備士が知りたいのは「まだ走れるか」だけではありません。

誰が、どこで、どのくらいの期間、その車へ乗るのか。

実際にハンドルを握る人の安全まで考えて、交換するかどうかを決めてほしいと思います。

noteと週刊MHO通信を始めました

整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。

普段の自動車記事では書ききれない、修理現場での経験、仕事への考え方、独立するまでの道のりなども残していく予定です。

noteはこちら

また、Substackでは「週刊MHO通信」を配信しています。

GoogleやSNSのアルゴリズムに左右されず、読者の方へ直接届けられる場所として、毎週1回を目安に更新していきます。

ブログとは少し違った話も書いていきますので、よろしければ無料購読をお願いします。

週刊MHO通信はこちら

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする