新車保証が残っている中古車なのに無料で直せない?名義変更だけでは終わらない「保証継承」の落とし穴

中古車を購入して間もないのに、エンジンの警告灯が点灯した。

ディーラーで点検してもらうと、修理には十数万円かかるという。

しかし車の初度登録からは、まだ3年しか経過していない。

「新車保証が残っているはずだから、無料で直してもらえるのでは?」

そう考えるのは当然です。

ところが保証書を確認すると、記載されている使用者は前のオーナーのまま。メーカー保証を引き継ぐ「保証継承」の手続きも行われていませんでした。

車の名義変更は終わっていても、保証の名義までは自動的に変更されないことがあります。

新車保証の期間が残っている中古車を購入したからといって、必ずその日から無条件で保証修理を受けられるわけではないのです。

新車保証は車ではなく使用者とも結び付いている

新車には通常、メーカーによる保証が付いています。

注文書

一般的には、エアコンや純正の電装品などを含む部品を対象とした一般保証と、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、ステアリングなど、走行や安全に関わる重要部品を対象にした特別保証があります。

保証期間や走行距離の上限はメーカーや車種によって異なります。

例えばトヨタの一般保証は、新車登録から3年間、または走行距離6万kmのいずれか早い方までと案内されています。

重要なのは、この保証が単純に「車体へ付いているもの」とは限らない点です。

保証書には、車台番号、登録日、販売店だけではなく、車の使用者も記載されています。

中古車として売買され、使用者が変わった場合は、新しい使用者へ保証を引き継ぐ手続きが必要になるメーカーがあります。

これが保証継承です。

車検証の名義を変更したからといって、メーカーの保証書まで自動的に書き換わるわけではありません。

三菱自動車は、保証書に記載された使用者が変わるとメーカー保証は失効するものの、保証期間が残っていれば、新しい使用者の名義へ変更する保証継承ができると説明しています。

参考:三菱自動車「保証継承とは何ですか」

名義を書き換えるだけでは終わらない

保証継承と聞くと、保証書へ新しい名前を書いてもらえば終わるように思えます。

実際には、それだけではないケースがあります。

メーカーの販売店で車両を点検し、その車が今後もメーカー保証の対象にできる状態なのかを確認します。

トヨタでは、二次保証の手続きに自家用乗用車の12カ月点検相当の有料点検が必要です。

事故などによる大きな損傷がないかを含め、保証できる状態かを確認するとしています。

点検によって整備や修理が必要と判断された場合、その費用は保証修理にはならず、利用者の負担になります。また、車の状態によっては保証継承を断られる可能性もあります。

参考:トヨタ「二次保証(保証継承)とは何ですか?」

SUBARUも、保証期間内の車であれば保証継承できますが、所定の有料点検と手続きが必要だと案内しています。

つまり、

「初度登録からまだ3年だから保証が残っている」

というだけでは不十分です。

保証期間内であること。

走行距離の上限を超えていないこと。

必要な書類が残っていること。

車が保証できる状態であること。

そして保証継承の手続きを済ませていること。

これらを確認する必要があります。

なぜ有料点検が必要なのか

中古車は、新車時から現在までにどのような使われ方をしたのか分からない場合があります。

定期的に点検やオイル交換を受けていた車もあれば、ほとんど整備されていない車もあります。

事故によって大きな修理を受けた車かもしれません。

エンジンや足回りが改造されている可能性もあります。

メーター上の走行距離や年式だけを見て、メーカーが無条件に保証を引き綘ぐのは難しいわけです。

例えば、オイル交換を長期間行わず、エンジン内部に大きなダメージを抱えている車があったとします。

その状態で使用者だけを変更し、保証継承直後にエンジンが壊れたらどうなるでしょうか。

前のオーナーによる整備不足で発生した故障まで、メーカーがすべて負担することになってしまいます。

そこで販売店が点検を行い、保証を引き継げる状態なのかを確認します。

利用者からすると、

「まだ保証が残っているのに、なぜ点検代を払うの?」

と思うかもしれません。

しかしメーカー側から見れば、前の使用者がどのような管理をしていたか分からない車を、これから保証するための確認作業なのです。

保証書やメンテナンスノートがないと困る

中古車を購入するときは、車検証だけでなく、保証書とメンテナンスノートの有無も確認してください。

取扱説明書と一緒に車へ載っていることもありますが、前のオーナーが紛失しているケースもあります。

トヨタでは、保証書とメンテナンスノートがない場合、二次保証を断ると案内しています。

SUBARUも、メンテナンスノートを所持していることを保証継承の条件にしています。

「保証書なんて、壊れたときにしか使わない紙でしょう」

と思って捨ててしまうと、いざというときに困ります。

保証書には、新車時の保証開始日や販売会社、保証条件などが記載されています。

メンテナンスノートや点検記録簿は、それまでに必要な点検整備を受けてきたことを確認する資料にもなります。

中古車を契約する前に、

「保証書はありますか?」

「メンテナンスノートは残っていますか?」

「新車保証は継承できますか?」

と確認することが大切です。

納車されてから書類がないことに気付いても、前のオーナーから回収できるとは限りません。

保証期間内でも何でも無料ではない

保証継承が完了しても、車に発生した不具合がすべて無料になるわけではありません。

タイヤ、ブレーキパッド、ワイパーゴム、各種フィルターなどの消耗部品は、通常の使用によって減ったり劣化したりするものです。

エンジンオイル、冷却水、ブレーキフルードなどの油脂類も、基本的には定期交換が必要な維持費です。

傷、へこみ、内装の汚れ、経年変化による劣化なども、メーカー保証とは分けて考える必要があります。

SUBARUの公式案内でも、ブレーキパッド、ワイパーブレード、エアコンフィルター、油脂類などが保証対象外部品の例として挙げられています。

参考:SUBARU「保証」

故障の原因が、誤った使い方や整備不足、社外部品の装着、改造、事故などにある場合も、保証修理を受けられない可能性があります。

大切なのは、

「保証期間が残っているか」

だけではなく、

「今回壊れた部品が保証対象か」

「保証条件を満たしているか」

まで確認することです。

メーカー保証と中古車販売店の保証は別物

もう一つ混同しやすいのが、メーカーの新車保証と、中古車販売店が独自に付けている保証です。

メーカー保証は、自動車メーカーが定めた条件に基づく保証です。

一方、中古車販売店の保証は、その販売店や保証会社が決めた内容に基づきます。

保証期間が3カ月のもの。

走行距離に上限があるもの。

エンジンとトランスミッションだけが対象のもの。

免責金額や修理金額の上限があるもの。

保証を受けられる工場が指定されているもの。

中古車保証の内容は一律ではありません。

メーカー保証が残っている車でも、保証継承を行わず、中古車販売店の独自保証だけで販売されることも考えられます。

反対に、メーカー保証を継承したうえで、販売店の中古車保証も付いている車もあります。

トヨタ認定中古車では、メーカーや年式を問わず、原則として1年間・走行距離無制限のロングラン保証を用意しています。ただし、これも新車のメーカー保証とは別の中古車保証です。

保証という同じ言葉が使われているため分かりにくいのですが、

メーカー保証なのか。

認定中古車の保証なのか。

販売店独自の保証なのか。

有料で加入した延長保証なのか。

ここを分けて確認しなければなりません。

購入前に確認したいこと

年式の新しい中古車を購入するときは、販売店へ次の点を確認してください。

新車保証の残存期間はあるか。

保証継承は納車前に実施されるのか。

保証継承の費用は車両価格や諸費用に含まれているのか。

保証書とメンテナンスノートは残っているか。

保証継承に必要な点検で不具合が見つかった場合、誰が修理費を負担するのか。

メーカー保証とは別に中古車保証が付くのか。

それぞれの保証で、対象となる部品と対象外になる部品は何か。

口頭で「保証は残っています」と聞くだけで終わらせず、注文書や保証書などで内容を確認した方が安心です。

特に遠方の中古車販売店や、メーカー系列ではない販売店から購入する場合は、保証継承をどこで、いつ行うのかを確認しておくべきです。

「保証継承可能」と「保証継承済み」は同じではありません。

継承できる条件を満たしているだけなのか、納車時にはすでに手続きが完了しているのかで意味が変わります。

納車後に自分で手続きを行う契約なら、有料点検の費用も考えておく必要があります。

中古車が故障してからでは遅い

サービスフロントとして仕事をしていると、故障してから初めて保証書を探すケースがありました。

グローブボックスを探す。

助手席の下を探す。

前に整備していた工場へ問い合わせる。

中古車を購入した店へ連絡する。

それでも保証書が見つからない。

そして調べてみると、保証継承も行われていなかった。

車が正常に動いているとき、保証の手続きは後回しにされがちです。

しかし壊れてから保証継承しようとしても、すでに発生している故障の修理費まで保証してもらえるとは限りません。

保証継承のための点検で不具合が見つかれば、その修理を先に自己負担で行わなければならない場合もあります。

だからこそ、中古車を購入した直後、まだ不具合が出ていない段階で確認する必要があります。

車の名義変更が終わったから、すべての手続きが終わったとは限りません。

自動車税。

任意保険。

車庫証明。

メーカー保証。

中古車を引き継ぐときには、それぞれ別の手続きがあります。

新車保証の期間が残っている車は、それ自体が大きな安心材料です。

しかし、その安心を実際に使える状態にするには、保証継承が必要になることがあります。

中古車を買うときは価格、走行距離、修復歴だけではなく、保証書の名義にも注目してください。

「まだ新車保証が残っています」

その言葉を聞いたら、もう一歩だけ踏み込んで、

「保証継承は、納車までに完了しますか?」

と確認する。

その一言が、購入後に発生する十万円単位の修理費を左右するかもしれません。

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整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。

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