車検に通ったから2年間何もしなくていい?整備士が怖い「次の車検まで放置される車」

2026年9月と10月は、国土交通省が実施する「自動車点検整備推進運動」の強化月間です。

国土交通省は「忘れない、いつもの暮らしにクルマの点検」という言葉を掲げ、日常点検や定期点検の重要性を呼びかけています。

出典:国土交通省「自動車点検整備推進運動」

こうした運動が行われる背景には、車検以外の点検や整備が忘れられやすいという現実があります。

整備の現場で働いていると、

「車検に通ったから、次の車検まで何もしなくても大丈夫」

と考えている人に出会うことがあります。

車検を受けた。

整備代も払った。

検査にも合格した。

だから、2年間は故障しない。

そう思いたくなる気持ちは分かります。

しかし、車検はその後2年間の無故障を保証する制度ではありません。

車検を受けた時点では問題がなかった部品でも、次の車検までの間に摩耗し、劣化し、故障することがあります。

僕が整備士として怖いと感じるのは、車検に通らない車より、車検に通ったことで安心し切り、その後2年間ほとんど何も点検されない車です。

車検から次の車検までオイル交換をしない車

実際にあったのが、車検から次の車検まで一度もエンジンオイルを交換していなかった車です。

2年間で走行した距離は、約2万km。

オイル交換時期をかなり超えていましたが、エンジンは動いていました。

異音はするものの、始動もできる。

車として走れてしまう。

ここが、車の怖いところです。

人間なら強い痛みが出れば病院へ行こうと思います。

しかし車は、内部に汚れがたまり、少しずつ寿命を縮めていても、すぐには動かなくならないことがあります。

実際にエンジンを分解すると、内部には真っ黒なスラッジが大量に堆積していました。

金属の地肌が見えるはずの部分が、泥を塗ったような状態です。

それでもエンジンは動いていたのです。

「動いているから大丈夫」

ではありません。

単に、壊れる直前まで我慢して動いてくれているだけかもしれません。

エンジンオイルは、車検のときだけ交換すればよいものではありません。

メーカーが指定する距離や期間を基本に、短距離走行、渋滞、山道、アイドリングの多さなど、使い方に合わせて交換する必要があります。

車検時に残っていたブレーキパッドは2年間持つのか

車検時にブレーキパッドが残っていれば、必ず交換になるわけではありません。

例えば新品時に10mm程度あるブレーキパッドが、車検時に5mm残っていたとします。

現在の使用状況から考えて、次回の点検まで使えると判断できれば、そのまま車検を通すこともあります。

ところが、お客様には、

「車検でブレーキパッドを交換しなかった」

ではなく、

「車検に通ったから次の車検までブレーキは大丈夫」

と受け取られてしまうことがあります。

車検時に5mm残っていたパッドが、その後2年間ずっと5mmのままではありません。

毎日車を使えば少しずつ減ります。

坂道が多い。

走行距離が多い。

重い荷物を積む。

市街地で発進と停止を繰り返す。

こうした使い方では、ブレーキの摩耗も早くなります。

車検時には適合していても、1年後には交換時期を迎えることがあります。

整備工場から、

「今回は交換しませんが、次回の点検では確認してください」

と説明された場合、その言葉には意味があります。

「交換しなかったから問題なし」ではなく、

「今すぐ交換する状態ではないが、継続して確認が必要」

という意味です。

タイヤも車検後に減り続ける

タイヤも同じです。

車検時に溝が基準以上残っていれば、検査には適合します。

しかし、車検に合格した瞬間からタイヤの摩耗が止まるわけではありません。

車検時に残り溝が少なく、

「あと半年くらいで交換を考えてください」

と案内されることがあります。

ところが、そのまま忘れられてしまい、次の車検でタイヤを確認するとスリップサインが出ている。

中には、外側から見ると溝が残っているように見えても、内側だけ極端に摩耗している車もあります。

空気圧不足やホイールアライメント、足回りのガタなどが影響し、偏った減り方をすることがあるからです。

タイヤは車検のときだけ見るものではありません。

給油時や長距離運転の前に、空気圧と外観を確認するだけでも異常の早期発見につながります。

冷却水は減っていても警告灯が点かないことがある

エンジンの冷却水も、次の車検まで放置したくない部分です。

冷却水は密閉された経路を循環しているため、正常なら急激には減りません。

しかし、

・ラジエーター
・ウォーターポンプ
・ホース
・樹脂製の接続部分
・リザーバータンク
・各部のパッキン

などが劣化すると、少しずつ漏れることがあります。

大量に漏れれば駐車場に跡が残りますが、熱いエンジンへ少量ずつ漏れて蒸発すると、地面に跡が残らない場合もあります。

リザーバータンクが空になっていても、すぐに警告灯が点かない車もあります。

気づかず乗り続けてオーバーヒートすると、それまで正常だったエンジンへ大きな損傷を与える可能性があります。

車検時に冷却水を補充したとしても、その後に漏れが始まることはあります。

駐車場に赤、緑、青、ピンクなどの液体が落ちていたり、甘いような臭いがしたりした場合は、次の車検を待たずに点検を依頼してください。

警告灯を「次の車検で見てもらう」は危険

メーターに警告灯が点いたとき、

「普通に走れるから、次の車検で見てもらえばいい」

と考える人もいます。

しかし、警告灯は車からの異常通知です。

エンジン警告灯。

ABS警告灯。

エアバッグ警告灯。

充電警告灯。

油圧警告灯。

警告灯によって緊急度や意味は違いますが、点灯した理由を確認しないまま何か月も乗り続けるのはおすすめできません。

例えばエアバッグ警告灯が点灯している場合、事故の際にエアバッグやシートベルトプリテンショナーが正常に作動しない可能性があります。

充電警告灯なら、オルタネーターが発電しておらず、バッテリーに残っている電気を使い切ったところでエンジンが停止する可能性があります。

油圧警告灯なら、エンジン内部へオイルが正常に送られていない恐れがあります。

警告灯が点いた車が走れるのは、「問題がないから」ではありません。

異常が発生していても、完全に壊れるまで少し時間が残っているだけかもしれません。

車検と定期点検は同じではない

車検は、検査時点で車が保安基準に適合しているかを確認する制度です。

一方、定期点検は、故障や不具合の兆候を早めに見つけ、車を安全に使い続けるためのものです。

似ているように見えますが、目的が違います。

車検に合格することだけを考えるなら、基準に適合している部品は交換しなくても構いません。

しかし、その部品が次の車検まで持つかどうかは別の話です。

整備士が車検時に、

「今は大丈夫ですが、半年後くらいにもう一度見せてください」

「次のオイル交換時にブレーキも確認しましょう」

「ベルトに劣化が始まっています」

と伝えることがあります。

これは、必要のない修理を売りたいからとは限りません。

今は車検に適合していても、近いうちに交換時期を迎える可能性があるから伝えているのです。

もちろん、整備工場の提案をすべてそのまま受け入れる必要はありません。

なぜ必要なのか。

現在はどの程度の状態なのか。

今すぐ交換する必要があるのか。

あとどのくらい使えそうなのか。

交換しない場合にどのようなリスクがあるのか。

分からなければ、納得できるまで聞いてください。

次の車検までに最低限確認したいこと

毎日大掛かりな点検をする必要はありません。

まずは、日常的に次の項目を意識するだけでも違います。

・エンジンオイルの量と交換時期
・冷却水の量
・タイヤの空気圧、残り溝、ひび割れ
・駐車場に液体が落ちていないか
・警告灯が点灯していないか
・ブレーキを踏んだときに異音がしないか
・ライトやウインカーが正常に点灯するか
・ワイパーがきちんと水を拭き取れるか
・走行中に以前とは違う音や振動がないか

すべてを自分で判断できなくても構いません。

「以前と違う」

と感じたときに整備工場へ相談することが、故障の早期発見につながります。

一番危険なのは、小さな違和感を放置し、完全に壊れてから修理へ持ち込むことです。

早く見つかれば小さな部品の交換で済んだ故障が、放置したことで周辺部品まで壊し、修理代が何倍にもなることがあります。

車検は2年間の保証書ではない

車検に通った直後なら、車の状態は一つの節目として確認されています。

しかし、その状態が2年間保存されるわけではありません。

車は走るたびに摩耗します。

走らなくても、ゴムや樹脂、油脂類は時間とともに劣化します。

車検時には問題がなかった部品が、1か月後に故障することもあります。

半年後に交換時期を迎えることもあります。

これは必ずしも車検ミスではありません。

逆に、車検時に問題があったのに見落とされていた可能性もゼロではありません。

大切なのは、

「車検を受けたから大丈夫」

と決めつけることでも、

「車検後に壊れたから整備工場が悪い」

と決めつけることでもありません。

異常が出たら、実際の車を確認して原因を調べることです。

9月と10月は、自動車の点検整備についてあらためて考える強化月間です。

車検証の有効期限を確認するだけでなく、次の車検までの間に何を点検するべきかも考えてみてください。

車検はゴールではありません。

次の2年間、安全に車を使うためのスタート地点なのです。

チェックランプなどが点灯したら、自分で診断機を持ってると故障コードが読み取れて便利です。CAN通信対応以降の車ならこちらがおすすめです。

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