
普段乗っている車と違う車を運転すると、いつもなら考えられないようなミスをすることがあります。
レンタカーを借りて出かけた人が、返却前にガソリンスタンドへ立ち寄りました。
普段乗っている車はディーゼル車です。
給油機の前へ車を止め、いつもの習慣で緑色のノズルを手に取り、そのまま軽油を入れてしまいました。
給油を終えてエンジンを始動したところで、レシートに「軽油」と書かれていることに気付きます。
借りたレンタカーはガソリン車です。
ここで頭に浮かんだのが、契約時に加入した免責補償でした。
「免責補償に入っているから、修理代は払わなくても大丈夫ですよね?」
残念ながら、そうとは限りません。
レンタカーの免責補償は、利用中に起きたすべてのトラブルを無料にしてくれる制度ではないからです。
目次
免責補償は何でも直してくれる保険ではない
レンタカーを借りるとき、免責補償制度への加入を勧められることがあります。

この制度は一般的に、補償対象となる事故を起こした際、利用者が負担する車両や対物の免責額を免除するものです。
例えば、レンタカーをぶつけてしまい、車両補償の免責額が5万円と設定されていた場合、その5万円の負担を免除するという仕組みです。
しかし、誤給油は他の車と衝突した事故ではありません。
利用者が燃料の種類を間違えたことによって発生する、車両の使用・管理上のトラブルとして扱われる場合があります。
実際に、ニッポンレンタカーは燃料の入れ間違いを「使用・管理上の落ち度」によるトラブルとして案内しています。また、ニコニコレンタカーでも、給油時の燃料間違いによる損害は補償の対象外になることが明記されています。
ただし、補償内容や除外条件はレンタカー会社、契約したプラン、会員制度などによって異なります。
そのため「誤給油は必ず全額自己負担」とまでは断定できませんが、免責補償へ加入しているだけで安心できるトラブルではありません。
修理代とNOCは別の費用
レンタカーのトラブルでは、費用を分けて考える必要があります。

まず、車を元の状態へ戻すための修理費用です。
誤給油の場合は、燃料の抜き取り、燃料タンクの清掃、配管の洗浄、燃料フィルターの交換、損傷した部品の交換などが考えられます。
さらに自走できなければ、レッカー搬送費用が発生する可能性もあります。
もう一つがNOC、ノンオペレーションチャージです。
これは、修理や清掃によってレンタカーを貸し出せない期間が発生した場合に、その営業補償として利用者が支払うものです。
免責補償とNOC補償は別制度になっている会社もあります。
NOC補償へ加入していても、誤給油など利用者の重大な過失に該当するケースは対象外になる可能性があります。
つまり、
「免責補償に入った」
「NOC補償にも入った」
「ロードサービスも付いている」
という状態であっても、誤給油によるすべての費用が免除されるとは限らないのです。
エンジンをかける前なら被害を抑えられる
ガソリン車へ軽油を入れた場合、修理内容を大きく左右するのが、給油後にエンジンを始動したかどうかです。

給油中や給油直後に間違いへ気付き、まだエンジンを始動していないのであれば、絶対にキーを回してはいけません。
プッシュスタート車の場合は、電源も入れない方が安全です。
自分で車を動かそうとせず、レンタカー会社へ連絡し、指示を受けてください。
エンジンを始動していなければ、間違った燃料がエンジン側まで回っていない可能性があります。
その場合は燃料タンクから軽油を抜き、タンク内を清掃して正しいガソリンへ入れ替えることで、被害を抑えられることがあります。
それでも燃料の抜き取りや清掃、搬送などの費用は発生する可能性があります。
しかし、エンジンを始動して走行してしまった場合より、修理範囲を小さくできる可能性は高くなります。
エンジンを始動すると何が起きるのか
ガソリン車へ軽油を入れても、給油直後から必ずエンジンが動かなくなるわけではありません。

燃料タンクや配管には、給油前のガソリンが残っています。
そのため、最初は普通にエンジンがかかり、ある程度走れてしまうことがあります。
しかし、軽油を多く含んだ燃料がエンジンへ送られると、正常に燃焼できなくなります。
加速しにくくなる。
エンジンがガタガタする。
白煙や黒煙が出る。
警告灯が点灯する。
最終的にエンジンが停止する。
このような症状が発生する可能性があります。
JAFも、ガソリン車へ軽油を入れると加速が鈍くなり、黒煙が出て、やがてエンジンが停止する可能性があると案内しています。
参考:
JAF「間違った燃料を給油した場合に起こるトラブルとは?」
エンジンを始動した場合は、燃料の入れ替えだけでなく、燃料フィルターの交換や燃料経路の洗浄などが必要になる場合があります。
走行を続けて部品まで損傷すれば、修理範囲はさらに広がります。
「レンタカー店まで数キロだから、このまま走って返そう」
これは避けるべきです。
数キロ走ることで、燃料タンク内だけにあった軽油をエンジンまで送り込んでしまう可能性があるからです。
間違えた直後にやるべきこと
誤給油に気付いたら、まずエンジンをかけないことです。

すでにエンジンを始動している場合は、安全な場所で停止させます。
その後、レンタカーを借りた店舗やレンタカー会社の事故・故障受付窓口へ連絡してください。
自分の判断で整備工場へ運んだり、ガソリンを追加して薄めたりするのも避けた方がよいでしょう。
レンタカーは自分の所有物ではありません。
指定された搬送先や修理先がある可能性があります。
連絡時には、次の情報を伝えます。
・借りている車のナンバー
・ガソリン車へ軽油を入れたこと
・どのくらい給油したか
・給油後にエンジンを始動したか
・始動後に走行したか
・現在地
・警告灯や異音などの症状
故障を隠して返却するのは絶対にいけません。
その場では普通に走れていても、返却後にエンジンが停止する可能性があります。
申告が遅れれば、損傷範囲や責任関係の確認がさらに難しくなります。
なぜレンタカーで誤給油が起きるのか
普段と違う車に乗ることは、誤給油が起きる原因の一つです。

いつもディーゼル車へ軽油を入れている人が、レンタカーでも習慣的に軽油を選んでしまう。
普段はレギュラーガソリン車なのに、借りた車がディーゼル車だった。
軽自動車だから軽油だと思い込んでしまう。
このような勘違いがあります。とくに車種によってはガソリンと軽油の両方を燃料にしてるタイプもあります。
「軽自動車」の軽は車両規格のことで、燃料の種類ではありません。
軽自動車の多くはレギュラーガソリンを使用します。
JAFも、誤給油はマイカーではない車や初めて乗る車で発生することがあり、車検証や取扱説明書などで燃料の種類を確認するよう案内しています。
レンタカーを給油するときは、普段の習慣でノズルを選ばないことです。
燃料の種類は、レンタカーの貸渡証、キーに付けられたタグ、給油口の表示、取扱説明書などで確認できます。
分からなければ、給油する前にレンタカー会社へ電話してください。
数分確認するだけで、高額な修理や予定の変更を防げます。
免責補償に入っていても油断できない
レンタカーの免責補償は重要な制度です。
万が一の事故に備え、加入しておく意味は十分にあります。
しかし、免責補償は何をしても修理代が無料になる魔法の制度ではありません。
誤給油、キーの紛失、車内装備の破損、著しい汚損などは、一般的な交通事故とは別の扱いになる可能性があります。
特に誤給油については、公式に補償対象外と明記しているレンタカー会社があります。
契約時には料金だけを見るのではなく、
何が免除されるのか。
NOCは含まれているのか。
補償対象外になる行為は何か。
ロードサービスはどこまで無料なのか。
ここまで確認しておく必要があります。
もしガソリン車へ軽油を入れてしまったら、免責補償のことを考える前に、まずエンジンを始動しないこと。
そして、すぐにレンタカー会社へ連絡することです。
エンジンをかける前か、走行した後か。
そのわずかな違いで、必要な作業と自己負担額が大きく変わる可能性があります。
返却前の給油は、旅行や仕事が終わって気が緩みやすい時間です。
普段と違う車に乗っているときこそ、ノズルを手に取る前に燃料の種類をもう一度確認してください。
緑色のノズルを差し込む、その数秒前の確認が、予定外の修理代を防いでくれます。
noteと週刊MHO通信を始めました
整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。
普段の自動車記事では書ききれない、修理現場での経験、仕事への考え方、独立するまでの道のりなども残していく予定です。
また、Substackでは「週刊MHO通信」を配信しています。
GoogleやSNSのアルゴリズムに左右されず、読者の方へ直接届けられる場所として、毎週1回を目安に更新していきます。
ブログとは少し違った話も書いていきますので、よろしければ無料購読をお願いします。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。