ディーゼル車で走行中、メーターにAdBlueの警告が表示された。

しかし、エンジンはいつもどおり動いている。
加速にも違和感はなく、異音も出ていない。
ちょうどコンビニがあったので、一度車を止めてエンジンを切った。
買い物を終えて再びエンジンをかけようとしたら、セルは回るのに始動しない。あるいは、始動操作そのものを受け付けない。
燃料はまだ入っている。
バッテリーも上がっていない。
それなのに、なぜエンジンがかからないのか?
原因として考えられるのが、AdBlueの残量不足です。
AdBlueを使うディーゼル車の中には、残量がなくなるとエンジンを再始動できなくなる車があります。
少し前まで普通に走れていたとしても、エンジンを停止したことをきっかけに動かせなくなる可能性があるのです。
目次
AdBlueはディーゼル燃料ではない
AdBlueは、ディーゼルエンジンを動かすための燃料ではありません。

尿素SCRシステムで使用される高品位尿素水です。
ディーゼルエンジンから排出されるガスには、窒素酸化物が含まれています。
尿素SCRシステムでは、排気ガスへAdBlueを噴射し、化学反応によって窒素酸化物を窒素と水へ変換します。
つまりAdBlueは、排気ガスを浄化するための液体です。
燃料タンクに軽油が残っていれば、エンジンそのものは動かせそうに思えます。
それなのに、なぜAdBlueがなくなると始動できなくなるのでしょうか。
これは単に機械的にエンジンを始動できないのではなく、排出ガス規制に適合しない状態で走行させないため、車両側が再始動を制限する仕組みを持っているからです。
燃料切れとは違うため、セルモーターやバッテリーを点検しても直りません。
AdBlueを正しく補給し、車両が補給を認識する必要があります。
走行中に残量がゼロになっても、すぐ止まるとは限らない
AdBlueの残量がなくなった瞬間、走行中のエンジンが突然停止するとは限りません。
車種によって制御は異なりますが、残量がゼロになっても、そのとき動いているエンジンは継続して作動する場合があります。
問題は、そのエンジンを一度停止した後です。
再始動を禁止する制御が入ると、軽油が残っていてもエンジンをかけられなくなります。
トヨタの一部車種では、AdBlueがなくなったことを示す警告が表示された際、「エンジンを停止させると再始動できません」と明記されています。
参考:トヨタ ハイエースコミューター取扱説明書「AdBlueの補充」
三菱のデリカD:5やトライトンでも、走行可能距離表示が0kmになると、エンジンの再始動ができなくなると案内されています。
ここがAdBlue不足の怖いところです。
エンジンは普通に動いている。
だから、とりあえず駐車場へ入る。
休憩するためにエンジンを切る。
その後、車を動かせなくなることがあります。
高速道路のサービスエリア、山道の駐車場、出張先、荷物を積んだ仕事中などで再始動できなくなれば、予定にも大きな影響が出ます。
警告はかなり前から段階的に表示される
AdBlueは、いきなり何の予告もなくゼロになるわけではありません。

多くの車では、残量が少なくなるとメーターに警告が表示されます。
最初は、
「AdBlueを補充してください」
「残り約2000km」
といった比較的余裕のある警告です。
その後も補充せずに走ると、
「あと800kmで再始動不可」
「まもなく再始動できなくなります」
など、警告の内容が段階的に強くなっていきます。
具体的な距離や表示内容は車種によって異なります。
トヨタの一部車種では、走行可能距離が約2000km以下になると警告灯とメッセージが表示され、さらに残量が減ると「あと800kmで再始動不可」と案内されます。
三菱の一部車種では、走行可能距離が約2400km以下になると段階的な残量警告が始まります。
つまり、最初の警告が出た時点で補給しておけば、出先で突然再始動できなくなる可能性は低くできます。
「まだ2000kmも走れるから、次の車検でいいだろう」
この判断は危険です。
警告に表示される距離は、あくまで目安です。
AdBlueの消費量は、運転状態や走行環境によって変わります。
高負荷での走行、長い上り坂、排出ガス浄化装置の作動状態、気温や標高などによって、想定より早く消費する場合があります。
明日補給しようと思いながら忘れ、そのまま走り続けることもあります。
警告が表示されたら、距離の余裕を使い切るのではなく、早めに補給することが重要です。
残量ゼロとシステム異常は別の問題
メーターに、
「AdBlueシステム異常」

「○○km以内に再始動不可」
と表示される場合があります。
これは単にAdBlueの量が少ないのではなく、尿素SCRシステムそのものに異常が発生している可能性があります。
AdBlueを補給しても警告が消えない。
残量があるのに再始動可能距離が減っていく。
このような場合は、センサー、ポンプ、ヒーター、噴射装置、配管、品質判定など、システム側の点検が必要になります。
「AdBlueを入れれば直るだろう」
と判断して走り続けると、カウントダウンがゼロになり、再始動できなくなる可能性があります。
残量不足の表示なのか、システム異常の表示なのか。
メーターに表示された文章を、よく確認してください。
可能であればスマートフォンで警告表示を撮影し、販売店や整備工場へ伝えると診断の助けになります。
AdBlueを補給すれば必ずその場で始動できる?
残量不足だけが原因であれば、指定されたAdBlueを正しく補給することで再始動できる車があります。

しかし、少量だけ補給しても車両が残量の増加を認識しない場合があります。
必要な補給量、補給後の操作、警告が消えるまでの時間は車種によって異なります。
また、三菱の一部車種では、AdBlue不足によって再始動不可になった場合、補給だけでなく販売店で専用機器を使ったリセット作業が必要になると案内されています。
参考:三菱自動車「AdBlue不足により再始動不可になった場合」
そのため、完全に残量を使い切ってから携行品を少しだけ入れれば、必ずすぐに復旧するとは限りません。
車種ごとの取扱説明書を確認し、判断できない場合は販売店やロードサービスへ連絡してください。
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水を入れて代用してはいけない
AdBlueの主成分に水が含まれていると聞き、

「緊急時なら水を入れてもいいのでは?」
と考える人がいるかもしれません。
これは絶対にやめるべきです。
水や規格外の尿素水を入れても、排気ガスを正常に浄化できません。
車両が濃度やシステムの異常を検出し、結局は再始動できなくなる可能性があります。
さらに、不適切な液体によってシステムを傷めれば、AdBlueの補給だけでは済まず、部品交換が必要になる場合もあります。
使用するのは、取扱説明書で指定された規格に適合するAdBlueです。
トヨタは、一部車種の取扱説明書でISO 22241-1に準拠したAdBlueを使用するよう案内しています。
また、AdBlueの補給口と軽油の給油口を間違えないことも重要です。
AdBlueを軽油タンクへ入れたり、軽油をAdBlueタンクへ入れたりすると、大がかりな修理につながる可能性があります。
分からない場合は自分で補給せず、販売店や対応している整備工場へ依頼した方が安全です。
警告が出たままエンジンを切る前に
走行中に「エンジン再始動不可」といった警告が表示された場合は、メッセージの内容に従い、すぐ販売店へ連絡してください。

ただし、交通事故や人命に関わる危険がある場所では、安全確保が最優先です。
エンジンを切ったら再始動できなくなるからといって、危険な場所へ停車したままにしたり、換気できない車庫内でエンジンをかけ続けたりしてはいけません。
安全な場所へ移動できる状況なら移動し、販売店やロードサービスから指示を受けます。
警告が初期段階なら、その日のうちに補給する。
残り距離が少なければ、遠出を中止する。
残量ゼロやシステム異常なら、自己判断で走り続けない。
この区別が大切です。
車検ごとに補充すれば大丈夫とは限らない
AdBlueの消費量は、車種や使い方によって大きく変わります。
走行距離が多い仕事用車両、高速道路を頻繁に走る車、重い荷物を積む車などでは、点検時期を待たずに補給が必要になることがあります。
一部の車では、おおよそ1000km走行するごとに1L程度を消費することが目安として示されていますが、これは全車共通の数字ではありません。
タンク容量も車種によって異なります。
「前回の車検で満タンにしたから、次の車検まで大丈夫」
とは限らないのです。
オイル交換や定期点検のときに、AdBlueの残量も確認してもらうと安心です。
長距離を走る予定がある場合は、出発前にメーターの警告表示を確認してください。
警告を無視した先にあるのは故障とは限らない
AdBlueの残量がなくなってエンジンを再始動できない場合、必ずしもエンジンが壊れたわけではありません。

排出ガスを正しく浄化できない状態で走らせないため、車両が始動を許可していない可能性があります。
しかし、利用者から見れば、燃料が入っているのに車が動かないという重大なトラブルです。
レッカー搬送が必要になる。
仕事に間に合わない。
積んでいる荷物を別の車へ移さなければならない。
旅行や出張の予定が崩れる。
たった一度の補給忘れが、大きな損失につながる可能性があります。
AdBlueの警告は、すぐにエンジンが壊れるという警告ではありません。
しかし、まだ走れているから放置してよいという意味でもありません。
残量が少ないという最初の警告が出た段階で補充する。
「再始動不可」という文字が表示されたら、エンジンを切る前に安全を確保し、販売店へ連絡する。
AdBlueは軽油とは別に消費される、もう一つの必要な液体です。
燃料計だけを見ていれば走り続けられる。
現在のクリーンディーゼル車は、必ずしもそうではありません。
まだエンジンが動いているうちに対処できるか。
それが、出先で始動不能になるかどうかの分かれ道になります。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。