エンジンオイル交換で「フラッシング」を勧められた!本当に必要なのか?

中古車を買ったら、オイルフィラーキャップの内側が真っ黒だった。

エンジン内部をのぞいてみると、金属部分にはベットリとした汚れが付着している。

「フラッシング剤を入れて、一気にきれいにしよう」

そう考える人もいると思います。

しかし、僕はプライベートで自分の車に使うなら、短時間で洗浄する即効性のフラッシング剤は使いたくありません。

使うとすれば、走行しながら少しずつ汚れを落としていく遅効性のフラッシング剤です。

なぜ即効性のフラッシングを避けたいのか。

その理由は、エンジン内部の汚れが急激に剥がれ落ちると、オイルストレーナーを詰まらせる可能性があるからです。

エンジンをきれいにするつもりが、オイルを吸い上げられなくなり、油圧低下からエンジンを壊すことも考えられます。

汚れているエンジンほど洗浄したくなりますが、汚れがひどいエンジンほど慎重に作業しなければならないのです。

フラッシングとは何をする作業なのか

エンジンオイルは、内部の金属部品を潤滑するだけではありません。

エンジン内部の汚れを取り込み、分散させる役割も持っています。

しかし、オイル交換の間隔が長すぎたり、短距離走行ばかりを繰り返したりすると、エンジン内部にスラッジがたまることがあります。

スラッジとは、劣化したオイルや燃焼によって生じた汚れなどが混ざり、泥やタールのようになったものです。

軽い汚れなら通常のオイル交換を続けることで少しずつ改善することもあります。

しかし、長年オイル管理が悪かったエンジンでは、カムシャフト周辺やオイルパンの底に厚いスラッジが堆積していることがあります。

フラッシングは、こうしたエンジン内部の汚れを洗浄する作業です。

方法はいくつかあります。

古いオイルへ洗浄剤を入れて短時間アイドリングし、その後すぐにオイルを抜く方法。

フラッシング専用のオイルへ入れ替えて洗浄する方法。

新しいエンジンオイルへ遅効性の洗浄剤を添加し、普段どおり走行しながら時間をかけて汚れを落とす方法。

短時間で洗浄するタイプは、作業時間が短くて済みます。

しかし、内部に大量のスラッジがたまっているエンジンでは、その即効性が逆に怖いのです。

汚れが落ちれば安心とは限らない

エンジン内部のスラッジが洗浄剤によって落ちたとします。

問題は、その汚れが消えてなくなるわけではないことです。

細かく溶けてオイルへ分散するものもあれば、塊に近い状態で剥がれるものも考えられます。

オイルパンへ落ちた汚れは、エンジンオイルと一緒にオイルポンプへ吸い込まれようとします。

オイルポンプの吸い込み口には、オイルストレーナーと呼ばれる網状の部品が付いています。

大きな異物を吸い込まないためのフィルターです。

ところが大量のスラッジが短時間にオイルパンへ落ちると、その網を塞いでしまう可能性があります。

ストレーナーが詰まれば、オイルポンプは十分な量のオイルを吸い上げられません。

オイルパンにはオイルが入っているのに、エンジン内部へ送ることができない。

レベルゲージで量を確認しても正常なのに、赤い油圧警告灯が点灯する。

このような状態が起こり得ます。

オイルが入っていることと、正常に循環していることは別です。

油圧が低下した状態でエンジンを回し続ければ、カムシャフトやクランクシャフトなどを傷め、最悪の場合はエンジンが焼き付きます。

ヴィヴィオで経験した油圧警告灯

以前、スバルのヴィヴィオでオイル漏れを修理したことがあります。

オイル漏れの修理を終えた後、赤い油圧警告灯が点灯しました。

エンジンオイルは規定量入っています。

漏れを直したのに、今度は油圧警告灯が点灯した。

一見すると、オイル漏れ修理で何か失敗したようにも見えます。

しかし、油圧が上がらない原因を調べるには、オイルパンの中まで確認する必要がありました。

オイルパンを取り外してみると、予想したとおりオイルストレーナーが詰まっていました。

エンジン内部には、長年蓄積した汚れが存在していたのです。

オイル漏れを直したこと自体が、直接ストレーナーを詰まらせたとは限りません。

それ以前から蓄積していたスラッジが移動したり、吸い込み口へ集まったりして、油圧不足が表面化した可能性があります。

もしこの状態で、

「オイルは入っているから大丈夫」

と走行を続けていたら、エンジンを壊していたかもしれません。

オイルパンを外し、ストレーナー周辺の汚れを物理的に取り除かなければならない状態でした。

スラッジだらけのエンジンへ、強力な即効性フラッシングを使う怖さはここにあります。

重度の汚れは先に物理的に取り除く

フィラーキャップを開けたところに少し汚れが見える程度なら、エンジン全体が重度のスラッジ状態とは限りません。

フィラーキャップ付近は湿気がたまりやすく、乳化したオイルが付着することもあります。

反対に、見える範囲がそれほど汚れていなくても、オイルパンの底やストレーナー周辺に汚れがたまっている場合があります。

大切なのは、見える部分だけで判断しないことです。

明らかにスラッジが大量に堆積しているエンジンなら、洗浄剤を投入する前に、可能な範囲で物理的に汚れを取り除くべきだと僕は考えます。

オイルパンを外せる構造なら、内部を清掃してストレーナーの状態を確認する。

ヘッドカバーを外す作業が可能なら、内部の堆積状況を確認する。

オイルフィルターも交換する。

除去した汚れをエンジン内部へ落とさないよう慎重に作業する。

そのうえで、残った汚れを少しずつ落としていく方法を考えます。

ただし、オイルパンやヘッドカバーを取り外す作業には、新しいガスケットや液体ガスケット、締め付け管理などが必要です。

誰にでもできるDIY作業ではありません。

スラッジがひどい場合は、整備工場へ相談するべきです。

僕なら遅効性のeクリーンプラスを使う

物理的に除去できる汚れを取り除き、エンジンの状態を確認したうえで内部洗浄をするなら、僕は遅効性のフラッシング剤を選びます。

プライベートで使うなら、ワコーズの「eクリーンプラス」という製品を使います。

eクリーンプラスは、エンジンオイルへ添加し、走行しながら時間をかけて内部の汚れを除去する遅効性のエンジン内部洗浄剤です。

ワコーズの公式案内では、オイル量2.5~6Lに対して1本を使用し、次回のオイル交換時にはオイルエレメントも交換するよう説明されています。

短時間のアイドリングで一気に洗浄するのではなく、普段の走行を利用しながら、少しずつ汚れを落としていく考え方です。

僕が遅効性を選ぶのは、エンジンを一気にきれいにしたいからではありません。

急激な変化を避けたいからです。

何年もかけてたまった汚れを、数十分で全部落とそうとする必要はありません。

時間をかけてたまったものなら、時間をかけて少しずつ落としていく方がよいと考えています。

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遅効性なら何に使っても安全ではない

ここは重要ですが、遅効性のフラッシング剤なら、どれほど汚れたエンジンへ入れても絶対に問題が起きないという意味ではありません。

スラッジが厚く堆積し、すでにストレーナーへ汚れが集まっているエンジンでは、遅効性であっても洗浄剤の使用前に点検が必要です。

オイル管理が極端に悪い。

油圧警告灯が点灯したことがある。

エンジンから異音が出ている。

フィラーキャップを開けると、内部に塊状のスラッジが見える。

オイルパン内部の状態が怪しい。

このようなエンジンへ、確認せず洗浄剤だけを入れるのは避けた方がよいでしょう。

まず現在の油圧が正常なのか、ストレーナーが詰まりかけていないか、エンジン内部がどの程度汚れているのかを確認する必要があります。

遅効性は即効性よりも穏やかに洗浄しますが、故障したエンジンを直す薬ではありません。

オイル消費、異音、油圧低下、圧縮不足などがある場合、原因に応じた修理が先です。

オイルフィルター交換を忘れない

遅効性フラッシング剤を使った後は、次回のオイル交換時にオイルフィルターも交換することが重要です。

洗浄によってエンジン内部の汚れがオイルへ取り込まれれば、その一部はオイルフィルターで捕集されます。

フィルターへ汚れが多くたまれば、ろ過能力にも影響します。

洗浄剤だけ入れて満足し、次の交換時にオイルだけ替えてフィルターを使い続けるのでは、せっかく取り込んだ汚れを十分に排出できません。

使う製品の添加量、使用期間、オイル交換時期は、必ずメーカーの説明に従う必要があります。

自己判断で濃度を上げたり、複数の添加剤を同時に混ぜたりするのも避けた方がよいでしょう。

汚れを落とすより、ためない方が大切

フラッシングを考える前に、一番大切なのはスラッジを大量にためないことです。

メーカーが指定する時期でエンジンオイルを交換する。

短距離走行やシビアコンディションが多い車は、使用環境に合った交換時期を考える。

オイルフィルターも適切に交換する。

指定された粘度と品質のオイルを使う。

オイル量を定期的に確認する。

これを続けていれば、重度のスラッジが発生するリスクを抑えられます。

汚れがたまってから強力な洗浄剤で一気に落とすより、定期的にオイルを交換して汚れをためない方が安全です。

中古車などで過去の整備履歴が分からない場合は、いきなり強いフラッシングをするのではなく、まず新しいオイルとフィルターへ交換し、エンジンの状態を確認する方法もあります。

必要に応じて通常より短いサイクルでオイルを交換し、少しずつ状態を改善させる考え方もあります。

エンジン内部は、きれいならよいという単純な話ではありません。

どの程度汚れているのか。

汚れがどこにたまっているのか。

それを落としたとき、どこへ流れるのか。

ここまで考える必要があります。

フラッシングは絶対に遅効性を使いたい。

それが僕の基本的な考えです。

ただし、スラッジだらけのエンジンへは、遅効性であってもいきなり投入しません。

まず物理的に除去できる汚れを取り除き、オイルパンやストレーナーの状態を確認する。

そのうえで、残った汚れを時間をかけて少しずつ洗浄する。

ヴィヴィオの詰まったストレーナーを実際に見た経験があるからこそ、汚れを急激に落とす怖さを感じます。

エンジンをきれいにするための作業で、エンジンの油圧を失ってしまったら本末転倒です。

フラッシングは「何を入れるか」だけではなく、「そのエンジンへ本当に入れてよい状態なのか」を判断することが一番重要です。

noteと週刊MHO通信を始めました

整備士として働いてきた約25年間の体験や、チームMHOを始めてから現在に至るまでの出来事を、noteで少しずつ書き始めました。

普段の自動車記事では書ききれない、修理現場での経験、仕事への考え方、独立するまでの道のりなども残していく予定です。

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