ムーヴ L900S 低速でエンストし、ブレーキが効かなくなる症状

先日エンジンハンチングなどの不調を修理した車ですが、再び同様の症状がたまに出るようになったというのでクレーム処理しました。

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悲しいことに整備クレームとなってしまいました。

先日、エンジンが不調になりエンストを起こす。そしてエンストを起こすからブレーキが効かなくなるということで修理した車両です。

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このムーヴはオイル管理がひどくて、ありとあらゆるところが詰まっていました。

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バキュームホースやブローバイホースはご覧の通り。詰まりまくっている。

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ヘッドカバーのブローバイの出口もスラッジで詰まっている。

こんな状態だから正常に負圧を発生することもできない。そして決定的だったのがここでした。

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プラグホールパッキンの劣化によるプラグホール内へのオイル漏れ。このオイル漏れにより、たまにエンジンが失火をおこしていました。失火が起きて、そのままストールしてしまう。

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なので、前に行った整備では、ブローバイやバキューム系統の洗浄、そしてヘッドカバーを交換するところまで。

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この車はプラグホールパッキンが交換できないタイプで、ヘッドカバーをASSYで交換する必要があります。

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いずれにしろヘッドカバーも詰まっていたので新品にするに越したことはありませんでした。

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エンジンの失火とバキュームホース類の清掃を施して納車。症状は改善されたんですが、どうやらこれら以外にも違う部分が故障し始めていたのです。そこまで気がついていなかったので、再整備となりました。

症状としては、ごくたまに低速で走行中、ブレーキング時に軽いノッキングのような失火のような症状が起こり、その症状が起こった瞬間はインテークマニホールドの負圧がなくなるのか、ブレーキブースターが全く効かなくなります。

つまりブレーキが効かなくなってしまうわけです。思い切り踏めば効くんですが、ブレーキ倍力装置が働かなくなってしまう。

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とりあえず、さらに深部まで清掃を施してみることにしました。

ここから先は物理的な故障が発見できるまではクレーム整備です。

まずはスロットルボディとISCの通路をできる限り清掃してみる。

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スロットルボディを外したら、インテークマニホールドにオイルが溜まっていました。相変わらず悲惨な状態です。徹底的に綺麗にすることにしました。

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ISCも分解すれば通路の清掃は可能な構造でした。

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こういったパッキン類は部品代が安いので助かります。

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スロットルを綺麗に清掃。

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この故障の原因が、各部通路のつまりによるストールというのをまずは払拭させねばなりません。

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ISCの通路もピカピカにしました。ロータリーの部分に引っかかりは全くなし。機能的には何の問題もなさそうです。

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黒いソレノイドバルブでロータリーのシャフトを回して通路を開けたり閉じたりする構造です。

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ガスケットは2枚。

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エンジンにドッキングします。これで症状が治るのか治らないのかがポイントです。

結果、症状が治らなかったんです。どうやら僕が考えていた故障とは別物の故障のようです。ですが、この時点である程度の仮説を立てることができ、原因がわかりました。

それはこれです。

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DVVTのソレノイドバルブ、もしくはDVVTユニットの不良。

症状を再現して、冷静に考えると、エンジンストールする際にノッキングを起こすんです。そしてブレーキの負圧が足りなくなり、ブースターが働かなくなりブレーキが効かなくなる。

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この可変バルブ機能というのが行っている制御は主に2つ。

エンジンスタート時と高い負荷時にバルブタイミングを遅角に制御しています。

そして、中間域ではバルブタイミングを進角させて、バルブのオーバーラップを多めに取っている。

つまり、エンストが起ころうとしている時エンジンに何が起こっているか?

遅角へ制御されないといけないバルブタイミングが進角のまま固定されているということでした。エンジンが止まろうとしているのにバルブタイミングはオーバーラップのままなので、負圧が発生しなくて正圧に近くなっている。その状態だとインテークマニホールドに負圧が発生できないのでブレーキブースターが働かなくなってしまう。

これが僕が結論付けた答えなんですが、では、DVVTのソレノイドバルブとDVVTユニットのどちらが壊れているのか?これを診断するのはそんなに難しくありません。

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ソレノイドバルブにつながるカプラーを外した状態で試してみればいい。これでも症状が治らないようだったらDVVTユニットが怪しい。

ソレノイドバルブは働かない時は遅角のままです。つまり、カプラーを抜いていてもさほどエンジンには影響がない制御で固定されているわけです。

試してみた結果、症状は完全に治りました。ソレノイドバルブを再度外してプランジャーの動きをマイナスドライバーで押して確認したら、一部引っかかるところがありました。

やはりオイル管理が不十分でスラッジなどが抵抗になっているのでしょう。

エンストを起こしている時はちょうどオーバーラップさせる油路で切り替わって、そのまま固着していました。それを、マイナスドライバーで押して最初の位置に戻してあげれば正常に戻ります。

逆に、マイナスドライバーで油路をオーバーラップさせる場所に動かして固着させたままだと最初からエンジンがノッキングを起こして不調です。当然ブレーキもききませんでした。

今回の件で惑わされたのは

1、オイル管理が著しく悪くて、プラグホールへオイルが洪水のように溢れて実際にダイレクトイグニッションが失火していたこと。

2、各バキュームやブローバイホースが物理的に詰まっていたということ。

こういった物理的なエンジンの不調が発生している裏で、静かにバルブタイミングも狂わされていた。ここで惑わされてしまいました。

オーナーに事の経緯を伝えて、ソレノイドバルブを良品にクレームで交換して作業は終了となりました。

OBD2の診断機でデーターモードを詳しくモニタリングできる年代だったらここまで惑わされなかったんですけどね。ある程度勘を働かせないといけない車で、いい経験になりました。

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コメント

  1. 修理屋35歳 より:

    ターボ車でなかったことが唯一の救いでしょうか?
    個人的にですが、乗用車より軽自動車のほうがオイル管理の悪いクルマが多い気がします。

  2. MHO より:

    結局半年経って代替えとなりました。オイル交換はやはり早めの方がいいですね。

  3. 車好きのクライスラー より:

    いつも楽しく拝見させていただいております。
    車好きの私にとっては参考になることばかりです。

    L900Sは思入れのある車種でした。
    母の車で、購入後数年でDVVT不良→交換
    その数年後にDVVTがリコール
    最後の数年は後部を軽く追突されたり、ラジエーターを二回交換したり
    DVVTのオイルコントロールバルブを交換したり、満身創痍でしたが、十数年間よく頑張ってくれました。
    車体は頑丈だったのでエンジンさえ載せ替えればまだ乗れそうでしたが
    去年LA100S後期のムーヴに乗り換えました。
    さすがに十数年間も付き合いがあると別れる際は辛かったですね。
    ですが考えさせられたのは整備工場の選び方です。
    父の付き合いの関係で廃車置き場を併設しているA社に持ち込むことが多かったのですが
    こちらでタイミングベルト交換後、エアコンをつけるとパワステが効かなくなり
    充電警告灯が点灯する症状が発生。一回は「クランクシャフトプーリーが緩んでいた」とのこですが
    二回目が発生。結局「クランクシャフトプーリーキー」が破損していたみたいです。
    これだけならまだしも、ラジエーターが液漏れするようになりそこで二回交換した後
    明らかに変な音がするとの話を母から聞き、私が乗るとOCV故障時みたいに
    ノッキング音がする。DVVTはOCVによってオイルで動いてるんだよなって知識を付けた私は
    エンジンオイルの量を点検。するとオイルがほとんど入っていない。
    びっくりしました。ラジエーター液漏れでエンジン温度が上がり、オイルを消費したのかもしれませんが
    整備したのにオイルの量点検してないの?って
    その後オイルを急いで入れると一時的にノッキング音は収まりましたが
    やがて坂道で慢性的にノッキング音とパワーダウンが発生するようになり
    頻繁な故障整備といつ故障するかもしれないということで買い替えとなりました。
    タイミングベルト交換や、ラジエータ交換はA社。OCV故障時はB社で修理しました。(特定したのもB社)
    B社は時間が掛かりますが、車種というかエンジンをよく知ってるみたいです。
    ただお勧めの整備内容を断ると機嫌が悪くなります(笑)
    逆にA社は持ち込むたびに「もう寿命ですよ、買い替えたら~」と言われます。
    不思議なものであんなに見かけたL900Sは少なくなり、代わりにLA100S後期をよく見かけます。
    ですがスマートキーやらLEDヘッドライト、イーステクノロジー、スマートアシスト
    などを搭載したLA100Sが前と同じくらい持つかといえば心配になります。
    最後になりますが、MHO様、これからも記事作成、頑張ってください。更新を楽しみにしています。
    それでは長文失礼しました。

  4. MHO より:

    ありがとうございます。
    L900系のムーヴにはいろいろと自分も体験させてもらいましたね。可変バルブのDVVTを初めて交換したのもこの型式だったし。
    今のKFエンジンもいいんですが、やっぱりEFエンジンの方がなんだか思い入れが僕はありますね。

    これからも宜しくお願いします。

  5. 整備士 より:

    はじめまして!

    いつも勉強になる記事ありがとうございます。

    今回の記事ですが、トヨタ アルテッツァでも同様の経験をしました。

    ABSの警告灯が点いたり消えたりする現象がありました。

    オイルコントロールバルブを交換することで症状が出なくなりました。

    何故ABSと関連があるのだろうと思っていたのですが、今回のMHOさんの記事と関連があるかもしれませんね。

    今後も勉強させていただきます。

  6. MHO より:

    この件は再整備になってちょっと焦ってしまったケースでした。
    こういう二重三重のトラップになってくるとまだまだ引っかかってしまう悲しい自分です。
    これからも宜しくお願いします